ファッション通販サイト「ゾゾタウン」を運営するZOZO(ゾゾ)の前澤友作社長は2月6日、自身のTwitterアカウントで「しばらくツイッターはお休みさせてください」「本業に集中します。チャレンジは続きます。必ず結果を出します」とツイートした。
前澤社長といえば、女優・剛力彩芽との交際や、米宇宙開発ベンチャー「SpaceX(スペースX)」と契約して民間人として初めて「月に行く」と宣言したり、合計1億円の「お年玉」を贈呈する企画を実行に移したりするなどして、世間に話題を提供し続けてきた。
「前澤社長は話題づくりを株価上昇策としてきた」(中堅証券会社の新興株担当アナリスト)との辛口の批判がある。足元を見透かされたかたちで株価を大きく下げた。
前身のスタートトゥディの株価は2018年7月18日、上場来最高値の4875円を付けた。同年10月1日に社名をZOZOに変更してからは、株価はズルズルと下がり続け、今年に入ってからも回復せず、2月8日、一時は昨年来安値の1621円まで下落した。株式時価総額は昨年7月18日の1兆5192億円から5051億円へ下落し、1兆円が消えてしまった。
目玉のゾゾスーツの失敗でPB事業は125億円の赤字
前澤社長は1月31 日、ZOZOの19年3月期第3四半期の連結決算発表で、「申し訳なく思います」と陳謝し、通期見通しを下方修正した。売上高は従来予想の1470億円から1180億円(前期比20%増)へ、営業利益は400億円から265億円(同19%減)へ、純利益は280億円から178億円(同12%減)へ引き下げた。期末配当も従来予想の22円から10円に減配する。前期は17円だった。減益になるのは1998年の設立以来、初めてという。
下方修正した最大の要因は、鳴り物入りではじめた「ゾゾスーツ」の無料配布だ。スマートフォンで計測したデータを基に、体型に合ったスーツやジーンズのプライベートブランド(PB)商品を購入できるというもの。しかし、顧客がゾゾスーツを取り寄せても採寸しないケースが相次いだ。中国の生産工場から商品到着まで、最大で5カ月の遅延が発生するなど誤算続きだった。そのためPB事業は125億円の赤字を計上する見込みになった。今期200億円としていたPB事業の売上目標を30億円に引き下げた。
前澤社長はPB事業を通販と並ぶ経営の柱に育てる考えだった。ゾゾスーツが出足からつまずいたことで、生産体制を含めてPB事業のビジネスモデルの練り直しを迫られることになる。
大手出店企業の退店相次ぐ
本業である通販事業「ゾゾタウン」でも、大手アパレルの出店停止が相次いだ。ZOZOは18年12月25日、有料会員への割引サービス「ZOZO ARIGATOメンバーシップ」を開始した。年3000円(税別)または月500円(同)を払い会員になると、月5万円(税込み)を上限に10%割引で買い物ができる。ゾゾタウンを初めて使う場合には、最初の月は30%割引となる。割引の原資はZOZOが負担する。
出店企業にとって安売りしたくない新商品も割引の対象となる。ブランド価値が損われるとして出店を停止する企業が相次いだ。アパレル大手オンワードホールディングスは「23区」や「自由区」など百貨店などに展開する主要ブランドの出品を取りやめた。子供服大手三起商行が運営する「ミキハウス」も撤退した。ミキハウスの木村皓一社長は、「週刊新潮」(新潮社/1月24日号)で撤退した理由をこう語っている。
「あんなセールやられたらさすがにアカンわ。イメージダウンやで。1月7日の朝に担当者から報告があって、即決や。画像見てこれはアカンなって。『ブランドイメージをダメにすることだけはせんように』って担当の部長にも言ってあったから」
宝飾ブランドを展開する4℃ホールディングスや、カジュアル衣料のライトオンも撤退すると報じられた。1255の出品企業のうち42店舗が商品の販売を見送ったという。セレクトショップ大手のユナイテッドアローズは、インターネット通販サイトの運営を「ゾゾタウン」から自社運営に切り替える。ユナイテッドアローズは出品を継続するが、ZOZOの対応次第では退店する企業がさらに増える可能性もある。
大風呂敷を広げて株価を押し上げ事業を拡大させる手法は、米電気自動車ベンチャー、テスラのイーロン・マスクCEOと似ていることから、「前澤社長は日本のイーロン・マスク」と評せられたこともある。マスク氏はMBO(経営陣の自社株買い)をテコに上場廃止するといった動きを見せ、既存株主の反対などで、それを撤回するなどして市場(マーケット)の信用を失った。
ちなみに前澤社長は昨年、「批判したい奴も嘲笑いたい奴もどうぞどうぞ。そんなの屁でもないわ。」とツイートして話題を呼んだが、2月にツイッターの休止宣言をすると、皮肉にもZOZOの株価は一瞬上昇した。
(文=編集部)