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巨人、史上最多5度目の4連敗&記録ずくめの屈辱…球団史上最長V逸で原監督退任の可能性も

文=上杉純也/フリーライター
巨人、史上最多5度目の4連敗&記録ずくめの屈辱…球団史上最長V逸で原監督退任の可能性もの画像1
「読売ジャイアンツ」公式サイトより

 11月25日、今年のプロ野球・日本シリーズが幕を閉じた。結果は、福岡ソフトバンクホークスが読売ジャイアンツ(巨人)を史上初となる2年連続の4連勝で倒し、まさに圧勝するかたちとなった。

 これでソフトバンクはパ・リーグ球団としては史上初となる4年連続の日本一を達成したワケだが、その快挙の裏で気になる記録がある。

 実は、今回を含めて「無敗で日本シリーズ4連勝」は、引き分けも含めると9回ある。そしてそのうちの6回に巨人が関係しているのだ。というワケで、巨人の“日本シリーズ4タテ”の歴史をあらためて振り返ってみたい。

 巨人はこれまで6回の“4タテ”を経験しているとはいえ、4連勝はたった1回で、あとの5回は4連敗なのだ。

 唯一の4連勝は、02年の対西武ライオンズ(現埼玉西武ライオンズ)との戦いである。この年は巨人が原辰徳、西武が伊原春樹と、ともに新人監督の対決となった。巨人はペナントレースで全球団に勝ち越して86勝をあげ、対する西武も2位以下に16.5ゲーム差をつけて90勝をマーク。いずれも圧倒的な差でリーグ制覇しているだけに、好勝負が期待されていた。

 だが、結果は巨人が4-1、9-4、10-2、6-2と4試合とも快勝することになる。これは21世紀最初の4連勝であると同時に、巨人としても球団史上初の記念的出来事となった。なお、巨人はこのシリーズで、初戦を先発完投したエース・上原浩治を筆頭に計8人の投手を登板させているが、全員が1試合のみの登板に終わっている。つまり“複数試合に登板した投手がゼロ”という珍記録を残したのだ。

 一方、まさかの4連敗を喫した西武は、エース・松坂大輔が大誤算だった。実はこのときの松坂は故障明けで、決して万全の状態ではなかったのだ。当時の投手コーチだった松沼博久は、ペナントレース終盤に調子を上げて8勝をマークした石井貴を初戦の先発投手に推していたが、伊原監督はエースでいくことを決断。

 だが、それが裏目に出てしまった。0-0で迎えた3回裏、巨人の清水隆行と清原和博にそれぞれ2ランを浴び、4失点KOされてしまったのだ。さらに3連敗で後がない第4戦では、2-2の同点で迎えた6回表から松坂がリリーフ登板したものの、2回4失点で降板するハメになってしまった。結局、松坂はこのシリーズで2敗を喫し、西武が4タテされる一因となってしまった。

巨人惨敗の歴史

 一転して、ここからは巨人の惨敗の歴史を綴っていくことになる。

 最初は1957年のシリーズだ。相手は西武の前身・西鉄ライオンズである。三原脩監督率いる西鉄と水原茂監督率いる巨人の対決は、56~58年まで3年連続であったが、本シリーズはその2年目。初戦から3-2、2-1、5-4、0-0、6-5と、引き分け以外はすべて1点差で西鉄に軍配が上がる。

 負けた巨人は西鉄のエース・稲尾和久に2敗を喫したことが致命的となった。さらに、ここぞという場面で豊田泰光、大下弘といった相手の主軸に手痛い一発を浴びてしまう。反対に西鉄は捕手の和田博実という“ラッキーボーイ”も生まれ、短期決戦で接戦をすべて勝ち取る一因になった。

 ちなみにこのシリーズは引き分けを挟むものの、4勝0敗で決着した初の日本シリーズで、巨人にとっては屈辱のシリーズといえる。かたや西鉄の三原監督は、前述した60年のシリーズでも大洋の監督として大毎相手に1点差ストレート4連勝を飾っており、その勝負強さが改めて浮き彫りとなった。

 巨人2度目の4タテ敗退は、このわずか2年後のこと。相手はソフトバンクの前身となる南海ホークスである。戦前の予想では、互角かやや南海有利という見方であったが、その南海には不安要素があった。監督の鶴岡一人である。これまで日本シリーズで4度、巨人と対戦しているが、4度とも敗れ去っていて相性の悪さを露呈していたのだ。

 だが、そんな不安はこのときに限っては無用だった。ある1人の選手が巨人の前に立ちはだかり、驚異的な活躍を見せたのだ。それが右のサブマリンエース・杉浦忠である。

 杉浦は初戦に先発して8回3失点で降板したものの10-7での勝利に導くと、続く第2戦でも4-2とリードした5回表から3番手で登板。すると最終回まで1失点しか許さず、6-3での勝利に貢献したのである。さらに杉浦は第3戦、第4戦と連続先発し、第3戦では被安打10ながら延長10回142球を投げ抜き3-2で勝利、第4戦も巨人打線に5安打しか許さず3-0の完封勝ちを収めた。

 こうして巨人は杉浦の“炎の4連投”の前に屈する格好となってしまった。4試合で計32イニングを投げた杉浦に対し、放ったヒットは27本と、つけ入る好きがないわけではなかったが、ここぞという場面で抑えられてしまったのである。

