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相原孝夫「仕事と会社の鉄則」

なぜ織田信長は、何度も自分を裏切った松永久秀を許し続けたのか?究極の“公平な人事”

文=相原孝夫/HRアドバンテージ社長、人事・組織コンサルタント
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織田信長(「Wikipedia」より/Quark Logo)

 今年のNHK大河ドラマが明智光秀を主人公としたものであるということなので、年末年始に明智光秀に関する本を数冊読んでみた。「本能寺の変」に関わる側面以外、ほとんど何も知らなかったということを改めて認識したが、今回、大事にも小事にも優れ、極めて優秀な人物であったことがわかった。

 高度な軍略を用い、自らも砲術の高い技術を持ち、加えて、学もあり、茶の湯など深い教養も身に付けており、洗練された立ち居振る舞いをする人物であったようである。そうした卓越した能力で次々と実績を上げ、織田信長家臣団のなかで突出した出世を遂げている。

 光秀の能力のなかでも、特に優れていると思われるのが、「忖度」力である。秀吉もそうだが、光秀も、信長の掲げる「天下布武」のビジョンのもとに、今自分が何をすることが、そのビジョンの実現のために重要か、早道かを考え、先々を見越してどんどん行動に移している。

 昨今、官僚や首相補佐官が首相を忖度した言動をとったことが問題化したことで、「忖度」という言葉や行為のイメージが極端に悪くなった感がある。しかし忖度とは、「他人の心を推し量ること」であり、ビジネス界にかかわらず、世間一般、人間社会で生きていく上で極めて重要な能力である。ビジネス界においても高度なスキルといえる。忖度できるということは、今現在置かれている状況を正確に理解でき、また、将来の状況を洞察することができなければならない。極めて高度な能力が求められるのだ。

 ビジネスの世界でも、上司の立場としては、部下が自分の期待をきちんと理解し、期待を上回るような仕事をしてくれたら、こんなに嬉しく、ありがたいことはないのではないだろうか。ただ、誤った想定のもとに進められることは困る。無駄な時間を費やしてしまうばかりでなく、場合によっては、リスクを誘発したり、顧客など重要な関係者との人間関係をこじらせてしまったりということにもなりかねない。昨今問題化している例も、誤った忖度であったり、倫理観を欠いた忖度であったりするから問題となっているのだ。

 では、忖度をする余地のないほど、事細かに指示を出せばよいではないか、と言われるかもしれない。しかし、どうであろうか、10名の部下がいるとし、一人ひとりが担当していることに対して、微に入り細に入り、逐一指示をすることが現実的に可能だろうか。もし多くの時間を費やしてそれを可能としたとしても、それはかえってマイクロマネジメントになり、部下の側としては、やらされ感に苛まれることになる可能性が高い。また、先を読んで仕事をするという、上の立場になればなるほど重要性を帯びてくる、ビジネス能力がいっこうに養われなくなってしまう。

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