粉ミルクに対して、「赤ちゃんが飲むもの」という印象を持っているのが一般的だろう。しかし近年、大人向けの粉ミルクが人気を博していることをご存じだろうか。
最初に「大人向け」と銘打った粉ミルク商品が販売されたのは、2014年のこと。強心剤の「救心」で知られる救心製薬が発売した「大人の粉ミルク」が草分け的存在だとされており、その後2016年には森永乳業、2017年には雪印ビーンスタークといった育児用粉ミルク大手メーカーが、続々と市場への参入を果たしている。
驚異的なのが、その市場の成長率だ。大人向け粉ミルクの販売実績データを見ると、2017年10月以降は毎月、前年を超える販売実績をたたき出しており、18年6月などは、前年比92%増という大きな伸び率を見せている。
大人向け粉ミルクは、今まさに注目を集めている存在なわけだが、「そもそも大人向け粉ミルクとは一体なんなのか」「粉ミルクに大人向け、子供向けがあるのか」などと疑問を抱く方も多いのではないだろうか。そこで今回は、森永乳業に、その特徴や開発の経緯などを伺った。
製法はそのままに、普段の食生活で不足しがちな栄養素をプラス
そもそも、大人向け粉ミルクは育児用粉ミルクと何が違うのだろう。
「育児用粉ミルクは、なんらかの事情で母乳が与えられないとき、代わりに使用できるように調整された母乳代替食品です。当然、栄養素などの成分も、母乳以外で乳児の栄養源の中心となる育児用に配合されています。ですから弊社の大人向け粉ミルクは、カルシウムや鉄、11種類のビタミンといった普段の食生活で不足しがちとされる栄養素を、バランスよく含むよう調整し、さらに弊社独自の機能性素材『ラクトフェリン』『ビフィズス菌BB536』『シールド乳酸菌』を配合することで、大人の方の健康をサポートできるような商品となっております。
現在弊社がリリースしているのは『ミルク生活』と『ミルク生活プラス』の2商品で、『ミルク生活』の方は20gでカルシウムを150mg、『ミルク生活プラス』のほうは20gでカルシウムを220mgと、タンパク質を3.5g摂取することが可能となっています。また、お客様からのご要望にお応えして、本年10月15日からは、20gずつに小分けされたスティックタイプの販売も開始しました」(森永乳業 広報担当)
粉ミルクとはいっても、どちらかというとサプリメントや健康食品に近いイメージなのだろうか。しかし、例えばカルシウムやたんぱく質の摂取であれば、それこそ液体の牛乳でも事足りるだろう。粉ミルクならではのメリットとは、一体どのようなものがあるのだろうか。
「まず、賞味期限が長く管理もしやすいため、保存性に優れている点が挙げられます。また、粉末であるため、その日の体調や好みに合わせて、分量や濃さを調整できる点もメリットといえるでしょう。弊社の大人向け粉ミルクは味にもこだわっており、さっぱりとしつつほのかな甘みのある、牛乳の味が苦手な方でも飲みやすい味にしてあります。ですから牛乳が飲めない方だけでなく、牛乳を普段飲まないという方にもおすすめです」(同)
きっかけとなったのは“隠れ育児用粉ミルクユーザー”の存在
需要が高まっているのも納得だろう。しかし、本来赤ちゃんの飲み物である粉ミルクを、あえて大人向けにリファインして販売しようと思い至った理由は一体なんなのだろうか。
「商品開発のきっかけとなったのは、『赤ちゃんは粉ミルクを飲んで育っているのだから、大人が飲んでも体にいいのだろう』と考え、健康目的で育児用粉ミルクを飲用していたお客様の存在です。実は以前からそういったお客様からのお声や、『大人が育児用粉ミルクを飲んでも平気か』というお問い合わせはいただいていたのですが、近年は特に増加傾向にありました。弊社には、およそ100年粉ミルクを販売してきた歴史がございますが、ここにきて、お客様から新たな粉ミルクの価値を教えていただいたと思っております。
弊社の『ミルク生活』は、2016年10月から通販限定で販売開始しておりましたが、ご好評につき、昨年4月から新製品となる『ミルク生活プラス』と、リニューアルした『ミルク生活』の店頭販売が開始されました。具体的な売上に関しては差し控えさせていただきますが、店頭販売を開始した昨年4月から10月までのメーカー出荷金額は、当初の計画の2倍以上で推移しております」(同)
青汁やヨーグルト、コーヒーに…大人流の粉ミルクの楽しみ方
非常に高い人気を誇っている大人向け粉ミルクだが、どういった層がメインターゲットとなっているのだろう。
「購入者層は50代以上が9割以上、また女性のお客様が8割以上を占めております。最も多いのは50代~70代の女性のお客様なのですが、男性や、若い世代のお客様にもご購入いただいております」(同)
やはり子育てで粉ミルクを扱っていた経験があるからだろうか、中高年の女性からの支持が圧倒的に高いようだ。
とはいえ、その栄養価の高さや使い勝手のよさを考えると、実際に試してみたいと考える方も多いことだろう。大人ならではの粉ミルクの楽しみ方を、いろいろと教えてもらった。
「粉末ということで、青汁に混ぜて飲んだり、ヨーグルトに混ぜて食べているという方が多くいらっしゃいます。また、30代の女性からは、水に溶かした『ミルク生活』をシリアルにかけて食べている、というお声もいただいております。ほかにも料理に混ぜたり、コーヒーにミルクの代わりに入れたりと、さまざまなかたちで活用することができますが、配合される機能性成分には熱にあまり強くないものもあるため、加熱したり液体に溶かす場合は、40℃までのご利用をおすすめします。
ただ、先述の通り、味には大変こだわっております。大人の方でも飲みやすいものになっていますので、まずは水やお湯に溶かして、そのまま召し上がってみていただければ幸いです」(同)
赤ちゃんの頃お世話になっていたであろう粉ミルクに、こうして再会する日が来るとは想像もしていなかった方が大半だろう。飲んでみて懐かしさを感じることはないかもしれないが、ここはひとつ、初心・童心に帰ったつもりで試してみてはいかがだろうか。
(文・取材=A4studio)