
新型ウイルス肺炎が世界で流行 緊急事態宣言下の東京(写真:アフロ)
政府は7都府県に限定して発出していた「緊急事態宣言」を16日、全国に拡大した。国際政治学者の三浦瑠麗氏は6日、Twitterで「緊急事態宣言を、世論に押し切られて行う意味がいったいどこにあるのか」と投稿しているが、この緊急事態宣言の是非を冷静に分析しているメディアは非常に少ない。テレビに関しては皆無だ。ジャーナリストの青木理氏が7日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)で、緊急事態宣言を「野党やメディアが『早くやれ!』となったのは健全じゃない」と言ったのが象徴的だ。
緊急事態宣言はとりあえず5月6日までだが、京都大学の山中伸弥教授は15日付京都新聞のインタビューでこう話している。
「1カ月だけの辛抱だと多くの人が思っている気がする。かなりの確率で1カ月では元通りにならないと確信を持って言える。継続して我慢していかないと駄目だ」
山中教授は感染者数の拡大が収まるシナリオは3つしかないという。
「1つは季節性インフルエンザのように気温などの理由でコロナウイルスが勢いをなくすこと。(中略)後は2つ。ほとんどの人が感染して集団免疫という状態になるか、ワクチンや治療薬ができることだ。ワクチンや治療薬は1年ではできないのではないか。最低1年は覚悟しないといけない」
要するに、緊急事態宣言に関係なく、最低1年は行動自粛を続けなければならないという意見だ。
多くの人が「自粛と補償はセット」だと言う。だとすれば、政府は1年以上も補助金やら給付金を出し続けて、国民すべてを養っていかなければならないことになる。そんなことは現実的に可能なのか。政府が今回配ろうとしている10万円は一時金程度にすぎない。
集団免疫
そうすると、山中教授が示す解決策の2つ目、「集団免疫」を考えなければならない。ウイルスに一度感染すると、人間の体内に抗体がつくられて免疫ができ、その後はほとんど感染しなくなる。集団免疫とは、ある感染症に対して多くの人が免疫を持っていると、免疫を持たない人にも感染が及ばなくなるという考え方だ。1人の感染者が新たに感染させる人の数が平均1人未満になった時点で、集団免疫を獲得したということになる。感染が完全になくなるわけではないが、拡大を防げる。
イギリスのジョンソン首相は当初その作戦を取ろうとしたが、方針を転換して強力な社会封鎖を行った。ある意味で感染を許容するわけだから、集団免疫は政治的リスクが高い方策ではある。
日本でも、早い段階から過度な自粛に異論を唱え、集団免疫を獲得すべきと言っていた識者は何人もいる。実業家の堀江貴文氏は3月中旬、自身がプロデュースするイベントを中止しない理由について「自粛ムードを助長しないように行動してるだけ」と説明している。4月1日にtwitterで「集団免疫の獲得の方が早そうな気がする」とつぶやいている。