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ソニー、プレステ5発売との観測…家庭用ゲーム機が10年間「消える」と言われ生き残る理由

文=A4studio
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PS4(「wikipedia」より/Solomon203)

 

 ゲーム業界の顔ともいえるソニー・インタラクティブエンタテインメントが、6月11日に開催された世界最大のゲーム見本市「E3」に参加しなかったことは、業界に大きな衝撃を与えた。ソニーは「大規模なゲームを長期にわたって制作するために、今年は登壇を控えた」という旨を発表し、ファンの間では「プレイステーション5(PS5)が2020年に発売されるからでは?」と憶測が飛んでいる。

 実際、5月21日にソニーが開催した経営方針説明会にて、PS5と噂される次世代ハードについて触れられており、そこでは現行ハイスペック機種・PS4 Proの約10倍速の処理性能を搭載する予定と発表されていた。

 しかし、PSシリーズなどの家庭用ゲーム機は今、ゲーム業界で苦境に立たされている。栄華を極めた携帯ゲーム機も、スマホゲームの台頭で危機に瀕しているが、近年はクラウドゲームの登場で家庭用ゲーム機の存在意義も問われ始めているのである。

 今回は、こうした家庭用ゲーム機業界の現状や新たなプラットフォーム到来の影響、そして業界の今後に関して、雑誌「ゲーム批評」(マイクロマガジン社)元編集長でゲームジャーナリストの小野憲史氏に詳しくお話を聞いた。

スマホゲームが携帯用ゲーム機の市場を崩壊させた

 00年代後半、スマホの普及と共に広まっていったのがスマホゲームだ。ゲーム業界の新たなプラットフォームとして、業界にどのような影響を与えていったのだろう。

「スマホゲームは08年にアップルとグーグルが相次いでアプリストアを開設したことで一気に広まりました。それ以前のガラケー時代にもNTTドコモなどのキャリアや、モバゲー・グリーといったプラットフォーマーを中心に、携帯電話ゲームは存在しました。しかし画面の小ささや、海外市場との相互の乗り入れの不便さなどで伸び悩みました。一方でApp StoreやGoogle Playは世界で共通市場だったので一気に広まったのです。

 ハードウェアの視点からいうと、スマホはブロードバンドに接続された超小型のモニター一体型コンピュータだといえます。オンライン前提のプレイスタイルや、ゲームをダウンロードして遊ぶ面でも、PCゲームと本質的には同じです。しかしより可搬性が高く、すき間時間で遊べる利便さが受けて、PCゲームと合わせると業界の3分の2を占めるシェアを誇るまでに至りました。しかし、オープンプラットフォームゆえに、家庭用ゲーム機のようなプラットフォームホルダーによるタイトル選別機能が存在しないので、タイトルのクオリティーは玉石混交です」(小野氏)

 確かに、見た目やキャラクターを変えただけで、フォーマットはヒットゲームと同じ、なんていう質の低いタイトルも少なくない。だが、なかには本格的なRPGや、リアルタイムでのオンライン対戦も可能な高クオリティー作品も数多くあり、スマホを1台持つだけで手軽に遊べるその利便性から、ゲーム業界、特に携帯ゲーム機業界に与えた影響は計り知れない。実際にニンテンドー 3DSはほぼ新作タイトルが出ておらず、PS Vitaに至っては本体の生産を終了してしまっている。

クラウドゲーム登場で任天堂とソニーはどう出る?

 こうした業界の転換点たる変化の波は、携帯ゲームに限ったことではない。家庭用ゲーム機業界の、新たな黒船になりうるとうわさされるのがクラウドゲームだ。

「クラウドゲームは00年代の後半から試験運用が開始されていたサービスで、簡単にいうなら“ゲームソフトもゲーム機本体も必要としないプラットフォーム”です。ゲームのタイトルや従来の家庭用ゲーム機が担っていた高性能な処理をすべて、提供するクラウドのサーバー上でやってしまうので、プレイヤーの持つ端末はあくまでモニター兼コントローラーになるということです。なかでも今注目されているのは、グーグルが提供する『Stadia』。また、マイクロソフトも『Project xCloud』というクラウドゲームサービスを準備中です」(同)

 いわばネット上に高性能な家庭用ゲーム機やソフトがあるともいえるクラウドゲーム。我々はそこに接続してゲームを受け取り、操作するだけ。ハードという存在、そして「高くて良いゲーム機を買う」という概念すら過去のものになっていく未来も見えている。こうした、ゲームハードを必要としないクラウドゲームが動きだした今、家庭用ゲーム機で業界を牽引してきた任天堂はどのような立ち位置で動いていくのだろうか。

