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すかいらーく24時間営業廃止で、すき家が漁夫の利か…逆に深夜需要が増える業種も

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
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ガストの店舗(「Wikipedia」より)

 ファミリーレストラン「ガスト」「ジョナサン」などを展開するすかいらーくホールディングス(HD)が、半世紀にわたって続けてきた24時間営業を、すべての店舗でやめると発表し、衝撃が走った。

 チェーンでは、「ロイヤルホスト」や「サイゼリヤ」が24時間営業をすでに廃止しており、外食産業における24時間営業廃止の動きが広がっている。コンビニエンスストアでも24時間営業の是非を問う議論が広がっている。こうした状況を受け、インターネット上では「今の時代、24時間営業は必要ない」といった意見が目立ってきた。だが、すべての店・ブランドを一括りにして24時間営業の是非を問うのは危険だ。

 すかいらーくHDは「ガスト」「ジョナサン」など約150店で24時間営業を実施しているが、人手不足が深刻化するなか、従業員の定着率や士気の向上につなげるため、4月までに24時間営業を廃止する。24時間営業している約150店を含む約560店で深夜の営業時間を短縮する。

 すかいらーくHDは1972年に24時間営業を始め、実施店舗を増やしてきた。だが、若者を中心に深夜の来店が減少するなどしたため、2012年ごろから営業時間の短縮を進めるようになった。ここ数年は需要の減少に加えて「働き方改革」による従業員の負担軽減が求められるようになり、営業時間短縮の動きが加速した。

 ロイヤルホストも同様の理由で段階的に営業時間の短縮を進め、17年1月に全廃した。深夜の営業をなくし、浮いた経費を客数が多いランチ・ディナータイムの増員経費に充てるなどして効率化を図っている。こうしたことが功を奏し、17年12月期は客数は減ったものの客単価が上昇し、既存店売上高は前期比2%増えた。

 この10年ほどでファミレスにおける深夜の利用状況は大きく変わった。かつては若者同士がコミュニケーションを図る場としての需要が強くあった。だが、ネット社会が広がったことで、その場はSNS(交流サイト)に移っていった。ファミレスで直に会って会話するのではなく、対話アプリ「LINE」などを通じて会話する人が増えたのだ。

 若者を中心にアルコール離れ・居酒屋離れが進んだことも大きい。最近は「居酒屋スルー」という言葉が広がっているが、居酒屋を利用する人の減少に伴い、飲み会で終電を逃して始発までファミレスで過ごす人も減っていった。かつては深夜のファミレスに行くと、こういった人たちをよく見かけたが、最近はめっきり見かけなくなった。

深夜にも需要が見込める業態

 こうして深夜の利用客が減り、働き方改革を進めるファミレス各社は続々と24時間営業の廃止へと舵を切った。ただ、こうした動きがあるからといって、なんでもかんでも「24時間営業は廃止すべき」と言うことはできない。深夜の需要や働き方改革の重要性は店・ブランドによって異なるためだ。

 深夜の需要は減っているとはいえ、まったくないわけではない。一定数は依然として存在する。深夜営業する飲み屋は、深夜に稼働する工場で働く人、長距離ドライバーなどの需要がある。また、深夜に飲食店やコンビニなどで働きたい人もいる。深夜労働は一般的に時給が高くなるので、それを目当てにする人は少なくない。

 ファミレスのように深夜の需要が大きく減っている業態がある一方で、需要が見込めるために24 時間営業を志向する業態も存在する。たとえば、牛丼チェーンの「すき家」がそうだろう。

 すき家は深夜の営業を従業員1人に任せる「ワンオペ」と呼ばれる過酷な労働実態が問題視され、14年に全店の6割にあたる1200店超で深夜営業の休止を余儀なくされた。しかし、その後は24時間営業の店舗を増やしている。

 すき家は「24時間356日提供」を基本としている。ファミレスと違って会話の場や終電を逃した人の受け皿という要素が小さいため、こうした需要の減少の影響が限定的だ。また、全体的には深夜の需要は減っているが、一方で24時間営業をやめるファミレスが増えて行き場を失った人が流れてくることが期待できるため、すき家は24時間営業の店舗を増やすメリットがあるといえる。

 コンビニも24時間営業の是非が問われているが、すかいらーくHDのケースとは別に考える必要がある。利便性が命のコンビニと、そうではないファミレスとでは、24時間営業が持つ力が異なるためだ。コンビニの深夜需要の減少は、ファミレスほどではない。

 また、独立した個人事業主のフランチャイズチェーン加盟店オーナーがほとんどのコンビニと、直営店舗がほとんどで雇われ社員が大多数を占めるすかいらーくHDとでは、営業時間が短くなって店の売り上げが減った場合の影響が大きく異なる。すかいらーくHD社員は、時短営業で店の売り上げが減ったとしても、収入はあまり減らないだろう。一方、コンビニオーナーは店の収益が自身の収入に直結するため、深夜帯に売り上げが見込める場合には時短営業にすれば収入が減る恐れがある。時短営業の影響が大きく異なるため、両者は別に考える必要があるだろう。

訪日外国人の増加で深夜の需要が高まる

 逆に、24時間営業の店舗を増やしている小売店もある。ドラッグストア大手のウエルシアHDは、「子どもが夜中に急に発熱した」「仕事が忙しくて病院に行けない」といったニーズや困りごとに対応するため、24時間営業の店舗を増やしている。カジュアル衣料品店のジーンズメイトは、増加している訪日外国人を取り込むため、一旦廃止した24時間営業を再開し、24時間営業の店舗を増やしている。

 こうした動きもあるが、一方で人手不足が深刻化するなか、従業員の定着率や士気の向上を図るために、営業時間を短縮する動きは今後さらに広がっていくだろう。人手を確保できなければ店舗網を維持できないからだ。だが、全部が全部、24時間営業をやめる必要はない。すき家やウエルシア、ジーンズメイトのように24時間営業を志向する店・ブランドがあってもいいだろう。

 今後は深夜の需要が増える可能性もある。深夜に活動することが少なくない訪日外国人が今後増えていくことが予想されているが、それに伴い夜間に観劇や観光などの娯楽を楽しむ「ナイトタイムエコノミー」が広がる可能性があるからだ。

 訪日外国人の間には「日本は深夜まで営業している娯楽施設が少なく、夜を楽しめない」といった不満の声が少なくない。こうした状況を受け、官民がナイトタイムエコノミーの促進につなげる取り組みを広げている。ナイトタイムエコノミーが広がれば、深夜における飲食店やコンビニなどの需要が高まる。

 こうしたことから、あらゆる業種について一律に「24時間営業は廃止すべき」と言うことはできない。ケースバイケースで考えるべきだろう。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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