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NTTドコモ、76歳女性にスマホの無駄なオプション大量加入…解約にお金と煩雑な手間

文=深笛義也/ライター
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NTTドコモ、76歳女性にスマホの無駄なオプション大量加入…解約にお金と煩雑な手間の画像1夏野剛氏のツイッターより

 まだ行われているのか、スマートフォン(スマホ)契約時のオプション強制加入――。

 元NTTドコモ執行役員で「iモード」の生みの親、現ドワンゴ社長の夏野剛氏が2月22日、ツイッターで放った投稿が波紋を呼んでいる。

「最近スマホの名義替えしたので請求書を紙で届くようにしたら、こんなの発見。76歳の母になんてひどい押し売りしてるんだろう。いくら本人同意とはいえ総務省はこういうのをやめさせるべきじゃないのか。もちろん母は契約時のショップ店員トークを覚えてない。OBとして情けない」

 請求書の画像もアップされている。「my daiz/iコンシェル」(100円)、「スゴ得コンテンツ」(380円)、ニュースや天気、占い情報などを配信する「iチャネル」(150円)、「dTV」(500円)、「クラウド容量オプション(50GB)」(400円)、「dアニメストア」(400円)「dヒッツ」(500円)、「dマガジン」(400円)などがずらりと並んでいる。ランニングや筋トレをサポートする「Runtastic for docomo」(350円)、幼児・子ども向けの知育ゲームアプリ「dキッズ」(372円)にまで加入していた。

 その後の投稿で夏野氏は、すべて解約したことを明らかにした。必要のないアプリのために、それまで料金が発生していたことになる。こうした問題は10年ほど前からあり、インターネットを見渡せば、オプションに加入しないと契約できないと思わされたり、「皆さん入ってます」などの誘導で、なかば強制的にオプションに加入させられたという被害者の声がある。

 2010年に総務省・消費者庁は「オプションサービスを契約する場合には料金、解約条件、必要性をよく確認しましょう」など消費者に警戒を呼びかける文書を発表している。

 なぜこの問題は解消されないのか。NTT出身でスマホ評論家、マネー評論家の新田ヒカル氏から聞いた。

「以前からドコモに限らず、各社で問題が起きています。ドコモ、au、ソフトバンクのオフィシャルショップでもありましたし、街中の携帯ショップ(販売代理店)ではさらにひどい場合があり、月に数千円、ときには1万円を超えるようなケースもありました。消費者としては納得のいかないようなオプション料金が発生していることはめずらしくないでしょう。『このオプションを付けるともっと安くなるから』といった営業トークが用いられて、確かに組み合わせによってはお得になるパターンもあるのですが、多くの場合は使わないサービスに加入させられて、想像よりも大きな月額利用料が発生し、それを解約するにあたってはお金や手間がかかることが多いです」

 そのような被害に遭わないために、消費者はどうしたらいいのだろうか。

「携帯の料金が複雑であることから、契約する際に戸惑ってしまうということがあると思います。結論から申し上げると、大手3大キャリアと契約する場合、次の3つのプランのみに加入して、ほかについては基本的には入らないというスタンスを持つといいと思います。

 1つ目は基本料です。2700円で電話かけ放題、もしくは1700円で1回5分まで無料、どちらかが主流です。2つ目は、インターネットに接続するために、ISP接続料(プロバイダー接続料)、これが300円です。3つ目は、ネットショッピング、ニュースのチェックでブラウザを表示したり、SNSでやり取りしたりメールを送ったりするための、データ通信料です。有料サービスはこの3つのみに絞る。これが基本です。

 ただ、『3つのプランだけでいいです』と言っても、『1カ月だけ無料だから付けてください』と言われた場合、断り切れない場合がありますよね。やむを得ず、そういったオプションに入る時には、解約方法を丁寧に確認しておくということが大事です。1カ月というのはどういうことなのか。加入をした翌日に解約しても1カ月分加入したことになるのか、月末まで入れば加入したことになるのか、あるいは月をまたいで翌月の1日なのか、それとも加入日から30日以上なのか、これを確認する。

 解約方法も、電話でなければ解約できない、インターネットじゃないと解約できないなどのケースがあります。電話だったら電話番号、インターネットだったらどこにアクセスするのか、加入したオプションのそれぞれについて、しっかりと聞いておく。そして、できるだけ早く解約する。これがコツでしょう」

総務省、指導に及び腰の理由

 夏野氏の母親は、76歳。スマホを使っている高齢者は多い。情報弱者は言われるがままに、オプションに加入しがちだ。夏野氏の投稿にもあるように、オプションへの勧誘をやめるように、総務省が指導すべきなのではないか。

