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高橋篤史「経済禁忌録」

廣済堂、MBOに暗雲…“ドル箱”火葬場ビジネスに影響で東京の火葬事情に一大事?

文=高橋篤史/ジャーナリスト
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廣済堂、MBOに暗雲…“ドル箱”火葬場ビジネスに影響で東京の火葬事情に一大事?の画像1廣済堂 HP」より

 印刷・出版中堅の廣済堂によるマネジメント・バイアウト(MBO=経営陣による自社買収)の行方に不透明感が漂っている。米国系投資ファンド、ベインキャピタルと組んだMBO計画を公表したものの、かつて「村上ファンド」を率いた村上世彰元代表の関係先企業が直後から市場で猛烈な株買い占めを始めたためだ。今後、企業価値をめぐる焦点となりそうなのは傘下にある火葬場ビジネス。もっとも、話はそう簡単ではない。

 廣済堂がMBO計画を公表したのは1月18日。三井物産出身の土井常由社長は社長昇格から半年あまりで投資ファンドと組んでの株式非公開化という大胆な策に打って出た。TOB(株式公開買付)の買付価格は1株610円。その日の終値に比べ2割あまり高い水準だ。買付資金は三井住友銀行から融資の全面支援が受けられるとする。

 が、その後、株価はTOB価格にサヤ寄せするどころか、大きく上回って推移している。最大の理由は村上氏の関係先企業「レノ」が2月4日に大量保有報告書を提出して買い占めが明らかになったためだ。TOB価格の引き上げなどさまざまな思惑が入り乱れ、株価は一時、800円を超える場面もあった。その後の変更報告書によれば、2月26日時点でレノは発行済み株式(自己株を含む)の9.55%を買い占めている。投下金額は約14億6400万円。そこから計算すると平均取得コストは1株615円となる。

 廣済堂経営陣とベインはTOB後に少数株主を強制的に締め出す「スクイーズアウト」を実施する考えで、そのためには発行済み株式の3分の2を買い付ける必要がある。主要株主で15.2%を保有する澤田ホールディングスは8年前、経営陣総取っ替えの株主提案を行うほど会社側と対立していたが、今回のTOBでは応募に前向きとされる。しかし、9.7%を持つ創業一族は反対の立場とされ、さらにレノはじめ思惑買いをした株主がいる。社外監査役の一人は公然と反対を表明する始末だ。買い付け側はTOB期間を3月1日までから同月12日までと延長したが、3分の2達成は微妙な線といえる。

 村上氏は6年前、PGMホールディングスによるアコーディア・ゴルフのTOBを頓挫させた“戦績”がある。PGMは親会社のパチンコメーカー、平和の支援を受け、業界再編を狙いアコーディア買収を仕掛けた。が、計画公表後、レノが市場で猛烈な買い占めを行い、TOBは失敗。その後、大株主となったレノはアコーディアに圧力をかけ続けた。結果、同社はゴルフ場資産をシンガポール市場に上場させて得た資金で大規模な自社株買いを行ったり、さらにはMBOを実施。その過程でレノは巨額の儲けを手にした。

高橋篤史/ジャーナリスト

高橋篤史/ジャーナリスト

1968年生まれ。日刊工業新聞社、東洋経済新報社を経て2009年からフリーランスのジャーナリスト。著書に、新潮ドキュメント賞候補となった『凋落 木村剛と大島健伸』(東洋経済新報社)や『創価学会秘史』(講談社)などがある。

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