高速道路などでよく見かける、タイヤがバースト(破裂)して走行不能になった無残なクルマの姿。こうしたトラブルの要因としては、タイヤの空気圧不足やキズであることが多い。
JAFロードサービスの2019年のお盆期間におけるクルマのトラブル対応の出動理由としては、タイヤのパンク、バースト、エアー圧不足は、一般道においてはバッテリー上がりに次ぐ第2位。これが高速道路に限定すると、断トツの1位となるのである。
コロナ禍による外出自粛期間中だった2020年のゴールデンウィーク期間においても、絶対数は減少しているものの、2019年のお盆と同様、パンク、バースト、エアー圧不足はクルマのトラブルの上位にランクインしている。
そこでここでは、そんなトラブルを少しでも避けるため、クルマのタイヤにまつわる数字の見方、そして実際のトラブル防止法を紹介してみたい。
タイヤの寿命は3万〜5万km、3〜5年が目安
タイヤは一見、黒いゴムの地味なパーツだが、非常に重要な役割を担っている。
軽自動車でも約1トン、人気のSUVともなれば2トン近い重量を、前後左右4つのタイヤで支えているのだ。しかも、1つのタイヤが路面と接している面積は、わずかハガキ1枚分。したがって、タイヤ4つでもわずかハガキ4枚分の面積で、クルマの走る・止まる・曲がるという基本操作を支えているという重要なパーツなのである。
では、まずはタイヤの寿命について。
ここでは一般的な夏タイヤについて紹介しよう。夏タイヤの寿命は、走行距離で3万〜5万km、期間としては3〜5年が目安といわれている。これがスポーツカーなどに装着されるハイグリップタイヤになると、これより短くなる。高いグリップ力を生むために、柔らかいコンパウンド(ゴムの素材)を使用しているからだ。
また、そもそも素材としてのゴムは空気に触れると劣化して徐々に硬化する特徴があり、タイヤ本来の性能を発揮できなくなっていく。ゆえに、まだタイヤの溝が残っていたとしても、年月が経過すればするほどタイヤは硬化していることが多いので、交換したほうがベターだ。そういう意味でも、前述の走行距離3万〜5万km、期間3〜5年、という目安は覚えておいたほうがよいだろう。
タイヤ横の「セリアル記号」で、製造年週を把握せよ
さて、「タイヤの寿命は3〜5年」といわれても、「そもそも装着されているタイヤがいつ作られたのかわからない!」 そう思う人も多いはず。しかし、実はクルマに装着されているタイヤには、製造番号が必ず刻印されており、そのタイヤが作られた「製造年週」がわかるようになっている。具体的には、タイヤの側面(片側)には「セリアル記号」という記号が刻印され、そのタイヤが何年の第何週に製造されたものなのか……が表示されているのである。
タイヤのセリアル記号のうち前半部はアルファベットで書かれており、工場コード、サイズコード、設計コードなどを意味する。そして後半の4つの数字が製造年週を示しており、最初の2つの数字が製造週で、最後の2つの数字が製造年だ。写真のタイヤであれば4つの数字が「2119」なので、「21」が21週目、「19」が2019年を指す。つまり、2019年の第21週……要は5〜6月頃に生産されたタイヤだということがわかるわけである。
またこのセリアル記号確認の際、タイヤのサイドウォール(横の部分)にキズやひび割れがないかをあわせてチェックすることも強くオススメする。サイドウォールはタイヤのなかでも弱い部分なので、縁石などにぶつけたりこすったりすると傷がついてしまい、それが原因で走行中のバーストにつながることも多いからだ。
タイヤの「サイズ」を把握するための“暗号”の読み方
タイヤのサイドウォールには、もうひとつ重要な数字がある。それは、タイヤの「サイズ」を把握するためのものだ。画像のクルマの場合は「225/55 R18 98V」と刻印されている。以下、各数値が何を意味するか列挙してみよう。
・225
「タイヤ幅」が225mmということ。
・55
「扁平率」。タイヤの断面幅(接地面)に対する断面の高さ(サイドウォール)の比率で、55%ということ。
・R
「ラジアルタイヤ」であることを表す。
・18
装着するホイールの「直径」が18インチということ。
・98
「ロードインデックス」。規定の条件下において、タイヤ1本で支えることのできる最大負荷能力を示す指数。指数の数値ごとに対応する負荷能力が決められており、98は98kgではなく、750kg。つまり、1本のタイヤで750kgの負荷能力があることを示している。
・V
「スピードレンジ」。規定の条件下で、装着されているタイヤが走行できる最高速度を示している。Vならば最高速度240km/hまで対応しており、Yであれば300km/hで走行可能な高性能タイヤだ。
△マークのスリップサインを見逃すな
続いては、スリップサインの△マーク。
タイヤのサイドウォールには、三角形のマークがある。この三角形のマークに従ってタイヤのトレッド面(路面に接地する面)を見てみると、溝のなかに一段高くなっている部分がある。これが「スリップサイン」だ。
このスリップサインは、タイヤの溝の残りが1.6mm以下になっているということを把握するためのサインで、タイヤ全周で4〜9カ所設置されている。
溝の深さがこのスリップサインの高さまですり減ってくると、タイヤの排水性が悪くなり、雨天時走行でスリップしやすくなったり、タイヤと路面の間に水の膜が張ってコントロールできなくなる「ハイドロプレーニング現象」が発生しやすくなるなど、非常に危険だ。
また、そもそもこのスリップサインが出て摩耗してしまったタイヤは法律で規制されており、車検もクリアすることもできない。運転者のみならず同乗者の命をも左右するので、スリップサイン、その高さ1.6mmという数値は、しっかりと覚えておきたい数字だ。
クルマごとに決められた「指定空気圧」のチェックをこまめに
最後は、「指定空気圧」だ。
いくらタイヤが新品でも、注入されている空気の量が足りなければ、バーストの原因となってしまう。指定空気圧とは、クルマごとに決められた空気圧のこと。新車時に装着されていたタイヤと同サイズのタイヤの場合、この空気圧が適正な空気圧となる。
多くの場合、クルマの運転席側のフロントドアを開けたところに「タイヤ空気圧」というシールが貼ってあるので、確認してもらいたい。輸入車の場合は給油口のフタに貼っていることもあるので、一度確認しておくとよいだろう。
空気圧のチェックは、1カ月に1回程度が目安といわれている。普段はセルフガソリンスタンドを使用している人でも、月に1回程度はスタッフのいるフルサービスのガソリンスタンドを利用し、空気圧をチェックしてもらうなどするとよいだろう。
外見上は溝も残っていてまだまだ使えそうなタイヤでも、実は製造されてから年月が経っていることも多い。見逃されていたキズやヒビのせいで、負荷のかかる高速走行を行うといきなりバーストを起こすというケースも珍しくはない。
クルマのメンテナンスのなかでも、最も重要なのがタイヤだということは、キモに銘じておきたいものである。
(文=萩原文博/自動車ライター)