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一番悲惨な冬の孤独死の壮絶現場…事故物件も風俗店も“お祓い”に行く宮司の記録

文=菅野久美子/ノンフィクション作家
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一番悲惨な冬の孤独死の壮絶現場…事故物件も風俗店も“お祓い”に行く宮司の記録の画像1

照天神社の宮司、金子雄貴さん

 神奈川県相模原市にある照天神社の宮司、金子雄貴さん。彼は、さまざまな訳あり物件のお祓いに15年以上向き合ってきた。その数、ゆうに1000件以上。事故物件専門、金子宮司の知られざる世界をご紹介する。

一番つらい現場

 金子宮司のこれまでの経験で一番つらい現場は、冬場の孤独死だという。孤独死は近年社会問題になっていて、ひとりで誰にも看取られないで死ぬことを指す。年間3万人以上が孤独死しているといわれるが、政府が本腰を入れて調査していないため、その実態はわかっていない。

 孤独死現場を清掃する特殊清掃業者の数は年々増えており、業界は孤独死バブルともいえる状況だが、そのお祓いを行う金子宮司も実は引っ張りだこなのである。これまで500件以上の孤独死現場を見てきた金子宮司は、その現場の悲惨さについてこう話す。

一番悲惨な冬の孤独死の壮絶現場…事故物件も風俗店も“お祓い”に行く宮司の記録の画像2
『超孤独死社会特殊清掃の現場をたどる』(菅野久美子/毎日新聞出版)

「長年現場を見ていると、孤独死って、最高に苦しい死に方だってことがわかるの。孤独死って、安らかに死んでる人って、あんまり見たことないんだよ。体液とか、血を吐いたのか、壁にしぶきがあがって、ものすごく苦しんだ跡がある。助けを求めようにも、お金もないし、知り合いもいないような人が多い。孤独死って、ただ病気の痛み、苦しみに耐えて死ぬんだよ。こんなに苦しいことはない死に方だよな。もうみんな出口のほうを向いて、のたうち回った跡がある。

 一番きついのは、風呂場だよ。風呂場で死んだら、すぐに見つからないと、血圧とかで、死ぬとドロドロになっちゃって、警察も事件性がないから、全部は持って行かないんだよな。だから爪とか落ちてるよね」

 筆者も数々の事故物件を取材で渡り歩いてきたが、孤独死の遺体状況は長期間発見されなければ悲惨で、なおかつ周囲から孤立していると感じる例が多い。孤独死は単身者ならば誰の身にも起こり得るので、もはや他人事ではない。トイレや浴室などではヒートショックが起こりやすいので、寒暖差には要注意だ。

風俗店でのお祓い

 風俗店では、風営法の観点から窓がないことが多い。そのため、空気の通りも悪いことから、実はけっこうお化けが「出る」といわれているという。そのため、金子宮司は風俗店のお祓いを頼まれることが多々ある。

 金子宮司は、熟女風俗、キャバクラ、おかまバー、さまざまな風俗店のお祓いを手掛けてきた。ある日、関東某所の風俗店の店長からお祓いをお願いしたいと依頼があった。『花びら回転7500円30分』という看板を潜っていざ、お店に突入した金子宮司。店長に話を聞くと、何やら客がいないはずのボックス席に女性がひとりでポツンと座っているという噂を聞くのだという。そこで、なんとかして霊を追い払ってほしいというのだ。霊的な存在を信じない筆者は、まさかと思うが、当事者としてはなんとも切実な訴えであることが伝わってくる。

「まず、女の子とお客さんがボックス席に座るよね。そうすると、反対側の席に等身大の女性が座ってるって言うんだよ。不審に思ったお客さんから『なんで一人であんなところにポツンと女の子が座ってるの?』とあまりにも多く聞かれるんだって。目撃者もひとりや2人じゃないんだ。店で働く女の子もほとんどが、みんなその席に座ると女性を見るって言うんだ。それで、コトが終わってまたそこを見ると、いつしかいなくなってるらしいよ。そもそもこのお店では、ボックス席で女の子が待機することはないそうだよ」

 ふざけた客が「あそこのボックスの子をご指名で!」と指名すると、いつしか消えていなくなっているという。客からも女の子からも気味悪がられ、なんとか霊を追い払ってほしいと店長は金子さんにお祓いを依頼したのだ。

 建物全体のお祓いということで、バックヤードにも案内された。そこには山盛りの使用済みのおしぼりが積まれていて、女の子たちが使用していたボロボロになった歯ブラシが無造作にコップのなかに入っているのが今でも印象に残っているという。キラキラとミラーボールが光る中で、金子宮司は一心不乱に祝詞を上げた。店長も女の子もホッと胸をなでおろすような表情をしていたという。その後、その店から再び同じ依頼はなかったため、おそらく成仏したのだろうと金子宮司は踏んでいる。しかし、風俗店にはこうした不思議な話はつきものだ。

 このように金子宮司は、世のため人のため、通常ならば敬遠するような現場でも、求められれば関東一円、どこにでも駆けつける。すべては困っている人のためだ。金子宮司は、神主としては異色中の異色といった存在である。しかし世の中には、想像も及ばないような、ありとあらゆる困りごとを抱えた人がいるものだ。孤独死といった社会問題と向き合っているのも、事故物件と敬遠され、困っている大家や遺族がいるからだ。金子宮司は、そんな世の中のニーズと正面から向き合っている。

 そして、今この瞬間も神主としてあらゆる地域を飛び回っているだろう。

(文=菅野久美子/ノンフィクション作家)

菅野久美子

菅野久美子

1982年、宮崎県生まれ。大阪芸術大学芸術学部映像学科卒。ノンフィクション作家。著書に『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』『孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル』(双葉社)『大島てるが案内人 事故物件めぐりをしてきました』(彩図社)『アダルト業界のすごいひと』(彩図社刊)『エッチな現場を覗いてきました!』(彩図社)がある。

Twitter:@ujimushipro

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