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ブラック企業の代名詞だったワタミ、人材派遣事業に参入…復帰した渡邉会長の狙い

文=編集部
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和民の店舗(「Wikipedia」より/Asanagi)

 居酒屋チェーン・ワタミの創業者、渡邉美樹氏は2019年10月、8年ぶりにワタミの代表取締役会長に復帰した。09年に社長の座を、すかいらーく出身の桑原豊氏に譲り、会長兼最高経営責任者(CEO)に就き、悲願としてきた政界を目指した。11年、東京都知事選に出馬するため代表権を返上し、取締役最高顧問(同年、非常勤の取締役会長に)になった。都知事選では落選した。13年、取締役も辞し、参院議員となり国政に進出。ワタミには「1000%戻らない」と公言していた。

 しかし、ワタミの業績が悪化。ブラック企業批判を受けたうえに、外食事業が不振を極め、15年3月期には上場来初の営業赤字に転落。05年に進出し、有料老人ホームが100カ所を超えるまでに成長した、虎の子の介護事業を売却せざるを得なくなった。その後も業績悪化に歯止めが掛からなかった。

 6年間の議員生活を終えた渡邉氏は「創業者の責務」として、「絶対に戻らない」としていたワタミの経営に復帰した。ワタミの20年1月の外食事業の既存店売上高は前年同月比6.7%増。2月は1.2%増と持ち直してきた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が業績を直撃。外出自粛要請により壊滅的な打撃を受ける。3月の同売上高は40.4%減、4月には92.5%減と記録的な落ち込みを記録した。

 20年3月期連結決算の売上高は前期比3.9%減の909億円、営業利益は91.3%減の9200万円、最終損益は29億円の赤字(19年3月期は13億円の黒字)に陥った。減収は6年連続。新型コロナウイルス感染拡大により居酒屋の客足が減少。送迎会シーズンの3月の既存店売上の減少が痛かった。宅食事業も競争の増加で注文が減った。

 最終赤字は3年ぶり。21年3月期中に全店舗の13%にあたる65店舗の閉鎖を決め、減損損失19億円を前倒しして計上した。期末配当は2.5円とし、19年3月期(7.5円)を大幅に下回った。21年3月期の業績見通しは「未定」とした。

 経営の第一線に復帰した渡邉氏はコロナ禍にどう立ち向かおうとしているのか。

雇用維持のため食品スーパーに臨時出向

「ブラック企業」の代名詞となった苦い経験を持つ渡邉氏は、復帰に当たり社員やアルバイトを大切にする「ホワイト企業」への変身を誓った。コロナ対応の最優先課題は雇用の確保である。

 ワタミは新型コロナウイルスの感染拡大を受け全国の直営店約400店を臨時休業した。5月7日、休業店舗の従業員の一部を食品スーパーに出向させると発表した。首都圏にある居酒屋「三代目鳥メロ」や「ミライザカ」に勤務する正社員約130人が対象。同じ首都圏に40店以上ある食品スーパー、ロピア(川崎市)の店舗に派遣する、とした。

 雇用の維持をはかりたいワタミと、「巣ごもり」消費で来店客が急増し、人手が足りないロピアの思惑が一致した。契約は1カ月だが、居酒屋の休業が続いた場合は1カ月ごとに契約を更新することにした。

人材派遣会社を買収し、休業社員を小売店や農家に派遣

 続く5月20日、人材派遣事業に参入すると発表した。東証マザーズ上場のITコンサルティング会社ITbookホールディングス傘下の人材派遣会社、i-NEXT(大阪市)を買収。ワタミエージェントに衣替えした。買収金額は非公表。大手居酒屋チェーンが自前の人材派遣会社を立ち上げるのは珍しい。

 6月から全国のスーパーや農業、介護施設にワタミの社員を派遣する。休業店舗の正社員約780人とアルバイト約1万人のうち、希望する人が対象。派遣先が決まれば、ワタミエージェントが派遣先企業との契約に応じて給与を支払う。ワタミの正社員は派遣社員になった後も雇用契約を維持するため、休業手当は支給される、という。

 今期、65店舗を閉店する。その一方で、唐揚げとたまご焼きの店「から揚げの天才」を7月までに24店出店する。テイクアウト比率が90%という新しい業態の店で、「巣ごもり」需要の高まりに対応する。

 新型コロナ感染の収束が見通せないなか、他業種へスタッフを派遣して雇用維持につなげる。テイクアウト主体の店を出し、軌道に乗れば、さらに出店を増やす構えだ。雇用を維持するという枠組みは整った。次は、コロナ後の、本格的なビジネスモデルの構築だ。外出自粛が解除されても、すぐに客足が戻ってくるわけではない。コロナ禍は長期に及ぶ。外食企業はデリバリーや持ち帰りサービスに力を入れているが、あくまで一時的なつなぎでしかない。

 ポスト・コロナ時代、いやwith・コロナ時代の成長戦略をどう描くのか。渡邉氏の才覚の見せどころである。

(文=編集部)

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