津田建二「IT/エレクトロニクス業界の動向」

みんなが「5G」通信を誤解している…日本企業は“本命”技術で世界に先行

5Gで出現する応用

 では、5Gになると何が変わるのだろうか。データレートが高速になると、特に動画の伝送を短時間でできるようになる。例えば、ある病院で手術している様子を4Kの高画質で遠隔地へ送れるため、遠隔地にある大病院の権威ある医師がその手術の状況をチェックしたり、アドバイスしたりできるようになる。また、鉱山のように落盤やガス爆発の危険のある場所では、無人のショベルカーに設置したカメラを通して、遠隔地から映像を見ながらリアルタイムで操作することができる。

 さらに、VRの利用拡大が一気に広がりそうだ。これまでのVRは専用デバイスをパソコンにつなぎ、重い演算処理はパソコン上で行っていたが、5GではパソコンなしでゴーグルだけでVRの画面を見ることができるようになる。

 自動車のカーエレクトロニクスでは、自動運転や運転支援システムなどの利用において、運転席から見える映像をリアルタイムで基地局に送信できるようになる。また、高速で走行している場合を除き、位置情報や交通量情報などをリアルタイムでクルマとセンタ間で通信できるため、これまでよりも高い精度でより速く渋滞情報を入手できるようになる。

 5G通信は公衆網だけではなく、工場や企業、学校など一般施設内でも利用できる。工場内ではモーターやポンプの動作などと同期を取り製造装置間で通信できるようになれば、生産性を向上できる。それも従来のような有線だと設置場所に制限ができるが、ワイヤレスのセルラーネットワークであれば、どこにでも取り付けられる。

 たとえばIoTセンサで取得するデータが温度や湿度など不連続なデータで低速利用の場合、周波数帯域幅が仮に高速の200MHzだとして、もし20kbpsで送信すると1万個のIoTセンサで取得したデータを同時に通信することができる。5Gセルラーネットワークを通してIoTデータを送る場合には、NB-IoTやCAT-M1などIoT専用回線を使える準備ができている。

本命技術は難しいミリ波

 20/10Gbpsという目標に向けた技術としては、やはりミリ波が本命である。5Gのミリ波周波数としては28GHz、次に39GHz、さらに60~90GHzなど、これまで経験したことのない高い周波数帯を利用していくことになり、技術的には非常に困難だ。電磁波は高周波になればなるほど直線性を帯び、360度全方位への送受信ができないからだ。しかも、周波数が高いほど電波は届きにくくなる。

 そこで、ビームフォーミングで端末と基地局に電波を向ける必要がある。しかも端末が移動していれば、それを追いかけるビームトラッキングも加わる。そのためのロジックLSIが必要で、アンテナ技術も開発しなければならない。アンテナを縦横8個ずつや16個ずつ並べた平面アンテナを開発しなければならない。

 5G技術はそれほど簡単ではない。しかし、困難な技術であればあるほど他社が真似できない。このため、5Gは2020年頃から本格的に始まり、発展・進化していく。5Gは商用化が始まったばかりで、これで終わりというわけではない。最終的に20Gbps/10Gbpsが実現(化)するのは、おそらく2025年以降になるだろう。競争は始まったばかりである。

(文=津田建二/国際技術ジャーナリスト)

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