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石原結實「医療の常識を疑え!病気にならないための生き方」

減塩がうつ病などの病気の原因になる!?

文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士
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「Getty Images」より

 去る9月9日に関東・伊豆地方に上陸し、場所によっては風速50メートル以上を記録した強烈な台風15号は、千葉県を中心に約2000本の電柱を倒壊・損傷させ、一時は93万戸が停電、8日後の9月17日になっても6万7000戸、9月21日早朝の段階でも4600戸が停電していた。東京電力は当初は「11日中の復旧を目指す」と発表したが、その後は「復旧は13日以降」「最長で27日」と段々頼りなくなっていった。

 私が住む伊豆高原でも約20時間停電し、「電気のない不便さ」を嫌というほど思い知らされた。室内が暗くなるのは当たり前であるが、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、炊飯器などがことごとく使えない。水も貯蔵タンクに電気ポンプでくみ上げているらしく、一時停水になった。すると、水洗トイレが流せない。我々の生活が電気に支配されていることを痛感させられた。この電気のない生活を2週間以上、余儀なくされていらした一部の千葉県民の方々には、深甚から同情申し上げたい。

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『医学常識は疑え』(石原結實/青萠堂)

 今回の長期にわたる停電の最大の原因が、日本における「無電柱化」の遅れである。パリやロンドンなどヨーロッパの主要都市の無電柱化率はほぼ「100パーセント」。アジアのソウルやジャカルタでも「30~40パーセント」なのに、日本で一番無電柱化率の高い東京23区でも「約8パーセント」と低すぎる。

 電線を地下に埋没させるコストは「1km当たり約5億円」と、地上に電線を張るコストの約10倍にもなる。とはいっても、2020年にはビッグイベントの東京オリンピック・パラリンピックが開催される。「お・も・て・な・し」の国、日本でその期間中、運悪く風水害でも起こって長時間の停電が万一発生したら、と思うとぞっとする。今後の無電柱化への行政の対処は「焦眉の急」である。

人体内を縦横に走る「気」

 さて、電気こそ我々の生活のライフライン(生命線)ということが理解できたが、「電気」の重要性は人体でも同じである。心電図、筋電図、脳波などの医学検査などからも、心臓、筋肉、脳(に限らずすべての人体の臓器、細胞)の働きの原動力は電気であることがわかる。心臓の拍動が事故や病気で停止したときは、「AEDから心臓へ電気を流し、蘇生を図る」ことからも理解できる。

 2000年も前から漢方医学では、人体内を縦に走る「気」(電気に近いものと考えてよい)の通り道を「経脈」、横に走るそれを「絡脈」といい、その交差点を「ツボ」という。全身約360存在するこのツボを手指や針灸で刺激して、「気の流れをよくし、健康増進や病気の治癒を図る医学」が漢方医学である。

 人体を構成する約60兆個の細胞に、何の異常、病変、損傷がなくても「気の流れ」がストップすると人間は死に至る。漢方医学では「気」「血」「水」の流れをよくすることを健康の原則とし、気の流れをよくすると血液や水分の流れもよくなり、健康が保たれるとする。空気、気流、気圧、元気、気力、気分などから、「気とは目に見えないが、働きがあるもの」と定義できる。

 日常でこの気の流れをよくする方法としては、「ウォーキングをはじめとする運動」「入浴やサウナ」「カラオケをはじめ、自分の好きな趣味に打ち込む」「気のおけない友人、知人、家族との談笑や会食」などが挙げられる。

塩摂取の重要性

 食物に含まれる「気」の量を計って患者さんの食事指導、病気の治療を行っておられる医師が、私が尊敬している森下敬一医学博士(東京・お茶の水クリニック院長)である。

 同博士は昭和3(1928)年3月3日生まれで、現在91歳。昭和25(1950)年に東京医科大学をご卒業後、血液生理学の研究に没頭され、昭和30(1955~)年代には赤血球は骨髄ではなく、腸(の母細胞)でつくられるという「腸造血説」を打ち立てられた。その当時、朝日、毎日、読売、日経などの新聞の一面で大ニュースとして取り上げられたが、孤高の医学者である森下博士の「腸造血説」は一般の医学界から潰されたようだ。この「腸造血説」は今や、欧米の医学論文で、その正しさが証明されつつある。

