豊田章男トヨタ社長は極めて優れた経営者…巨大組織の「100年に1度」の再構築を断行
トヨタ自動車が国内販売体制を抜本的に見直すと報じられた。4つの販売系列でそれぞれ「カローラ」などの専売車を設けて顧客層をすみ分けていたが、それをやめて全車種をすべての系列の国内合計約5000店で売る方針を固めた。販売車種も約60モデルから売れ筋に絞り、半分に減らす。
これは大きな動きに見えるが、実はメガ企業であるトヨタにとっては戦術レベルの転換でしかない。国内販売でゾーン・ディフエンス戦術を展開することになった大きな背景には、「CASE+A」への戦略的な対応がある。
100年に1度という自動車産業の大転換時代に、トヨタは対応していけるのだろうか。
カー・シェアへの布石か、系列販売の見直し
トヨタが現在展開している系列販売では、高級車中心のトヨタ店と中級車のトヨペット店、大衆車のカローラ店、若年層を対象にしたネッツ店の4つが同じ地域内で並列して営業展開している。
日本の他の自動車メーカーでは、このような系列販売をしているところはない。トヨタが4つもの系列を走らせてこられたのは、何よりそのマーケット・シェアにある。4系列合計で年間150万台以上という新車販売台数は、国内マーケットシェアが31.2%で、10年前に比べて1.6ポイント増えていて、足元では磐石のトップ・シェアを誇っている。
4系列での販売店はトヨタの直営店は少なく、9割以上が地場資本による独立経営によるフランチャイズ型のディーラー展開だ。その数、約280社、店舗の数は5000店以上といわれる。
これだけ充実した販売網をつくり上げてきたトヨタだが、逆に言えば、これだけの数のフランチャイジーを「食わせて」いかなければならない。4つの販売系列に特徴を持たせることにより、販売力を発揮させるには、それぞれに異なった車種を持たせることが有効だったわけだ。
ところがマーケットは全体として縮小傾向にある。国内の新車販売台数は1990年に778万台だったが、2017年には523万4000台と3割以上減った。人口減に加え、若年層の車離れが言われて久しい。言ってみれば、先行きは厳しい。
そんななか、多数の車種を提供することはメーカー側としてのトヨタにとって大きな負担となってきた。今回の決定では、現在の約60モデルから売れ筋に絞った全30モデルほどにする、となった。