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伊藤詩織さん、はすみとしこ氏らを提訴…NHK『クロ現』が伝えたSNS中傷の壮絶な実態

文=編集部
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ジャーナリストの伊藤詩織さん(写真:AP/アフロ)

 6月8日、ジャーナリストの伊藤詩織さんが漫画家のはすみとしこさんら3人に合計770万円の損害賠償などを求め、東京地裁に提訴した。

 伊藤さんは元TBS記者の山口敬之氏からの性暴力被害を訴え、2019年12月に民事裁判で勝訴している(山口氏は控訴)が、はすみさんが伊藤さんを揶揄したり侮辱したりする内容のイラストなどをツイッターに投稿していたことが名誉毀損に当たるとして、慰謝料など550万円と投稿の削除や謝罪を求めているという。

 また、はすみさんの投稿をリツイートした都内在住の医師ら2人に対しても、それぞれ慰謝料など110万円と投稿の削除を求めているという。

 SNSでの誹謗中傷をめぐっては、恋愛リアリティー番組『テラスハウス』(フジテレビ系)への出演をきっかけに、女子プロレスラーの木村花さんが5月23日に亡くなったばかりだ。

 そして、木村さんの死から約10日後の6月4日の『クローズアップ現代+』(NHK)では、「ネットのひぼう中傷 なくすために ~女子プロレスラーの死~」というテーマが放送されていた。木村さんに対して「誹謗中傷の書き込みを行った」側への取材を行い、その実態を伝えるという内容だった。

誹謗中傷した側の“動機”とは

 木村さんが誹謗中傷を受けたのは、『テラハ』内での出来事がきっかけだった。木村さんがプロレスの衣装を洗濯機に残したまま、別の出演者が洗濯、乾燥してしまい、衣装が縮んでしまったことに木村さんは激怒し、相手をなじった。ここから、木村さんに対しての誹謗中傷が始まる(そもそも「演出」としてトラブルを「盛る」よう、制作サイドから指示があったのでは? という疑惑もある)。

『クロ現』内で、木村さんに浴びせられた誹謗中傷として出ていた文言のうち、一部を抜粋する。

「一刻も早く卒業してください」

「早くしねよ」

「本日見たら性格もゴリラでした」

「お前な性格悪すぎやぞ」

「情緒不安定のクソブス」

「最低」

「育ちの悪さが出ましたね」

「話し方下品」

「人間として未熟なんだなって見てて思いました」

「さっさと出てけ」

「外見がブスなら中身もブス」

 中には、NHKとして放送できないレベルの、もっとひどい誹謗中傷もあったのではないだろうか。

 木村さんを誹謗中傷した人たちの「動機」は以下の通りだ。

(1)20代男性(自身が病気で大学を中退している)

「俺たちは足元でギャーギャー騒いでるくらいの気分、正直。でも当人からしたらそんなことなかったんだなって」

「『うぜえな』と書いてる人はほかにもいたので、それに自分も同調するような感じで」

「『誰かと話したい』みたいな気持ち。自分の好きなもの嫌いなものを見せることで共通の話題ができるじゃないですか」

「(木村さんになじられた出演者に感情移入して)夢持ってがんばっているやつを、ある程度成功している人がバカにするなよと思う。その声を届けたほうがいいって思う。正義感ですよ。いらぬ」

 この男性は、木村さんが亡くなったことで自身の言葉に責任を感じ、SNSに反省の言葉を投稿する。

(2)木村さんへの誹謗中傷の書き込みをリツイートしていた30代女性

「同じ事を思ったものはその都度リツイートしていたように思います」

「他の人のツイートをリツイートする方が(自分が書きこむよりも)軽く感じていたかもしれません」

「いいね」とリツイートの使い分けの尺度は人それぞれだが、リツイートは引用した上での発信になるため、ブックマーク的な「いいね」よりも「自分のフォロワーにも見てもらいたい」という拡散の意志が強くなる。必ずしも同意や賞賛でなく、反論や「晒し」の意味でリツイートを使う人もいるが、基本的に「いいね」よりは強い思いから、リツイートは行われる傾向にある。

