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貸会議室のTKP、突如Jリーグチーム取得の“胸算用”…先行組のライザップに暗雲

文=編集部
大分トリニータ本拠地の昭和電工ドーム大分(「Wikipedia」より)
大分トリニータ本拠地の昭和電工ドーム大分(「Wikipedia」より)

 貸会議室大手のティーケーピー(TKP)は、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)1部(J1)に所属する大分トリニータを運営する大分フットボールクラブ(FC)と資本・業務提携した。大分FCの発行済み株式の20%を1億円前後で取得。九州乳業も追加出資し、両社が筆頭株主となった。

「みどり牛乳」など乳製品を製造・販売する九州乳業は2014年からトリニータのユニフォームスポンサーになっている。九州乳業は既存の保有株に上積みしたかたちだ。

 トリニータは1994年の発足。99年からJリーグ2部(J2)、2003年からはJ1。08年、ナビスコ杯(現ルヴァン杯)で日本一に輝き、一時代を築いた。

 しかし09年、ユニフォームスポンサーが相次いで撤退したことから、経営危機が一気に表面化。運営会社の大分FCは10年1月決算時点で債務超過は11.6億円に達し、クラブ消滅の危機に陥った。Jリーグからの6億円の緊急融資や大分県、県民、経済界の支援で債務圧縮に努めたものの、債務超過を解消できないままだった。

 14年3月、大分銀行系の投資会社が運営する企業再生ファンド「おおいたPORTAファンド」から3億5000万円の出資を受けた。それまでの資本金の99%減資とファンドからの新たな出資により債務超過を解消した。行政、経済界、大分県民の三位一体の支援でトリニータは、Jリーグに参戦できることになった。

 大分FCの19年1月期決算は9年連続で最終黒字となったが、企業再生ファンドからの株の買い戻しが課題として残っていた。今回、TKPと九州乳業の2社の支援を受け、ファンドから自社株を買い戻した。

 大分FCの19年1月期決算の営業収益は11.2億円、チーム人件費は4.8億円。J2平均の営業収益15.4億円、チーム人件費6.8億円を大きく下回った。J2の最低クラスの年俸で戦い、今季、J1昇格を果たした。

 大分FCの社外取締役に就任するTKPの河野貴輝社長は72年、大分市生まれ。大分県立雄城台高校から慶應義塾大学商学部に進学。学生時代に、アルバイトで貯めた資金で株式投資を始めた。金融の世界でプロになることを目指し、卒業後、「目的別採用」を導入していた伊藤忠商事に就職。為替証券部に配属となった。

 4年間ディーラーを務めた後、日本オンライン証券(現カブドットコム証券)の設立に関わる。2000年、上司とともに退職し、上司が設立したイーバンク銀行(現楽天銀行)に4年間在籍、取締役営業本部長などを歴任した。

 05年に独立し、TKPを設立。17年、東証マザーズに上場した。事業の多角化やM&A(合併・買収)を進め、一時、経営危機に陥った大塚家具の支援に乗り出し、知名度は全国区になった。今年5月には、「リージャス」ブランドでシェアオフィスを世界に展開するIWG(スイス)の日本事業を450億円で買収した。

 現在、貸し会議室を全国各地に400拠点を展開しているが、今後10年間で1500拠点にまで拡大する。20年2月期の売上高は前期比19%増の422億円、営業利益は4割増の60億円と、いずれも過去最高を更新する見込みだ。

 地元の活性化に貢献するため、12年から3年間、トリニータのスポンサーを務めていた。河野氏は大分特産の「豊の国かぼす特命大使」でもある。河野氏はJ1のトリニータの筆頭株主となり、故郷に錦を飾る。

ジャパネットたかた、RIZAPグループ、メルカリがJリーグ参入

 かつてJリーグの有力チームは大企業がスポンサーだった。鹿島アントラーズは住友グループ、浦和レッドダイヤモンズは三菱重工業などの三菱グループ。FC東京は東京ガスなど、川崎フロンターレは富士通グループ、横浜Fマリノスは日産自動車グループ、名古屋グランパスはトヨタ自動車グループ、ガンバ大阪はパナソニックグループといった具合だ。

 ここへ新興企業が進出してきた。その草分けがヴィッセル神戸を経営する楽天だ。楽天の三木谷浩史会長兼社長は、自身の出身地である神戸のチームのオーナーとなった。

 V・ファーレン長崎は17年、テレビショッピングで有名なジャパネットたかたの親会社であるジャパネットホールディングスが買収して、100%子会社に組み入れた。テレビでお馴染みの高田明氏がV・ファーレン長崎の社長に就任。クラブを立て直し、J1に昇格。弱小チームのJ1昇格は“Jリーグの奇跡”といわれた。だが、1年でJ2に降格。今季、J1復帰を狙う。

 RIZAPグループは18年4月、共同出資会社経由でJ1の湘南ベルマーレの経営権を取得した。親会社を持たない“市民クラブ”だった湘南は幾度か経営危機に見舞われたが、ようやく親会社を持ち、RIZAPグループから資金的サポートを受けることになった。RIZAPの瀬戸健社長は、「10億円の資本投下と20年までのタイトル獲得」をコミットした。ところが、この1年でRIZAPの経営状態は一変し、大リストラを迫られている。湘南を買収した際の公約は実現できるのだろうか。

 7月30日には、Jリーグ屈指の名門、鹿島アントラーズがメルカリに“身売り”されたことが明らかになり、大きな話題になった。IT系企業を中心として、急速に新興企業がJリーグの経営に食い込み始めた。永続的・安定的な運営ができるのかに関心が集まる。
(文=編集部)

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