ビジネスジャーナル > 企業ニュース > スバルのアイサイト車は修理代高額?
NEW

スバル「アイサイト」装着車はエーミングで修理代が高額?飛び石傷でガラス交換20万円

文=萩原文博/自動車ライター
スバル「アイサイト」装着車はエーミングで修理代が高額?飛び石傷でガラス交換20万円の画像1
最近は高級車だけでなく、軽自動車でもさまざまな運転支援システムを搭載している。写真は、三菱自動車のeKクロススペース。

 高額車だけでなく、現在では軽自動車でも衝突被害軽減ブレーキをはじめとしたさまざまな運転支援システムを搭載している。この運転支援システムを支えているのが、カメラやミリ波レーダーといったセンサーなどのデバイスで、フロントガラス内をはじめ、バンパー、ドアミラーなどの場所に設置されている。こうしたデバイスが、現在のクルマの修理を難しくしているのをご存じだろうか?

 これまでは、たとえば駐車時にバンパーを壁に擦ってしまったとか、高速道路走行中に飛び石がフロントガラスに当たったとかの場合には、傷めたそのパーツのみを交換すればよかった。しかし、多くのセンサーを搭載した現代車の場合、ことはそう簡単には済まないのである。特に重要なのが、交換時の「エーミング」という調整作業で、単なるバンパー等の交換のほかにセンサー類の交換も必要になるほか、さらにこの「エーミング」という調整費用が加わり、修理費用は以前より確実に高くなってしまう。

 それでは、いったいこのエーミングとは具体的にどういうことを行うのか。そして、この作業が必要になった場合、飛び石によるフロントガラスの交換費用はいくらぐらいになるのか。実際の事例をベースに紹介してみよう。

スバル「アイサイト」装着車はエーミングで修理代が高額?飛び石傷でガラス交換20万円の画像2
フロントガラス内に装備されたカメラ。写真は三菱自動車のeKクロススペース。

運転支援システムの「エーミング作業」は、ディーラー系修理工場でしか行えない?

 先進の運転支援システムのエーミングとは簡単にいえば、機能調整作業のこと。レーダーセンサーや音波センサーが付いたバンパーやフロントグリルといった外装類の脱着、カメラがついたフロントガラスの交換などのほか、フレーム修正を伴う板金塗装などを実施した際、先進安全装置を正しく作動させるために行う作業のことを指す。

 国土交通省はすでに、センサーやカメラなど検知システムの交換や修理などの作業を「分解整備」と位置付け、これらの作業を実施できるのは、一定以上の設備を備えた認証工場に限る方向で検討を始めている。すなわち、新たにエーミング作業も分解整備のカテゴリーに加えることで、安全性確保をより確実なものにしていく考えだ。

 しかもエーミング作業の実施には外部故障診断機(スキャンツール)やレーダー照射用のターゲット、広い作業スペースなどが必要で、正確に作業するための知識も欠かせないゆえ、ディーラー系の修理工場でしか行えないといったことも増えてくるだろう。ゆえに、バンパーの交換自体はこれまで付き合いのあった修理工場で多少安く行えても、センサーのエーミング作業は施設の整ったディーラー系の整備工場に持ち込まなければならず、費用がかさむ……といった事態も増加することが予想されるのだ。

アイサイト装着車は、わずか2cmの飛び石キズでもリペアはNG?

 実際筆者も、以前所有していたスバルXVでフロントガラスに飛び石をくらい、フロントガラスの交換を余儀なくされた経験がある。

「ぶつからないクルマ」で一躍知れ渡ったアイサイトは、フロントガラス内に設置されたステレオカメラによる映像を用いた運転支援システムなので、人間の視覚と同様に周辺の明るさなどで影響を受ける。さらに、フロントガラスを通して前方を監視しているので、フロントガラスが汚れていたり傷があったりすると、性能を100%発揮できないケースが生じてくるのだ。

スバル「アイサイト」装着車はエーミングで修理代が高額?飛び石傷でガラス交換20万円の画像3
「ぶつからない車」として一世を風靡したスバルの運転支援システム「アイサイト」。フロントガラス内に装備されたステレオカメラで監視する。

 その高速道路の走行中、筆者の耳にも確かに「ビシッ」とイヤな音が聞こえた。確実に飛び石だと思い、停車後にフロントガラスを見てみると、フロントガラスのほぼ真ん中に2cmほどの飛び石傷を発見。大きくなる前にリペアすれば大丈夫だろうと、すぐにディーラーに持ち込んだのだ。

 ところがディーラーから言われたのは、「通常はリペアでまったく問題ないのですが、アイサイト装着車の場合、この位置のフロントガラスのリペアはアイサイトの機能が発揮できなくなる可能性があり、交換となってしまいます」との、背筋がゾッとするようなお言葉。なんでもアイサイト装着車は、ステレオカメラの前面エリアにできてしまったフロントガラス傷に関しては、原則としてガラス交換となってしまうのだという。自分がぶつけたわけでもないのに、たった2cmほどの飛び石傷で、約20万円の出費……。

スバル「アイサイト」装着車はエーミングで修理代が高額?飛び石傷でガラス交換20万円の画像4
飛び石による傷はたった2センチほどなのに、これで修理代20万!

ディーラー経由の保険に入っていなければ、フロントガラス交換+エーミング作業で20万円!

 それでは、いっそのこと低価格のガラスに交換すれば……と思う向きもいるかもしれないが、フロントガラスを交換すると、上述したアイサイトの「エーミング」という作業が発生し、これは専用機器のあるスバルのディーラーでしか行えない。ゆえに、ガラスだけ知り合いの整備工場で安く交換する、というわけにもなかなかいかない。

 結論からいえば、幸い筆者の場合、ディーラー経由で自動車保険に加入していたため、「アイサイトプラス」なるアイサイト装着車限定のサービスが付帯していたことが幸いした。これは、アイサイト機能に支障が生じるフロントガラス損害(飛来物)の場合、保険期間に一度だけ、免責額3万円でフロントガラスの交換とアイサイトのエーミング調整を行ってもらえるというもの。

 もしこの保険に入っていなければ、フロントガラス交換(工賃込み)で17万6007円、アイサイトエーミング調整で3万465円、しめて計20万6472円の大出費となるところであった……。もちろん、今回エーミングを行ったのは1カ所だけだったので費用はこの金額で済んでいるが、調整する場所が増えれば、その分エーミング費用も高額になるだろう。

 運転支援システムが充実したクルマは、フロントガラス内にカメラを設置しているだけでなく、フロントやリアバンパーにセンサーも装着しており、ちょっとぶつけただけでも、運転支援システムを正確に作動させるためのこうしたエーミング作業が必要となることもある。もちろんぶつけないための装備なのではあるが、それでもぶつけてしまった場合には、これまでのクルマとは比較にならないほどの出費を伴うケースもあることを、ぜひとも覚えておいてもらいたい。

(文=萩原文博/自動車ライター)

萩原文博/モータージャーナリスト

萩原文博/モータージャーナリスト

モータージャーナリスト。1970年生まれ。10代後半で走り屋デビューを果たし、大学在学中に中古車雑誌編集部のアルバイトに加入し、中古車業界デビュー。1995年より編集部員として本格的に携わり、2006年からフリーで活動。中古車の流通、販売の造詣が深く、新車でも多くの広報車両に乗車するなど精力的に取材を行っている。

スバル「アイサイト」装着車はエーミングで修理代が高額?飛び石傷でガラス交換20万円のページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!