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京アニ、マスコミの犠牲者実名報道で遺族に甚大な被害も…遺族の反対を無視の暴挙

文=明石昇二郎/ルポライター
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 日本経済新聞「京都府警は27日に発表した京都アニメーション放火殺人事件の犠牲者について、遺族の多くが匿名での報道を希望していると説明しました。日本経済新聞は殺人など重大事件の報道で、尊い命が失われた重い現実を社会全体で共有し、検証や再発防止につなげるために犠牲者を原則実名としています。今回も事件の重大性を考慮し、実名で報じる必要があると判断しました。遺族や被害者への取材は心情やプライバシーに最大限配慮し、節度を持って進めています」(8月27日20時48分)

 毎日新聞「毎日新聞は、事件や事故の犠牲者について実名での報道を原則としています。亡くなった方々の氏名を含め正確な事実を報じることが、事件の全貌を社会が共有するための出発点として必要だと考えます。遺族の皆様への取材に関しては、そのご意向に十分配慮し、節度を守ります」(8月27日 23時15分)

 朝日新聞「朝日新聞は事件報道に際して実名で報じることを原則としています。犠牲者の方々のプライバシーに配慮しながらも、お一人お一人の尊い命が奪われた重い現実を共有するためには、実名による報道が必要だと考えています」(8月27日19時47分)

 つまり、「事件を社会全体で共有」して「社会の教訓」とし、「検証や再発防止につなげるために」は、犠牲者の実名報道が必要なのだという。

 ここで肝になるのは、報道機関が独自取材によって犠牲者の実名を突き止めるのではなく、国家権力である警察組織の責任で犠牲者の実名を発表してもらう必要がある――ということだ。万一事実誤認があったとしても、責任は専ら警察のほうにある。それが、報道機関が実名報道する上での大前提であり、いわば“報道ムラの因習”のようなものだ。だから、報道各社は徒党を組んで警察に実名を公表するよう迫る。たとえ警察発表の前に取材で実名が判明したとしても、報道機関自らの責任において犠牲者の実名報道を先行させることは決してない(少年法の趣旨を確信犯的に犯し、未成年が犯した殺人事件で加害者少年の実名や顔写真を掲載する週刊誌等があることは、別次元の問題とする)。

 そこで、重大な疑問が生じる。今回、実名報道が敢行されたことで、意向を無視された20人の遺族を今後、報道各社は取材することができるのだろうか。実名の公表に反対していた20人の遺族には、反対する理由がそれぞれにあったと思うが、それを報じなくていいのか。そのことは「社会全体で共有」すべき「事件の全貌」の中には含まれないのか。

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