 木村さんへの誹謗中傷の書き込みは、『テラハ』放送直後の3月末に300件を超える。その後、4月中旬からは20~30件程度まで下がるが、5月中旬にYouTubeで追加映像が公開されると、誹謗中傷は再び増加する。

(3)木村さんに対し「見ていてイライラする」と書き込んだ男性

「ああいう言動や行動を見せられてこちらも不愉快な気持ちになったので、傷つく傷つかないは関係なくとりあえず自分の思いを言いたかったです」

「自分の意見を言いたかっただけなので、実際のところそんなに叩かれているかは知らなかったです」

 誹謗中傷の嵐の中、もともと木村さんのファンだった20代女性はこう話す。

「(木村さんを)擁護する方もすごく多かったけど、擁護されている方に対してさらに非難の声を浴びせるとかそういったことが多くて、そこに巻き込まれたくないというか、ただ見ているだけになってしまった。何もできずに終わってしまった」

木村さんの死後、誹謗中傷の6割が非公開に

 ネット炎上を研究する国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの山口真一准教授は、木村さんへの誹謗中傷を調査。その7割以上が「1回のみ」の投稿だったという。一方で、10回以上と執拗に投稿している人は1.3%。そのわずかな人たちで、誹謗中傷の全体の14.7%を占めていたという。

 この実態を受け、山口氏は「批判とかネガティブなことを考えている人ほど多くのコメントを能動的に発信する」「(実際の社会よりも)ゆがんだ意見分布において、あれ、私はこんなに敵ばっかりいるのかな、相対的に応援してくれる人は少ないし、ということになってしまう」と話す。

 木村さんは、死の直前に以下の投稿を残している。

「毎日100件近く率直な意見。傷ついたのは否定できなかったから。(略)弱い私でごめんなさい」

 木村さんの死の直後、誹謗中傷のツイートの6割は見えなくなったという。木村さんへの誹謗中傷を削除した男性は、『クロ現』の取材に対し「僕の投稿は不謹慎で笑えないなと思いました」「ツイートを削除したのは、特定など、別の掲示板で掲載されたら面倒なので消しました」と明かしている。

 ネット関連のトラブル相談に対応する「NPOあなたのいばしょ」には、木村さんに誹謗中傷をした人による相談が寄せられているという。内容の一部は、以下の通りだ。

「私は、その今騒がれている誹謗中傷をしてしまった一人だと思います。花ちゃんが死んじゃったのに、私は生きてていいんでしょうか。これからの花ちゃんの命を奪ってしまいました」

「人を殺してしまった」

「私はどうしたらいいのでしょうか」

IPアドレス開示、訴訟までの高いハードル

 さらに、『クロ現』では、2年にわたり誹謗中傷を受けたサイエンスライターの片瀬久美子氏を取材。片瀬氏はツイッターで政府の説明責任について発言したところ、200以上のアカウントから誹謗中傷され、それは日に日にエスカレートしていったという。

 その中で、「淫売やって学位取得」「旦那は強姦魔」「娘も含めて淫売家業」と、家族に対してまで異常な誹謗中傷を執拗に送り続ける人物がいた。片瀬氏はツイッター社に削除依頼を出すが、「攻撃的な行為を禁止するTwitterルールの違反にあたらない」という理由で削除に至らなかった。これのどこが「攻撃的でない」のだろうか。

 その後、片瀬氏は人物を特定して裁判を行うため、裁判所を通じ、ツイッター社にIPアドレスの開示を請求し、携帯電話会社やプロバイダの協力を得て、1年かけてようやく訴訟にこぎつける。特定されたのは、埼玉県の60代男性。数百のSNSアカウントを保持し、別の人物を装い誹謗中傷を繰り返していたという。

 民事裁判に相手は欠席で片瀬氏は勝訴するも、いまだ謝罪も支払いもないという。刑事裁判に望みをつなごうとしたが、嫌疑不十分で不起訴処分になった。数百ものアカウントを持ち、2年の間、誹謗中傷を片瀬氏に送り続けた男性は警察の取り調べに「悪気はなかった、遊びだった」と話したという。

 果たして、伊藤さんの提訴はどのような進展を見せるのだろうか。

(文=編集部)

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