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片田珠美「精神科女医のたわごと」

報じられない“コロナ自殺者”急増の懸念…中小企業倒産→失業問題への経済対策急務

文=片田珠美/精神科医
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東京ディズニーランドも休園に(写真:ZUMA Press/アフロ)

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、とくに飲食業と宿泊業が大きな打撃を受けているようだ。私は、某金融機関で定期的にメンタルヘルスの相談に乗っており、最近ある支店に行ったら、資金繰りに困って融資の相談に訪れたお客さんであふれていた。その支店には10年近く行っているが、こんなことは初めてだったので驚いた。

 職員の話を聞くと、「インバウンドの客が来なくなったうえ、外出自粛の影響で、収入が激減している飲食業と宿泊業の方が多い。運転資金を融資してくれという相談だが、数字を見ると、とても貸せないところもある。それでも、向こうは必死で、目が血走っているので、むげに断るわけにもいかない。ただ、融資しても、焦げつく恐れがあるので、本当に悩む」ということだった。

 影響は製造業にも広がっている。トヨタ自動車は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う部品調達の支障や販売低迷を受けて、国内5つの工場での一定期間の稼働停止を決めた。マツダも、国内2つの工場で操業を止めると発表した。

 自動車メーカーにおける工場休止の動きは、世界各地で広がっているようだ。これがいつまで続くのか誰にもわからない。もし半年以上続いたら、自殺者が急増するのではないかと危惧せずにはいられない。

自殺者数と失業者数は相関

 というのも、自殺者の増加は経済危機と密接に関連しているからだ。とくに自殺者数と失業者数の間には強い相関関係が認められる。

 わが国で年間自殺者数が初めて3万人を超えたのは、1998年である。その前年の1997年には山一証券と北海道拓殖銀行が、そして1998年には日本長期信用銀行が相次いで破綻している。終身雇用や年功序列を信じ、会社のために滅私奉公してきたサラリーマンも次々にリストラされた。

 それ以降、年間自殺者数が3万人を超える状態が14年連続して続いた。3万人を下回ったのは2012年であり、15年ぶりのことだった。ちなみに、自殺者が最も多くなったのは2003年で、3万4427人(そのうち、経済・生活問題を原因とした自殺者は8897人)だったのだが、その前年の2002年には失業者数がピーク(359万人)に達している。

 これは、決して偶然ではない。自殺者は、精神科を受診したことがあるにせよ、ないにせよ、うつ( Depression )になっていることが多い。うつのきっかけになりやすいのは、大切なものを失う喪失体験なのだが、経済的損失も喪失体験の1つにほかならないからだ。