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西川立一「流通戦争最前線」

渋谷、大変貌の全容…大規模複合施設が続々、緑と潤いの「大人の街」化、人気飲食店も集結

文=西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー
渋谷、大変貌の全容…大規模複合施設が続々、緑と潤いの「大人の街」化、人気飲食店も集結の画像1「Gettyimages」より

 東京・渋谷駅周辺で、東急グループが中心となって進めている「エンタテイメントシティ SHIBUYA」を掲げた100年に1度とうたわれる再開発計画により、若者の街・渋谷が大人の街へと大きく変わろうとしている。

 昨年4月に開業した「渋谷キャスト」に続き、6つの大規模なプロジェクトが進行中で、9月13日には旧東横線渋谷駅のホームと線路跡地に「渋谷ストリーム(SHIBUYA STREAM)」がオープンした。地上35階・地下4階で、177室の「エクセルホテル東急」、渋谷エリア最大級の総賃貸可能面積約4万6000平方メートルのオフィス、30店舗で構成された商業施設、スタンディングで約700名を収容するホールなどからなる大規模複合施設だ。

 渋谷区が渋谷ストリームに隣接する、水が流れていない暗渠だった渋谷川の水流を復活、東京都も2つの広場と遊歩道を整備し、官民連携で代官山に続く渋谷に今までなかった緑と潤いのある「街歩き空間」を創り出した。

 4階には渋谷で働くオフィスワーカーのために、自転車通勤をサポートし、リフレッシュや趣味を通じて交流できるカフェ、早朝や夜間に気軽に運動して身も心もリセットできる「多目的広場」も年内にオープンする予定だ。

 こうした空間や機能はいまや、都心部の再開発の街づくりには欠かせない要素となっており、知恵比べを競い合っているが、キーワードは「緑」「コミュニティ」「集い」「地域」がメインストリームで、今回の開発にもその傾向が見て取れる。こうした手法で無機質で殺伐とした都心に活気と潤いを甦らせることで、そこで働くオフィスワーカーや来街者、住民に対して新たな魅力づくりにつなげようとしている。

 1階から3階の飲食店がメインの商業ゾーンは、「自分基準でカスタマイズやアレンジをする」大人をターゲットに定めたテナント構成。1階は、名古屋の「フレンチおでん」の「ビストロ るぅぱん ストリートSAKABA&CAFE」、金沢のレモネード専門店「LEMONADE by Lemonica」、大阪のメキシコ酒場スタイルのレストラン「墨国回転鶏料理」といった特色のある飲食店が軒を連ねる。

 2階は正統派フレンチをタパスサイズでつまむ「バール ア ヴァン クロワゼ」、鶏焼肉専門店「チキン キッチン」といった新ブランドが目立つ。東急ストアの高級スーパー「プレッセ」は、デリカがメインでイートインスペースを併設した新業態「プレッセ シブヤ デリ マーケット」で出店している。

 3階は日本初出店のスペインバルセロナのシーフードレストラン「チリンギート エスクリバ」約90席、横浜中華街の「大連餃子基地 DALIAN」62席といった大箱の店舗が多く、中目黒の人気居酒屋「なかめのてっぺん」も64席で出店している。

大人と若者を取り込む両面作戦

 こうして店舗のラインナップを見てくると、新業態や内外から人気店を誘致し、今まで渋谷になかった飲食ゾーンをつくり出し、立ち位置を明確にし、飲食店激戦区の渋谷で新たな魅力を発信し、大人をターゲットにしながら同時に若者の取り込みも図ろうとしている。

 大人は若者の店に足を運ぶのは敬遠しがちだが、若者は大人向けの店に躊躇なく足を踏み入れる。大人を謳うことにより、大人はもとより、ちょっと背伸びをしたい若者を取り込む両面作戦でもある。

 東横線渋谷~代官山間の地下化によって新たに創出されたトンネル上部の線路跡地に、ホテル、飲食店、オフィス、保育園の複合施設「渋谷ブリッジ(SHIBUYA BRIDGE)」も9月13日、部分オープンした。

 B棟の1~7階はシンクグリーンプロデュースが初めて手がけるホテル事業の「マスタードホテル渋谷」、1階に併設されたカフェ・バー・パティスリー「ミーガン」と、カフェ「ノー レイル ノールール」が出店している。

ドンキ、デベロッパーとして初めて取り組む街づくり

 こうして東急グループ主導で進む渋谷再開発に、新たにドンキホーテホールディングスが、「文化村通り」で名乗りを上げた。「(仮称)渋谷区道玄坂二丁目開発計画」は、1~3階が店舗、4階~10階がオフィス、11階~28階がホテルの大型複合施設、竣工は2022年4月を予定している。

 1999年に同社初の都市型多層階店舗としてオープンした「ドン・キホーテ渋谷店」を拡張するために、周辺の用地取得を進めていたが、昨年5月、近くに「MEGAドンキ・ホーテ渋谷本店」を設けたことから店舗用地が不要となり、今回の再開発となった。

 商業ゾーンの詳細は今のところ未定だが、ホテル、オフィス立地を意識し、来街者の取り込みも狙ったものになるものと思われ、ドンキ独自のユニークな発想も期待され、若者だけではなく客層の拡大も図っていることから、どのような構成になるのか注目される。

 ホテルはインバウンド需要の取り込みに長けたドンキが、どのようなホテルを誘致し、コミットしていくかも注目だ。オフィスは、渋谷にサイバーエージェントやディー・エヌ・エーなどの本社がすでにあり、グーグル日本法人本社が渋谷ストリームに移転を予定するなど、ITなどクリエイティブ企業の集結が進み、ドンキもこうした企業の誘致に力を入れていく。

 流通業の勝ち組であるドンキが、デベロッパーとして初めて取り組む街づくり。独特な店舗づくりで培われたドンキならではのユニークな手法が展開され、さらに新たな試みが加われば、従来にない面白いものが生まれるだろう。

 来秋には「公園通り」のパルコ跡地に地上20階地下3階のオフィスビルと商業施設の複合ビルも開業し、東急だけではなくパルコ、ドンキが加わることで、街の表情もより多彩になる。いずれにしても最先端企業のオフィス街の性格を強めながら、渋谷が大人の街に変身することで、銀座、新宿、池袋といった東京都心の繁華街の勢力地図も塗り替えられることになろう。
(文=西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー)

西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー、ラディック代表取締役

西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー、ラディック代表取締役

流通ジャーナリスト。マーケティングプランナー。慶応義塾大学卒業。大手スーパー西友に勤務後、独立し、販促、広報、マーケティング業務を手掛ける。流通専門紙誌やビジネス誌に執筆。流通・サービスを中心に、取材、講演活動を続け、テレビ、ラジオのニュースや情報番組に解説者として出演している。

Twitter:@nishikawaryu

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