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ソフトバンク、ウィーワークショックの次は“OYOショック”か…巨額損失で狂う戦略

文=編集部
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SoftBank World 2019(写真:田村翔/アフロ)

 ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長は12月17日、東京都内の国際シンポジウムで講演し「人工知能(AI)を大学入試の試験科目にすべきだ」と話した。「試験科目にすれば、学生が勉強し、AI研究で先行する米国や中国に負けないAI人材の育成につながる」とした。10兆円規模のソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)を通じ世界のAI企業に投資するSBGの孫氏は、「日本はAI後進国」と警鐘を鳴らす。

 足元のSBGの経営にも警笛が高く鳴る。2020年は同社にとって厳しい1年になる。可能性を秘めたAI企業に大金を注ぎ込み、大きな果実を手に入れる“孫氏の商法”は、米シェアオフィス大手ウィーワークへの投資で大失敗した。

 失敗はこれだけにとどまらない。SVFは米国でペット関連サービスを手掛けるワグの株式について、保有分をワグに売却することで合意した。18年1月、3億ドル(約330億円)をワグに出資し、持ち株比率は50%弱。ワグは米国ペット関連の成長企業という触れ込みの、犬の散歩を代行するスタートアップ企業。SVFの資金で犬の散歩代行アプリに積極的に投資したが、ライバルのローバーとの競争で苦戦。19年に入って人員削減を進めていた。

 米メディアによると、ワグのヒラリー・シュナイダー最高経営責任者(CEO)は11月に辞任。後任の29歳のギャレット・スモールウッドCEOは12月9日、社員に「ソフトバンクGと友好的に決別した」と述べたという。

 SBGはウィーワークで巨額の損失を出したばかり。米ウォールストリート・ジャーナル電子版(12月9日付)は「日本の巨大投資会社(SBG)によるもう一つの失望」と伝えたが、SBGで巨額損失をめぐり経営責任を追及する動きは皆無だ。

インド発格安ホテル「OYO」でトラブル発生

 インド発の新興ホテルチェーン「OYO(オヨ)」のトラブルも、ソフトバンクにとっては頭痛の種だ。ソフトバンク、SVFとOYOが3月に合同で設立した日本法人とフランチャイズ(FC)契約を結んだ既存の中小ホテルが、「契約後に、売り上げの『最低保証』を一方的に減額されたり、期限内に支払われなかったケースが少なくとも21件あった」(19年12月8日付読売新聞より)という。

 日本法人のOYOホテルジャパンは19年4月、「2020年3月までに日本最大のホテルチェーンになる」と宣言して日本での事業を始めた。すでに全国50カ所で100施設以上を運営、20年3月までにさらに100施設の開業を目指していた。正式名称は「OYOホテルズアンドホームズ」。AIを活用したインド発の格安ホテル運営会社という触れ込みである。

 OYOは13年、リテシュ・アガルワル氏が19歳で起業。個人経営の既存ホテルをフランチャイズ化し、わずか2年で客室数でインド最大手となった。各地のホテルオーナーを引き寄せ快進撃を続けた原動力は、膨大なデータの分析にある。宿泊の需給やイベント、天候などをAIで分析し、部屋ごとに料金を目まぐるしく調整して収益の最大化を図る。その見返りにフランチャイズ料や収益分配を受けるモデルで急成長した。

「1日、4300万回も料金を変えている。新時代のホテル経営だ」

 孫氏はこう舌を巻き、SVFを通じて10億ドル(約1100億円)を出資し、話題になった。OYOはSBGなどから巨額の資金を調達。インドのほか、中国、東南アジア、米国、欧州、中東、日本へと事業を拡大。世界800以上の都市で格安ホテルを展開している。

OYOの純損失は1年で3600億円

 OYOの内実は厳しい。英フィナンシャル・タイムズ電子版(19年11月27日付)は、「オヨの純損失は、(19年)3月までの1年に前年比6倍の3億3200万ドル(約3600億円)に膨らんだ」と報じた。

「事業拡大に多額の資金を投じており、黒字化はまだ遠い先のことだ。オヨの社内予測によると、インドと中国の黒字化は2022年まで実現しないかもしれない。米国や英国、その他の市場についてはさらに1年先だという。(略)SBGは、米シェアオフィス大手ウィーワークの救済に取り組む中、信頼の危機に直面する」(同紙より)

ヤフーが合弁解消

 SBG傘下のZホールディングス(旧ヤフー)は、OYOホテルズアンドホームズとの合弁関係を解消した。ヤフーは19年3月から始めた不動産賃貸サービス「オヨ・ライフ」の運営会社オヨテクノロジー&ホスピタリティージャパン(東京・千代田区)に3割出資していたが、19年11月に株式をオヨ側に売却した。

 オヨ・ライフは敷金・礼金・仲介手数料は無料、契約手続きはすべてスマホで完結する。不動産業者に出向くことはおろか、紙でのやり取りも一切なし。ネットでホテルの宿泊予約をするように即座に部屋を借りられるというのが謳い文句だった。だが、部屋の確保や稼働率の低迷に苦慮。複数のオーナーから契約をめぐる苦情が寄せられたため、わずか9カ月で合弁を解消した。オヨ・ライフは日本からの撤退が取り沙汰されている。

 OYOはインドや中国で質の低い格安ホテルをFC化し、稼働率を上げる仕組みを取り入れて急成長した。もともと質の高い日本の中小ホテルが、OYOのビジネスモデルになじむのか疑問視されてきた。

「売上を保証する『最低保証』がきちんと守られなければ、契約解除の動きはさらに広がる」(業界関係者)

 ウィーワークに追加出資したSVFは、今度は大赤字のOYOにも同じ手法を取るのだろうか。「ウィーワークは特別」といってきた基準が崩れると、壮大なドミノ倒しが始まる。

(文=編集部)

【続報】

 カナダのリチウム鉱山会社、ネマスカ・リチウムは12月23日、ケベック州高等裁判所に日本の会社更生法に相当する企業債権者調整法(CCAA)の適用を申請したと発表した。SBGは18年4月、約82億円(9910万カナダドル)を投じ、ネマスカの発行済株式の最大9.9%を取得した。新たに開発するリチウム鉱山の生産量(年間3万3000トン)の2割を優先的に購入できる権利を得ることでも合意していた。

 孫氏は発表当時、電気自動車(EV)の電池材料であるリチウムの需要の拡大を見込み、「グループ戦略上、極めて重要な一手」と述べていた。SBGにとってネマスカは最初の鉱山投資案件だった。戦略の練り直しを迫られることは必至だ。

BusinessJournal編集部

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