「任天堂のDNAは玩具産業であることと、ゲーム&ウォッチの大ヒットなどの経緯もあり、ハードウェアとソフトウェアの両方からエンターテインメントをつくりあげるという意識を持った企業です。任天堂はこれまでの常識に逆らってスマホゲームビジネスに参入しましたが、幸か不幸か据え置き型ゲーム機 兼 携帯ゲーム機とも言えるNintendo Switchが大ヒットしてしまいました。そのため、少なくともSwitchの次世代機までは発売するでしょう。ただ、クラウドゲームの影響次第では次・次世代機の発売があるかどうか、今はまだわかりませんね」(同)

 任天堂グループはマリオやポケモンといった世界的に人気なキャラクターを数多く抱えており、IP(知的財産)ビジネス面での安定感もある。もし家庭用ゲーム機を出してゆく役目を終えても、事業規模の縮小はあるだろうが当面は安泰だろう。しかし、任天堂のライバルたるソニーの未来は、不透明なファクターが多そうだ。

「ソニーは1994年に初代PSでゲームビジネスに参入しました。当時の任天堂のビジネスモデルであったROMカセットをCD-ROMに変えたり、ターゲット層を子どもからヤングアダルト世代に変えたりするなど、任天堂を完全に否定する戦法で市場を席巻したのです。のちにPS3の不調で任天堂の後塵を拝したものの、PS4の大ヒットで盛り返すなど、一進一退の攻防を見せています。

 基本的にはPS4の勢いそのままに、よりそのスペックを底上げした“ゲーム専用の小型PC”とでもいうべき新ハード・PS5につなげていきたいはずです。また、ソニーはクラウドの面では弱いので、マイクロソフトと協業をしたりして新たな業界の流れにも対応しようとしていますね」(同)

 ソニーとしては新ハード・PS5で巻き返しを図りたいところだろうが、PS5は具体的にどのようなものになるのだろうか。

「簡単に言うと“超パワフルなPS4”という感じになるのではないでしょうか。PS4の構造はほぼPCと同じです。独自のOSを搭載し、コントローラーで操作するというだけで、PCと言って差し支えのない性質を持っていたんです。ですから続くPS5も、“ゲーム専用のPC”という理解でOKだと思います。追加要素といえば、PSVR(バーチャルリアリティシステム)を同梱するか否かですが、ひとまずは同梱版と非同梱版を出して、売れ行きを鑑みつつ取捨選択していくのではないでしょうか」(同)

 ソニーはPCと似た構造を持つPS4をさらに強化したPS5で、ハイエンドな体験を求めるユーザーに訴求していく算段なのだろう。しかし、ソニーはこれまでにマリオやポケモンクラスの人気キャラクターを生み出すことができておらず、IPビジネス面では任天堂に差を広げられているのも事実。PS5発売後の動向は、まだまだ予断を許さないといえる。

家庭用ゲーム機に生き残りの未来はあるのか?

 最後に、小野氏に今後の家庭用ゲーム機業界の未来を予測してもらった。

「家庭用ゲームはなくなると10年くらい前から言われていますが、しぶとく生き残っています。手軽にハイエンドなゲームを遊びたいというユーザーが意外といたということですし、Switchのヒットもハイエンドなゲームを外でも遊びたい、寝っ転がって遊びたいという需要の証明なのでしょう。そのため今後5年は生き残ると思います。

 また、ゲーム開発ツールの無償化・高性能化に伴い、誰もがゲームをつくれる時代が到来しています。家庭用ゲーム機は早晩、その変化に対応してゲーム開発環境を解放せざるを得ないのではないでしょうか。一から世界をつくり上げていくゲームソフト『マインクラフト』が、世界的に爆発的ムーブメントを巻き起こしたことにも通じますが、家庭用ゲーム機で自作ゲームをつくって遊びたいというユーザーニーズは、意外と高いと思います」(同)

 ゲーム業界はスマホの登場と、そこと深く連携したクラウドゲームの登場で大きく様変わりしていくだろう。そのなかで、家庭用ゲーム機業界が越えるべきハードルは高くなる一方だ。今後、彼らにはハイエンドなハードのファンを離さないことと、ゲーム開発環境の解放といった新たな戦略を駆使していくことが肝要になってくるのではないだろうか。
(文=A4studio)

A4studio

A4studio

エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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