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黒田尚子「『足るを知る』のマネー学」

新型コロナによる収入減を避ける方法…確定申告等の公的制度&変動費ムダを今すぐチェック

文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー
新型コロナによる収入減を避ける方法…確定申告等の公的制度&変動費ムダを今すぐチェックの画像1
「gettyimages」より

 今や、日本は新型コロナウイルス一色。その感染力は凄まじく、乳幼児や高齢者、既往症のある人ばかりでなく、若い世代であっても、発症すれば、重症化する可能性があると聞くと、他人事でない。報道などを見ると、自分が罹患すること以上に、他人に感染させてしまうことを気遣うあたりは、生真面目な日本人らしい。そう感じるのは、筆者だけだろうか。

 マスクやトイレットペーパーが品切れになったり、行事やイベントが中止になったり、全国の小中高校が一斉に臨時休校になったり(ちなみに、中三の娘の中学校も休校。あまりのことに涙も出ない様子)。

 日本人のほとんどが、何らかの形で新型コロナウイルスの影響を受ける中、日本経済の悪化や収入減少を心配する声も日増しに大きくなっているようである。

 そこで、FPとして、新型コロナウイルスが家計に与える影響と対策を考えてみたいと思う。

国の対策は、今のところ医療体制の強化や感染防止策が中心

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『病気にかかるお金がわかる本』(黒田尚子/主婦の友社)

 国の新型コロナウイルス対応策の第一弾として、安倍首相は2月13日午後に開かれた政府の新型コロナウイルス対策本部会合で、総額153億円の緊急対策を公表。2019年度予算の予備費103億円を使って、影響を受けた中小企業の当面の資金繰りを支援するため、日本政策金融公庫に緊急貸付・保証枠5,000億円を確保するという。これは主に企業への支援が柱だった。

 その後も、感染が収束する兆しは見えず。政府は追加の対策を迫られ、3月3日に行われた2020年度予算案の基本的質疑の中でも、安倍首相は、2019年度予算の予備費の残り2,700億円を活用して、新型コロナウイルスの緊急対応策を行う旨を強調。対応策の第二弾が、3月10日をメドに発表される見込みである。

 これまで、国の対策は、そのほとんどが医療体制の強化や感染防止策が中心のようだ。しかし、小学校などの休校に伴って、仕事を休まざるを得なくなった保護者等にしてみれば、働きたくても働けないのは収入減少に直結する。緊急時とはいえ、これをどうしてくれるのか。今後は、休業補償として、なんらかの対策を講じなければ収まらないだろう。

 同じく感染が拡大している海外では、すでに学生や低所得家庭に対する補助金を支給した国もあるといった報道も目にする。

 今のところ日本でも、厚生労働省が雇用調整助成金の特例を実施すると発表している。雇用調整助成金とは、従業員の賃金や休業手当の一部を補助する企業への支援策の一つ。すでに1月から、新型コロナウイルスの影響で経営が苦しくなった企業にも支給する特例措置を実施しており、要件をさらに緩和する。

 企業が受け取る助成金の上限額は、1人当たり日額8,330円。これよりも従業員に支払う給料が多い場合、差額は企業の負担になる。対象となるのは、正規雇用、非正規雇用を問わない。しかし、フリーランスの個人事業主や、自営業者の保護者は対象外だ。おそらく、今後の対策はもっと幅広い層を対象にした支援策となるのだろう。

公的支援はあくまでもベース。過剰な期待は禁物

 とはいえ、あくまでも筆者の私見だが、緊急の公的支援によって、今の状況が即座に、かつ劇的に改善するとは考えにくい。また、全世帯一斉に恩恵が受けられるわけでもないだろう。

 休業補償などは、小学生以下の子どもがいるシングルマザー・シングルファザー家庭や、住民税非課税などの低所得家庭等の“今、働かないと食べていけない!”という人々が優先される可能性が高い。あるいは、仮に児童手当等を受給している家庭に、一律上乗せで給付金がバラまかれたとしても、その金額はいかほどか。

 公的支援は、実施されるだろう。ただ、国全体を考えれば、雇用や景気対策のほうに財源を投入し、個々の家庭にとっては期待外れということもある。公的支援は、あくまでも最低限のベースにしかならないと思っていたほうが無難ではないか。過剰な期待は禁物である。

家計を改善させる方法はたった2つだけ

 そこで、個々のご家庭が行うべき家計の改善策だが、実はとてもシンプルで、2つしかない。一つは「収入をふやす」こと。もう一つは「支出をへらす」ことである。それぞれ詳しく説明しよう。

(1)「収入をふやす」具体的な方法

 収入をふやす方法として、「給料を増やす」「転職やキャリアアップして収入を増やす」「副業する」「長く働く」「世帯の中の働き手を増やす」「運用する」などが挙げられる。

 ただ、今の状況では現実的とはいえず、即効性にも欠ける。おそらく効果的なのは「公的制度を利用する」だろう。とくに、今の時期であれば、確定申告をして税金の還付を受けられないか検討する。例えば、1年間のうち10万円以上の医療費がかかった場合、「医療費控除」が受けられる。昨年(2019年分)でなくても、過去5年分までさかのぼって申告可能。数年前の入院費用や出産費用などがないか確認してみよう。

 税金の還付がある場合、通常であれば1~1カ月半で還付金が口座に振り込まれる。e-TAXで電子申告した場合は、もっと早いはずだ。

 なお、今年の所得税の申告期限等は、2020年2月17日(月)~3月16日(月)までだったが、2月末に、国税庁より確定申告期限の1カ月延長が発表され、4月16日(木)となっている。