 当然、シリーズMVPには杉浦が輝いた。その杉浦は「一人になって泣きたい」という名文句を残し、話題になった。初めて南海が日本シリーズで巨人と対戦してから8年、5度目の挑戦で勝ち取った日本一に、地元・大阪市民は歓喜した。大阪市内で行われた優勝パレードでは、沿道に約20万もの人が集まったのだ。その熱狂と興奮は今でも“御堂筋パレード”と呼ばれ、長く語り継がれている。逆に巨人は南海悲願の日本一実現のためのいい引き立て役となってしまった。

記録ずくめの屈辱的4連敗

 3度目は元号が昭和から平成に変わって間もなくの90年。前年に8年ぶり17回目の日本一に輝き、連覇をもくろむ巨人の前に、2年ぶりの日本一奪還を目指す西武が立ちはだかった。

 両チームともそれぞれのリーグを圧倒的な強さで勝ち上がってきていたが、事前の予想では巨人が圧倒的に有利という見方が多かった。エース・斎藤雅樹や桑田真澄などセ・リーグの防御率トップ4が君臨し、チーム合計シーズン70完投を記録するなど、投手陣が充実していたからである。

 だが、いざシリーズが始まると、その自慢の投手陣が西武打線のエジキとなってしまった。第1戦の先発はエース斎藤ではなく槇原寛己を起用したのだが、これが完全に裏目に出てしまった。

 こうして投手ローテーションを誤った結果、初戦から5-0、9-5、7-0、7-3と西武がすべて4点差以上をつけて圧勝し、戦いの幕を閉じた。この意外な結末に対し、「西武は完璧な野球をみせた」「ただ投げて打つだけの巨人とはレベルが違いすぎた」など、西武の野球を称賛する声が世論の大勢を占めることとなる。なかでもこのとき巨人の選手会長だった岡崎郁は「私の野球観が変わった」と述べ、衝撃の大きさを物語っている。

 このとき現役の選手としてシリーズに出場していた原辰徳は、のちに監督として西武に挑み、見事4連勝で日本一に輝いているが、それはこの屈辱から数えて12年後のことだ。

 そして4度目と5度目が、令和になってからの昨年と今年である。昨年は巨人が誇る打線の主軸・坂本勇人と丸佳浩がソフトバンクバッテリーの強気の内角攻めの前に完全に抑え込まれ、打線が分断され、守っても四死球や守備で手痛いミスを連発してしまう。その結果、初戦から7-2、6-3、6-2、4-3というスコアでソフトバンクが4戦全勝のスイープを収める。逆に敗れた巨人は、これで昭和、平成、令和の3元号で4連敗を経験した唯一のチームとなった。

 さらに今年である。初戦から5-1、13-2、4-0、4-1とまったく歯が立たずに4連敗を喫したワケだが、なかでも第3戦ではソフトバンク投手陣の継投の前に9回2死まで無安打無得点に抑えられる始末。結局は丸がソフトバンクのクローザー・森唯斗からヒットを放ち、史上2度目の“継投によるノーヒットノーラン”を免れるのが精一杯だった。

 こうして悪夢の2年連続の4連敗を喫した巨人は、同時に現実から目を背けたくなるような屈辱的な不名誉記録を数多くつくってしまった。4試合トータルの「打率1割3分2厘」と「安打16」は“シリーズワースト新記録”で、4戦合計「4得点」もシリーズ最少得点タイ記録だ。ソフトバンクの強力投手陣を打ち崩せず、シリーズを通じてほとんど見せ場すらつくれなかったことが、あらためて明らかになる成績だ。

 さらに、巨人は13年の東北楽天ゴールデンイーグルス戦の第7戦から「日本シリーズ9連敗」となり、球団ワーストタイ記録。原監督個人も9連敗中である。しかも日本シリーズで2年続けて同じ相手に4タテを喫し、完膚なきまでに叩きのめされ、歴史に刻まれる屈辱的な大惨敗。

 逆に前身の南海から数えると、この組み合わせは12度あるが、「ホークス」が勝った3回はすべて4勝0敗で、3度目の4連勝優勝は史上最多である。

 最後に、個人的には原監督の去就がどうなるのかに注目したいところだ。監督として9度のリーグ優勝と3度の日本一を達成し、ワールドベースボールクラシック(WBC)で世界一に輝くなど間違いなく名将といえるが、今回の日本シリーズで悲劇が繰り返され、巨人として8年連続で日本一を逃すという球団最長記録となっていることは見過ごせない。その責任を取って電撃辞任する可能性も、常勝球団の監督としては十分に考えられる。

上杉純也/フリーライター

上杉純也/フリーライター

出版社、編集プロダクション勤務を経てフリーのライター兼編集者に。ドラマ、女優、アイドル、映画、バラエティ、野球など主にエンタメ系のジャンルを手掛ける。主な著作に『テレビドラマの仕事人たち』(KKベストセラーズ・共著)、『甲子園あるある(春のセンバツ編)』(オークラ出版)、『甲子園決勝 因縁の名勝負20』(トランスワールドジャパン株式会社)などがある。

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