「例えば、約200の雑誌が読み放題できるdマガジンは、たくさん雑誌を読みたい人には便利なオプションサービスです。本当に必要なものをそれぞれ任意で加入するようにして、契約時には最小限のプランで契約していただくというのが、あるべき姿だと思います。

 ただ総務省が強く指導をするかというと、なかなか難しいところがあります。総務省にとって、携帯電話などの通信事業は、大きな省益がからみます。通信業界は巨大なインフラで、総務省の天下り先とも言われています。3大通信キャリアの中でも特にNTTは、かつての逓信省の流れをくみますから、今でも総務省と近いところがあります。総務省は通信事業者の安定的な経営のことも考えなければなりません。

 ただ注目すべきは、昨年の8月21日、菅義偉官房長官が携帯電話料金について『4割程度下げる余地はある』と発言したんですね。携帯の料金に対して民間に何かいうとしたら総務省、あるいは公正取引委員会であって、官房長官が携帯の料金に口を出すっていうのは、異例といえます。今や国民1人に携帯1台1万円弱が当たり前になっており、3大キャリアは大きな収益を上げていて、消費が通信事業に集中しているという見方もできます。通信事業者としては利益が大きいことはよいことですが、国民やほかの業界やからすれば不満でしょう。官邸としては景気対策と、支持率のことを考え、総務省が通信事業者がちょっと“なあなあ”になっていると感じ、『総務省と通信事業者はしっかりやりなさい』と言いたいのだと思います」

 通信事業者のあり方は、今後改善されていくのだろうか。

「料金の値下げにつながる施策は、通信事業者にとって抵抗があるでしょう。だけど、さまざまなことが少しずつ改善されています。特に、特定の携帯電話会社のSIMカードしか利用できない『SIMロック』にという制度があります。昔はSIMロックは解除できなかったのですが、近年は条件付きで解除できるようになりました。さらに最近、解約した携帯電話についても、SIMロック解除ができるようになりました。

オプション外すだけで大きな節約

 オプションの強制加入の問題などは、しばらくは利用者の知恵で自衛するしかないのか。

「仮にですが、もし官邸からお声がかかれば、国益を考えて “こういう施策をすべきです”と提案はできます。たとえば、前述のSIMロックについては、解除以前に、SIMフリー(SIMロックがない状態)で、販売するのが本来の姿です。アップル、シャープ、ソニーなどの携帯端末を家電量販店で購入し、通信事業者で受け取ったSIMを指して使う形が健全です。以前、固定電話は、どのメーカーと通信事業者の組み合わせは自由でしたよね。SIMロックというのは、たとえて言えば、トヨタの車を買ったらトヨタのガソリンスタンドでしか給油できないみたいな、縛りがつよい制度なんです。そういう問題も、徐々にしか改善されていないのが実情です。ほかにも、通信料金と端末代金の完全分離や、2年縛りなど、課題は山積。もしそれらを改善すれば、携帯代は官房長官がいうように4割程度下げられると思います。

 ただし、通信事業者の収益は減りますから、私が提案したとしても実行するには強い意志が必要です。

 消費者としての、自衛手段としては、まずは携帯契約時に有料プランの加入時に気をつけるということ。今契約中の携帯については、先ほど申し上げた3プラン以外に、どのようなオプションに入っているのか確認すると節約できることがあります。

 確認の方法はオンライン、電話、窓口があります。窓口は対面なのでわかりやすいですけど、待ち時間が長い。電話はつながりづらい。オンラインはいつでもできますが、苦手な方もいらっしゃるでしょう。自分に合ったやり方で確認して、3プラン以外の有料のオプションについては、本当に自分が必要だと感じて使っているものだけ残して、全部解除する。いろんな方から『携帯の料金を節約したいんだけど』と相談されますが、余計なオプションを外すだけで、1000円くらい安くなる人はたくさんいます。1円も安くならなかった人はほとんどいなかったです」

 ドコモにこの問題を認識しているかを質したところ、「ネットなどのニュースで問題にされているということは、認識しております。私どもとしましてはお客様に有益な情報をということでご提案は差し上げておりますし、無理に加入というか、おつけするということは特にしていないという状況でございます」とオプションの強制加入については否定。「ただし、こういったご意見もございますので、慎重に対応するように各部署、受付窓口等には周知させていただいております」とのことであった。
(文=深笛義也/ライター)

深笛義也/ライター

深笛義也/ライター

1959年東京生まれ。横浜市内で育つ。10代後半から20代後半まで、現地に居住するなどして、成田空港反対闘争を支援。30代からライターになる。ノンフィクションも多数執筆している。

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