 私は森下博士こそ日本人第一号のノーベル医学・生理学賞受賞者であるべき人だったと頑なに信じている。森下博士はこれまでコーカサス地方、エクアドルのビルカバンバ、ヒマラヤのフンザなどの世界的長寿郷の調査をされ、長寿者たちが食べている食物の「気」の量を測定されてきた。もちろん日本の食材の「気」の量の測定もされている。森下博士の論文から拝借して、食物の気の量の一覧表を掲げてみる(文末の図表)。

 食物中、最大の「気」を持つ食物が「自然塩」であることがわかる。「気力」のスポーツである大相撲の力士が立ち合い前に塩を口にすることがよくあるが、「気」力を高めようとする本能の仕業であろう。

「気」力を失ったtypical(典型的な)な病気が「うつ病」である。塩は体を温め、気力を高めるゆえに60年前までは、塩分を多量(青森の人たちは1日約28グラム)に摂っていた東北地方の人々が、「塩は高血圧と脳出血の元凶」との医学的見解により、今や「1日8グラム未満が理想」という指導を受け、体温が低下し、「うつ状態」「うつ病」の人が増加している。

 血液や羊水の塩分濃度と海水の塩分濃度は、ほぼ同じである。最初の始原生命は海水中で誕生した。塩は人類最古の調味料で、古代ローマ時代は「塩こそ最高の健康食」とされ、ラテン語の塩(sal)から健康(sanus)という言葉がつくられた。

 3分ストップされると死に至るほど大事な空気(酸素)も、吸い込みすぎると、ふるえ・痙攣・失神などを起こす「過呼吸症候群」が発生することがある。よって空気は「呼(は)いてから吸う」ということで「呼吸」というのである。

 水と塩とは体内で一緒に行動する。よって、運動、入浴、サウナを行ったり、この連載で何度も述べた人参ジュース、生姜紅茶などを摂ることで発汗・排尿を図り、塩分を体外へ捨ててから摂る塩分は害になるどころか、健康増進にとても重要なのである。そろそろ、塩分の重要性を再認識する必要がある。

 気力、体力が低下している人で、本能的に塩(辛い食物)が好き、うまいと思う人は塩、味噌、醤油、明太子、佃煮、漬物などをしっかり摂るべきである。塩について詳しく知りたい方は、拙著『「減塩」が病気をつくる!』(青春新書インテリジェンス)をご覧いただくと幸甚である。

(文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士)

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石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士

石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士

1948年長崎市生まれ。長崎大学医学部を卒業後、血液内科を専攻。「白血球の働きと食物・運動の関係」について研究し、同大学大学院博士課程修了。スイスの自然療法病院B・ベンナー・クリニックや、モスクワの断食療法病院でガンをはじめとする種々の病気、自然療法を勉強。コーカサス地方(ジョージア共和国)の長寿村にも長寿食の研究に5回赴く。現在は東京で漢方薬処方をするクリニックを開く傍ら、伊豆で健康増進を目的とする保養所、ヒポクラティック・サナトリウムを運営。著書はベストセラーとなった『生姜力』(主婦と生活社)、『「食べない」健康法』(PHP文庫)、『「体を温める」と病気は必ず治る』(三笠書房)、石原慎太郎氏との共著『老いを生きる自信』(PHP文庫)、『コロナは恐くない 怖いのはあなたの「血の汚れ」だ』など、330冊以上にのぼる。著書は韓国、中国、台湾、アメリカ、ロシア、ドイツ、フランス、タイなど世界各国で合計100冊以上翻訳出版されている。1995~2008年まで、日本テレビ系「おもいッきりテレビ」へのレギュラー出演など、テレビ、ラジオ、講演などでも活躍中。先祖は代々、鉄砲伝来で有名な種子島藩の御殿医。

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