お気に入りの料理を簡単に取り寄せられるフードデリバリーサービス「Uber Eats(ウーバーイーツ)」。サービス開始以来、注目度が高まる一方で悪評も目立ち、配達員に“料理を投げ捨てられた”というクレームまで飛び出した。
話題になっているのは、ツイッターへ投稿された利用者の声で、「Uber Eats頼んだら、配送30分ぐらい遅れたうえに、スープこぼされてグチャグチャになってたから受取拒否したら、マンション共有部分に投げ捨てられてた」というコメント。続けて「かなりありえないんだけど、(Uber Eatsの)サポートに連絡したら、個人事業主だから関与できない、勝手に警察に連絡しろの一点張り。ありえない」とUber Eats本部の対応を非難しつつ、紙袋が破れ、食べ物が床に散乱した様子の写真も公開した。
Uber Eats頼んだら、配送30分ぐらい遅れたうえに、スープこぼされてグチャグチャになってたから受取拒否したら、マンション共有部分に投げ捨てられてた。かなりありえないんだけど、サポートに連絡したら、個人事業主だから関与できない、勝手に警察に連絡しろの一点張り。ありえない…。@UberEats_JP pic.twitter.com/MxqpA46x3t
— Junya ISHINO/石野純也 (@june_ya) October 5, 2019
ウーバーイーツをめぐっては、ネット上にたびたびクレームが寄せられている。たとえば、口コミサイト「みん評」でユーザー評価を確認できる。寄せられた口コミのなかには、「商品不足してるし、ウーバーもお店も知らんぷり」「商品延着の上、商品一部なし」「配達員のマナーが悪すぎる」といった厳しい声がある。
今回ユーザーから寄せられた投稿は物議を醸し、ネット上には「悪質な配達員はごく一部だろうけど、ウーバーイーツは使いたくないな」「遅延は仕方ないにしても、料理を投げ捨てるというのは酷すぎる」「こういう人が運んでいると思うと、料理が届いても怖くて食べられない」「トラブルを想定して利用しないといけないなんて、サービスとして成立してるの?」といった反応が相次いだ。
ウーバーイーツを展開するUber(ウーバー)の公式サイトを見ると、「法的情報」ページに「ユーザーは、輸送業者が提供する輸送サービスに関する苦情を、輸送業者に提出するものとします」と明記。つまり、ウーバー側は責任を負わないと宣言しているわけだ。とはいえ、ウーバーに対して不信感を抱くユーザーも多く、「ウーバー本体に責任追及できないとなると、ずいぶん高額なサービスなのだなという気持ちになる」「ウーバーは仕組みを提供して稼ぐだけで、そのサービスには無責任」という批判も上がっている。
他方、ウーバーイーツについては配達員からクレームが上がることも珍しくない。2016年には、配達員がツイッターに「Uber Eats、オペレーションやばいのは知ってるけど給料が説明会やウェブに記載されてる予定日に入ってないのはさすがにマジでやばいだろ」と投稿。ほかの配達員からもネット上に、予定されていた給料日に未入金となっている現状を訴える投稿が相次いだ。
また今年7月には、配達中に事故に遭った配達員が、ウーバー事件対応担当者から、「(事故が)再度あれば、あなたのアカウントは永久停止になるかもしれません」と、脅しをかけるようなメールを送られたとネット上に投稿し、ウーバー本部の対応が非人道的だと非難の声が高まった。
UberEatsの配達中にコケるとこういうメールをもらえるよ!? pic.twitter.com/EJohA2hCL0
— クロヒコ(人生再設計第一世代) (@kurohikosan) July 13, 2019
配達員の行動に対して一切の責任を負わないとしているウーバー本部の立場は、法的に問題はないのだろうか。弁護士法人ALG&Associates執行役員の山岸純弁護士は次のように解説する。
かつての「バイク便」と類似の関係
確かに、ウーバー本部と配達員は、給料を払って働いてもらうという「雇用関係」にあるわけではなく、「料理等をお客さまに届ける」という業務を依頼されている関係(準委任関係)にあるので、ウーバー本部は、配達員が第三者に対し行った不法行為などの責任を負わないのが原則です。
ところで、かつてバイク便の「本部」と「ドライバー」も、同じような問題がありました。当初、バイク便の本部は、個人のドライバーとは雇用契約にないから残業代なども支払わないし、第三者に対し行った不法行為(交通事故など)も責任を負わない、という態度をとっていましたが、多くの裁判や厚生労働省の指針などにより、今ではドライバーは、(1)配達に従事する時間を拘束されている(配達業務がなくても、何時から何時まではどこどこで待機しているようにといった指示がある)、(2)指揮命令に従っている(日報などの提出を求められたり、配送ルートなどが逐一指定されているなど)ことなどを理由に、「本部に雇用される労働者である」という判断がなされています。
これと同じように、もし、ウーバーの配達員にも、(1)配達に従事する時間を拘束されている、(2)指揮命令に従っている、といった要素があるのであれば、やはり労働者と判断される可能性が高くなることと思われます。
この場合、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」旨、規定する民法715条(使用者責任)が直接適用されないまでも、人を“雇用”して利益を得ているのであれば責任も負うべきであるとする「報償責任」の考え方から、ウーバー本部も配達員が第三者に対し行った不法行為(スープをマンション共用部に投げ捨てて汚すなどの行為)の責任を負うと考えることができます。
(文=編集部、協力=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士)