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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

市川海老蔵、MCTオイルの副作用で七転八倒…市販の「健康オイル」は健康効果に疑問も

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
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「Getty Images」より

 歌舞伎俳優の市川海老蔵が9月4日の朝、MCTオイルを誤って多く飲み、激しい腹痛や下痢、吐き気などの体調不良に襲われたことをブログに綴った。その時の状況を「七転八倒、もう生きた心地しなかったのです」と明かし、その後の打ち合わせ中もクラクラし、ジムの後は「歩くことも困難で本当に大変だった」と振り返った。

 MCTオイルは、ダイエット効果や生活習慣病の予防に効果があるといわれ、この数年、健康志向の人の間で注目度が高まっている「中鎖脂肪酸」100%のオイルを指す。多くの食品会社などが中鎖脂肪酸含有のオイルやサプリメントを製造し、使用者は増加傾向にある。そんななか、なぜ海老蔵はMCTオイルの副作用のような症状に襲われたのか。

 MCTオイルについて、2人の専門家に話を聞いた。一般社団法人予防医療研究協会理事長の苅部淳医師は、海老蔵の症状について、次のような見解を示す。

「海老蔵が激しい腹痛に襲われたのは、MCTオイルの過剰摂取により、消化管がいわばオーバーヒートしてしまったためと考えられます。

 MCTオイルは、効率良く分解されてエネルギーとなり、脂肪として蓄積されにくいのが特徴です。このため、MCTは胃もたれを起こしにくく、食が細い高齢者の低栄養対策に最適な油といえます。また、私も40年以上前から医療現場で使っており、エネルギーが必要な未熟児や病弱な方、てんかんの患者に効果的であると考えています。

 しかし、大さじ1杯当たり100キロカロリーもあるため、過剰摂取は消化管に多大な負担をかけるだけでなく肥満にもつながります」

 サプリメント管理士のRIINA氏は、MCTオイルのメリットと注意点をこう説明する。

「MCTオイルは、美容、疲労回復、ダイエット効果等で注目されています。飲み物に入れたり、料理に加えたりして、手軽に取り入れやすいのが良い点ですね。

 初めての方には、小さじ1杯くらいの少量からスタートして、徐々に量を増やしていくように指導しています。その理由は、大量に摂取してしまうと、ケトン体が血中に増えすぎて、嘔吐、下痢、強い眠気等を感じる可能性があるからです」

 まさに海老蔵の症状に当てはまる。過量摂取はくれぐれも避けてほしい。

有効成分の含有量の低さ

 過剰摂取が危険である半面、現在、中鎖脂肪酸を含む製品は多種販売されているが、一般的な「健康オイル」には有効成分の含有量が低く、あまり健康効果が得られない可能性も指摘されている。

「ココナッツ油やパーム核油に多く含まれる『中鎖脂肪酸』は、内臓脂肪をためないことが確認されています。こういった作用は現代人に有効と考えられるため、特に意識して摂取していただきたい脂肪酸ですが、含有率が低い健康食品やサプリメントでは、実際に摂取できる量が少なく、効果が期待できるかは怪しいところです」(同)

 一般に市販されている健康オイルは、「中鎖脂肪酸含有」と記載されていても実際の含有率は11%程度。つまり、オイル総量の10分の1程度しか中鎖脂肪酸を摂取できていないことになる。

 海老蔵が摂取したのは中鎖脂肪酸100%のMCTオイルとみられるが、それでも「過ぎたるは猶及ばざるが如し」。普段はトレーニングや食事管理など体に気を遣う海老蔵が、身をもって我々に「適正量が大事」だと教えてくれたのかもしれない。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

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吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

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