 このほか、頻繁にウェブサイトや雑誌などで“届け出だけでもらえるお金”等々の特集を組んでいるので、詳しくは、そちらをご確認いただくか、自治体などで相談してみよう。現状としてすでに困っている方なら、何か利用できるかもしれない。ただし、医療費控除も同じく、すべての人が該当するとは限らない。しかも、公的制度なので、煩雑な申請が必要だし、給付までに時間がかかるのがほとんど。

 そこで、筆者が個人的にお勧めするのは、「不用品を売却する」である。ちょうど、今は年度末の進級・進学の時期である。子どもが自宅から出られないのであれば、不要になった子ども服や学用品、教科書、参考書等々を整理しがてら、売れそうなものはメルカリで売るか、知人に譲ってはどうだろうか。部屋も片付くし、ヒマも潰せるし、懐も多少は潤う。

(2)「支出をへらす」具体的な方法

 もう一つの家計改善方法は、「支出をへらす」である。おそらく今回のケースは、収入をふやすことよりも、こちらのほうが現実的で取り組みやすいかもしれない。病気やケガ、リストラ、災害などで収入が減少した場合、それに合わせて、家計を柔軟にスリム化するというのが基本的な考え方。しかし、いったん膨らんでしまった支出を、絞るのはなかなか難しい。

 家計支出を見直す際は、「固定費」と「変動費」の2つに分けて考えると良いだろう。固定費は、住宅ローン、子どもの教育費、民間の生命保険料など、「毎月必ず出ていくお金」のこと。変動費は、食費、水道料、光熱費、通信費、交際費など、「毎月変わるお金」のことである。

 固定費は見直しにくいものの、削減効果は高い。変動費は見直しが比較的簡単だが、削減効果はそれほどでもないといった特徴がある。

 新型コロナウイルスの影響が長期化すれば、固定費の見直しにも着手すべきだが(国民年金保険料など公的なものは減免申請などすぐできるものもある)、まずは変動費にムダがないかをチェックすることが先決だ。

 ポイントは「メリハリをつける」と「支払い方法を工夫する」の2つ。前者は、例えば休校になって子どものお弁当や食費がかさむのは仕方がないとして、被服費や交際費、娯楽費はちょっとガマンするなど、それぞれの家庭の価値観や考え方によって、何を優先させるかを考えてみる。

 後者は、買い物などの際にクレジットカードを利用して、支払いを先延ばしにする方法である。クレジットカードのメリットは、手元にお金がなくても、買い物やサービスを受けられる点だ。収入が減少して今の資金繰りが苦しいなら、お金が用意できるまでの1~2カ月間の時間を稼ぐことができる。

 しかし、使い過ぎないようきちんと管理することと、支払い期限には現金が用意できることが大前提である。併せて、クレジットカードなどで貯めたポイントも有効活用できないか検討してみよう。

イザという時の貯蓄はやっておくべき

 今回に限らず、筆者のところには、病気やケガ、失業、離婚等々、さまざまな理由から経済的に生活が苦しくなった方が相談にくる。その方々と接していると、「どうして何も自分で準備してなかったの?」とつい感じてしまう。

 もちろん、なんらかの事情があって、貯蓄がまったくなかったり、保険に加入していなかったりするのは理解できる。でもなかには、かなりの高収入があっても、貯蓄がほぼゼロという人もいるのだ。その方々はみな口を揃えて「自分がこんな目に陥るとは思っていなかった」という。

 今回の新型コロナウイルスの感染拡大を受け、事業や仕事に甚大な影響を受け、収入が減少してしまった人は多いはずだ。筆者も含め、1カ月前には、まさかこんなことになるとは思っていなかっただろう。

 災難は、いつ自分に降りかかってくるかわからない。

 遠い将来の老後資金がない! と憂えるだけでなく、いつでも「イザという時のお金」を準備しておくべきことを痛感した。一般的に、この緊急時用資金の目安は、生活費の半年分から1年分。生活費が30万円必要なご家庭なら、180~300万円である。要は、この間、収入がなくても生活できるように備えておくというわけだ。

 ちなみに、「NISA」や「つみたてNISA」を実行している人なら、積み立てた資金を取り崩して生活費に充当できる。

 同じ税制優遇が受けられるiDeCoの場合、原則60歳になるまで引き出しができないが、NISA等はそういった制限はなく、いつでも売却して利用可能。いったん使った非課税投資枠は復活しないものの、教育資金や老後資金だけでなく、イザという時にも利用できるという点で、メリットは大きい。新型コロナウイルスの影響で株価は下落傾向にあるが、それまで比較的株価は好調だったので、収益が出ている人も多いのではないだろうか。

 また、海外には、医療費として使う際には、税制優遇等が受けられる「医療用貯蓄口座」を導入している国もある。

 日本でも、国民に対してリスクへの「自助努力」を推奨するならば、もっと幅広い人々が利用しやすいような、インセンティブを付与した貯蓄制度を実施してくれることを期待したい。

(文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー)

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黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

 1969年富山県富山市生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年、株式会社日本総合研究所に入社。在職中に、FP資格を取得し、1997年同社退社。翌年、独立系FPとして転身を図る。2009年末に乳がん告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「おさいふリング」のファシリテーター、NPO法人キャンサーネットジャパン・アドバイザリーボード(外部評価委員会)メンバー、NPO法人がんと暮らしを考える会理事なども務める。著書に「がんとお金の本」、「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)など。近著は「親の介護とお金が心配です」(主婦の友社)(監修)(6月21日発売)
https://www.naoko-kuroda.com/

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