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テスラ車は本当に安全なのか?シートベルト固定されてない、ボディのチリ合ってない

文=佐久間翔大/A4studio
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テスラ「Model 3」(「Wikipedia」より)

 7月1日、EV(電気自動車)、太陽光発電、クリーンエネルギーなどをストロングポイントとしているアメリカの自動車メーカー、「テスラ(Tesla)」の時価総額が2076億ドル(約22兆3000億円)を記録した。長年自動車メーカーの時価総額で1位だったトヨタ自動車の同日の時価総額21兆7185億円を凌ぎ、テスラが世界トップとなったのだ。

 2003年設立と自動車業界のなかでは新興メーカーとなるテスラは、2008年リリースの「ロードスター」を皮切りに、さまざまなEVを発表してきた。特に2016年登場の低価格モデル「Model 3」は高い人気を得ている。

 テスラ車の特徴は、オートパイロットなどの革新的な技術が導入されていることや、ソフトウェアをアップデートすることで機能の改善や追加がされることにある。しかし、チリ合わせができていない(ボディパネル同士の段差が合っていない)、左右で異なるドアが取り付けられている、シートベルトのアンカーが固定されていないなど、日本では不良品と糾弾されかねないハードウェアの問題点がインターネット上で指摘されることも多い。

 はたしてテスラの自動車は信頼できる車なのだろうか。情報サイト「All About」で車ガイドを務め、海外の自動車事情にも詳しい小池りょう子氏に話を聞いた。

本国でEVメーカーとしての絶対的な地位を築いたテスラ

 従来の自動車メーカーがエンジン、ステアリング、ボディといったハードウェアに注力して自動車を発展させてきたのとは異なり、テスラはそういったハードウェアの各パーツをコントロールするソフトウェアに注力し、自動車設計を行ってきたことが革新的であるといわれている。

 実際、日本ではソフトウェアの面で注目されることが多く、アップルのiPhoneのように定期的にシステムアップデートが行われることから、メディアなどでは“走るスマートフォン”と呼ばれることもある。本国のアメリカにおいて、テスラはどのようなメーカーとして捉えられているのだろうか。

「テスラのセールスポイントとしては、やはりソフトウェアが挙げられるのですが、アメリカではEVのトップメーカーだという認識が強いですね。ソフトウェアや先進装備に対する評価は、あくまでEVメーカーとしての功績が土台となっているという印象があります。

 テスラの拠点が置かれているシリコンバレーがある西海岸では、テスラ車が多く走っていて、特にカリフォルニアでは“石を投げればテスラに当たる”といわれるほどです。保守的な人が多いとされる東海岸でもたびたび見かけられ、私が住んでいるボストンでも半日の外出で3、4回ほど『Model 3』が走っているのを見かけますね」(小池氏)

 また、アメリカ国内でのテスラの評価について語るには、最高経営責任者であるイーロン・マスクのカリスマ性は避けては通れないという。

「イーロン・マスクが支持されている最大の理由は、自分が発言した目標を次々に叶えていく、有言実行の人だということです。彼は既存の自動車メーカーがやらなかったことを言っては実現する、ということを何度も繰り返しているので、未来的な人、将来を見据えた人を意味する“ビジョナリー”という言葉で表現されることも多いですね。

 テスラが行った先進的な取り組みのひとつが、現在のアメリカでは常識と化している車のオンライン販売です。ディーラーに足を運んで商談をする必要なく、インターネットを使って5分で車が購入できる販売スタイルは、面倒な手続きを嫌うアメリカ人の気質とも合致していて、高い評価を受けました。

 そのため、今年の7月に時価総額で自動車メーカー1位となったのも一朝一夕のことではなく、イーロン・マスクの経営手腕や革新的な試みの数々など、これまでの実績の積み重ねによるものではないかと考えられます。ただ、イーロン・マスクは発言によって株価が乱高下する人でもあるので、トップでいられるのは今だけなのか、持続的にトップに立ち続けられるのかはまだわからないのが正直なところです」(小池氏)

テスラへの評価で見える日本と世界の車に対する考え方

 では、品質についてはどのような見方がされているのだろうか。小池氏に話を聞くと、日本とアメリカでの車に対する根本的な考え方の違いが見えてきた。

「私の身近なところでも、ワイヤーハーネスが接続されていなかったため、ヘッドライトが点かなかったテスラ車の話を聞いたことがあります。ただ、テスラがことさらに状態不良が多いというわけではなく、シンプルな構造でつくりが甘いという傾向がアメ車自体にあるため、そういったミスはよく起こることだという印象がありますね。

 アメリカでは機械は壊れるものだという考え方が根づいているので、初期不良などがあってもディーラーに持ち込んで直してもらったり、あるいは自分で直したりすればいいという発想になりやすいです。そのため、初期不良が多いから信頼できないメーカーだと取り沙汰されることは、アメリカではあまりありません。しかし、精密で壊れにくい日本車と比べるとどうしてもつくりの粗さが目立つため、日本のメディアだとその点がクローズアップされやすいというのはあるかもしれませんね」(小池氏)

 テスラでは個々人のユーザーから利用状況や渋滞情報を吸い上げ、ビッグデータとして集約し、ソフトウェアのアップデートというかたちでユーザーに還元している。

 このシステムに対して「ユーザーを実験台にしているのではないか」と批判的な意見があがることもあるが、そういった指摘はまだアメリカほどビッグデータが重要視されていない、日本特有のものなのだという。

「数多くのユーザーからデータを集めることで、その信用性が向上していきますし、何よりも車での移動をより快適に、より楽しくできるため、デメリットはひとつもないのではないかと思います。

 ユーザーから集めた情報をソフトウェアにフィードバックすることもそうですが、ユーザーの車の使い方やニーズに対応する技術は、テスラが最も優れているといわれていますね。最近ではユーザーの意見を反映し、ペットを車内に残した際に車内温度を一定に保ち、ユーザーにすぐに車に戻るよう通知する『ドッグモード』という機能を昨年2月に実装しています。

 そうしたほかの自動車メーカーが気づかなかった問題に取り組んで、ソリューションを提示する革新性に魅了された人、未来志向の車に乗りたいという意識がある人に、テスラは選ばれていくのではないでしょうか」(小池氏)

 何をもってして「安全な車」というかは非常に難しい問題だが、世界的な基準で見れば、テスラは信頼できるメーカーだといえるだろう。また、「ドッグモード」のような安全・安心面を考えた機能が実装されたことを思うと、さらに安全性が向上される可能性は高い。今後テスラがどのような進化を遂げていくのか、要注目だ。

(文=佐久間翔大/A4studio)

A4studio

A4studio

エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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