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小澤貴子「化粧品のウソとホント」

フリマアプリで化粧品購入、使用済み・雑菌混入で肌トラブルの危険…出品者が違法該当も

文=小澤貴子/東京美容科学研究所
フリマアプリで化粧品購入、使用済み・雑菌混入で肌トラブルの危険…出品者が違法該当もの画像1
「Getty Images」より

 新型コロナウィルスの影響による外出自粛でネットショッピングの利用が急増しています。商品を購入しようとしてネット上で検索してみると、一般的なネット通販サイトだけでなく、メルカリなどをはじめとするフリーマーケットサイトも表示されます。このような「フリマ」とよばれるサイトやアプリでは、使用済・未使用を問わず、さまざまな化粧品が出品されています。

 現在日本で製造されている化粧品には、薬に準じるような安全上の制約や品質保証の義務があります。しかし、法律の抜け穴を突くようなフリマ出品もあり、ユーザーとメーカー双方にとって厄介な問題をはらんでおり、健康被害や肌トラブルの観点からも十分な注意が必要です。国民の健康を守るために、一刻も早く野放しをやめて法的規制をかけるべき危険な状況なのです。今回は、化粧品被害から国民を守るための法律がフリマでは機能しないのか、そして、どのような問題点と危険性があるのかについて、知っていただきたいと思います。

化粧品の製造販売は厳しく制限されている

 化粧品の製造販売は、薬機法(正式名は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」。旧称は薬事法)に定められているように、化粧品製造販売業の許可を得た者、事業者のみが行うことができます。

 フリマでは、許可を得ていない個人が化粧品を出品・販売しています。これは、法律に照らし合わせれば「違反」ということになるのですが、実際には「フリマ等は個人が購入し使用した中古化粧品を個人として処分する場である」とされ、「法的には問題ない」とグレーな判断がなされているのが現状です。

 しかし、下記のようなケースは薬機法において違反とされ、最大5年以下の懲役、もしくは500万円以下の罰金という罰則があります。

・製造販売業、製造業の許可なしに作成された手づくり品を販売した場合。

・海外化粧品の個人輸入品を転売した場合。個人輸入したものを不用品として処分販売する場合も違反。

・雑貨としての販売は罰則はないものの、業界の自主規制あり。ただし、「人に使える」と謳った時点で化粧品扱いとなり、罰則の対象となる。

フリマ市場では、安全性と信用を失う 

 化粧品は薬品と同様に非常に厳しい衛生基準を守って製造・販売されています。化粧品メーカーが工場で製造・包装した正規の商品は、「ユーザーが購入して開封するまで、誰も開けてはいけない」「一度でも誤って開封したものは、販売してはならない(工場に一度戻して、確認、検査後に再度包装出荷するなど、化粧品製造販売業として定められている出荷合格基準を満たさなければならない)」と薬機法に定められています。

 たとえ未使用だとしても、製品のフタを一度でも開けてしまえば、雑菌が入る可能性があります。たとえ一瞬だとしても、その瞬間に運悪くたった1つの雑菌が入ってしまえば、化粧品の中でその雑菌が悪さをする可能性があるのです。

 特に、梅雨から夏にかけては、雑菌が繁殖しやすい時期になります。また、クリーム、口紅、マスカラ、パクトファンデーションなどは、指でとったり直接つけたりなど、肌との密着性が高い化粧品ですから、世界中で感染爆発が起きている新型コロナウイルスのようなウイルスへの感染の危険性も無視できません。

 たとえば、個人で購入した化粧品を使用後に、小分けにしてフリマで販売したとしても、「個人で使用するために購入したものの不要になったので処分」という扱いとなり、今のところ法律違反にはなりませんし、当然罰則もありません。フリマに出品された商品は、誰が、いつ、どこで購入し、どのように保管していたのかがわかりません。さらに、使用(開封)済みのものであれば、前の人がどのように使用していたのかもわかりません。

 ですから、フリマ出品者が掲示した情報からは、「安全・安心」を読み取ることができないのです。「伝染する病気の人が指をつっこんだクリームかも?」「咳をしながら塗った口紅かも?」「害虫だらけの台所で手づくりしたものかも?」など、悪い想像はいくらでもできてしまいます。つまり、フリマで販売されている化粧品は、正規品と同様に衛生管理がなされた安全性が保たれているものであるという保証はないのです。

 さらに、フリマで購入した化粧品を使って肌トラブルが起きた場合、責任の所在がメーカーにあるのか、出品者にあるのかが不明な点も問題です。製造販売元は、製品製造から3年間、品質が変わらないようにする義務があります。これは開封前の状態のことで、開封後のことは対象外です。

 しかし、使用後の製品の安全性や皮膚トラブルについてもメーカーが責任を負うのが一般的です。開封後に毒物を混入させたりなど故意に問題となる状況をつくり出してから出品されたものについても、何かトラブルがあればメーカーが責任を負わされる可能性もあります。その一方で、出品者やメーカーなど誰も責任を負わず、購入者の泣き寝入りとなる可能性もあります。

 正規の製造・販売者にとって、フリマに出品されるということは、個人の転売人に顧客を奪われ、正当な利益を得られないということです。知らないところでブランドイメージが毀損され、最悪の場合、悪意の伝播に利用されてしまうかもしれません。新型コロナに感染した人が他人に移すために飲食店に行ったという事件があったように、わざと製品を汚染させて転売するなどという事態も想定されます。

 フリマ出品は、誠実な製品づくりに努めてきたメーカーにとって、今まで築き上げてきた信用を失う危険があるのです。

フリマで化粧品を扱わないでほしい

 そもそも、なぜ化粧品では薬と同レベルで製造から販売まで徹底した衛生・安全管理が行われているのでしょうか。それは、前述した危険を防ぐためで、そのために薬機法という法律があります。ですから、法的にグレーな解釈がされている化粧品のフリマ出品は、今後改善する必要があります。近々、化粧品メーカーの関連団体が厚生労働省へ問題提起するという話も出てきていますが、大きなムーブメントになるまでには少し時間がかかりそうです。

 最後に、ユーザーとメーカー双方が今できること、心がけたいことをまとめておきます。

【一般ユーザー】

・手づくり化粧品を売ってはいけない

・どうやって使用されていたかわからない中古品は危険

・転売は自分の好きな化粧品をがんばって製造している会社を貶める行為

・正しい知識をもち、正規販売化粧品を選び、安全と安心を得る

【メーカー】

・一般ユーザーにフリマ販売は化粧品には適さないこと、その危険性を伝える

・ユーザー側からフリマ購入品でのトラブル相談を受けた場合、薬機法に準じて必要な情報は担当薬務課に速やかに報告すること

 そして、肝心の行政には、一刻も早く現状の見直しを検討していただきたい思います。そのために、こうした事実と問題点を多くの方に知っていただき、行政や関連団体が対策に乗り出す動きにつながってほしいと思います。

(文=小澤貴子/東京美容科学研究所)

小澤貴子/東京美容科学研究所

小澤貴子/東京美容科学研究所

工学博士(応用化学専攻)
1975年生まれ。上智大学理工学部化学科卒業後、応用化学修士課程に進学。修士課程修了後、大手化学会社の研究員を経て、上智大学理工学部化学科非常勤助手として研究に携わる。
その後、祖父の代から続く、東京美容科学研究所に入所、肌と美容の研究の道へ。現在、同研究所にて、化粧品の研究とともに、正しい美容科学の普及に努めている。理美容のプロおよび一般の人々に対して、肌の生理や化粧品についての知識の向上を目指すべく、教育普及活動にとくに力を入れ、全国で講習会や講演を行っている。

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