東京地検特捜部は11日、日産自動車前会長のカルロス・ゴーン氏を会社法違反(特別背任)の罪で追起訴した。さらに同氏と法人としての日産を、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪でも追起訴。ゴーン氏の勾留は続いている。
本連載前回記事では、状況から考えてゴーン氏逮捕の情報はフランス政府にも事前に届いていた可能性は否定できないと指摘した。今回は、国家を巻き込んだ本事件がどのように着地するのかについて考察してみたい。
本件を単に特捜部の力を借りた日産の日本人経営陣によるクーデターと見るのは表層的だ。根底には、フランス国内の雇用維持と日産・ルノー連合強化の両立を狙うフランス政府と、日本の自動車産業の一角を担う日産の独立性を維持したい日本政府との間の対立がある。そして、フランス有利のなか、ルノーと日産の経営統合阻止のために日本側が先手を打ったと考えるべきだ。
では、日本が切ったこのカードは、果たして有効なのだろうか。
先に手を出したフランス政府
まず、ルノーと日産の統合の流れを見てみよう。2015年12月、ゴーン氏は会見で次のように述べた。
「16年4月にルノーの筆頭株主であるフランス政府の議決権が、14年に成立したフロランジュ法によって倍増し、資本提携するルノー・日産連合の経営への関与が強まることを懸念し、資本関係の見直しを含む対抗策を検討してきたが、最終的にフランス政府が譲歩するかたちで収束した」
ルノー・日産連合とフランス政府は、連合経営の自主性を維持することに合意し、フランス政府の議決権は制限され、ルノーを通して日産の経営に干渉しない方針を正式に認めた。この時点では、ゴーン氏はフランス政府の連合への介入回避に注力している。
ゴーン氏はフランス政府に寝返ったのか
問題は、その後の展開である。ルノーは昨年2月15日にゴーンCEO(最高経営責任者)の再任を取締役会で決定したと発表し、6月の株主総会でそれを承認した。任期は2022年までの4年間だが、ゴーン氏は昨年にCEOを退任するという報道もあり、マクロン仏大統領がゴーンCEOの任期を2022年までに延長する条件として、ゴーン氏にルノーと日産・三菱自動車とのアライアンスを強化して不可逆なものにすることに合意させたとみられている。