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住宅ローン全額返済→銀行から指定の司法書士への抵当権抹消依頼を強要…なぜ?

文=Business Journal編集部
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銀行
「Getty Images」より

 住宅ローンを全額返済した際に、銀行に対して抵当権の抹消登記をするための必要書類を求めたところ、銀行が指定する司法書士に登記を依頼するように強要された、といった体験がSNS上で話題になっている。だが、実はどこの銀行でも“お抱え司法書士”は存在し、登記業務が発生すると、その司法書士を使うことを実質的に強制しているケースは多い。

 5月7日、X上に某銀行で住宅ローンを全額返済した際、「銀行指定の司法書士に抵当権抹消の依頼をする必要がある」と言われ、事実上、銀行お抱えの司法書士に仕事を依頼するように強要されたとの体験談が投稿された。投稿者が抗議しても態度は変わらず、担当者の上司にも苦情を言ったところ、あっさりと翻ったという。

「某銀行は、住宅ローンを全額返済すると、『弊社指定の司法書士に抵当権抹消の依頼をする必要があります。』と言い切る。そんなのは契約書にはない。抗議をすると、『決まりです。』とか言い出す。上司に代わってもらい、ボロクソに言うと、あっさりと、それをひっこめた」

 この投稿は3日間で約50万回も表示されるほど瞬く間に拡散された。さらに、「司法書士を強要するのであれば、抹消登記の費用を銀行で持つべき」「契約条件になってもいないのに『決まりだ』などと強要するのはおかしい」などと批判の声が相次ぎ、なかには「この運用を公言しているのは三井住友銀行」として、件の銀行を推察する向きもある。

 だが、ある司法書士によると、これは特定の銀行の話ではないという。

「メガバンクから地方銀行、信用金庫や信託銀行に至るまで、ほぼすべての金融機関に“お抱え司法書士”は存在します。しかし、これは癒着して顧客から暴利を貪るためではありません。むしろ、お抱え司法書士に登記を依頼すると、街中の司法書士よりも安くなるケースもあります。司法書士は、報酬を安く抑える代わりに定期的に仕事を受注できるように便宜を図ってもらっているわけです。銀行側にしても、費用が安くなれば顧客のメリットになるだけでなく、特定の司法書士に同じような内容の仕事を繰り返し依頼することで、登記のミスが発生するリスクを抑えたり、銀行側の負担も減らせるというメリットがあります」

 経験豊富な司法書士に依頼すれば登記申請にかかわるミスが減るという点は理解できるが、銀行側の負担とは何を意味するのか。

「実は都市銀行のほとんどは、過去に合併や分割などで名称の変更を繰り返しており、抵当権を設定した当時と現在の銀行名が異なるケースがよくあります。その場合、登記されている銀行と現在の銀行の同一性を証明するために、登記簿謄本などを申請書に添付する必要があります。お抱えの司法書士であれば間違いなく、登記の際にその謄本を還付する手続きを取って、銀行に戻します。しかし、あまり抵当権等の抹消登記に慣れていない司法書士や一般の方が自分で登記申請する場合には、還付の手続きを取らずに法務局に提出してしまいがちです。すると、その謄本はもう帰ってこないので、謄本の代金は損失となってしまいます。謄本は500円程度ではありますが、銀行としてはできる限り繰り返し使用したいところでしょう」

 銀行側の都合や、お抱えの司法書士に仕事を回したいという意向も理解できなくはないが、抵当権の抹消登記を依頼することを強要するのは倫理的に疑問が残る。

「確かに、強要すべきではありません。一般的に不動産登記に関しては、登記によって利益を受ける“登記権利者”の側が司法書士を指定するのが暗黙のルールになっています。例えば、不動産を購入する場合は取得者側、抵当権を設定する場合は銀行などの融資側です。抵当権を抹消することで利益を受けるのは不動産の所有者で、銀行側は“登記義務者”です。登記に協力する義務はありますが、司法書士を強要するのはおかしいですね。住宅ローンを完済した顧客から、『司法書士を紹介してほしい』と頼まれた場合に限って、紹介すべきだと思います」(前出司法書士)

 不動産に関する登記を経験したことがある方は多くはないかもしれないが、実は抵当権の抹消は難しくない。銀行から交付される書類一式とハンコを持って、該当不動産の管轄の法務局に持ち込むだけで登記の申請はできる。事前に法務局のホームページからダウンロードして申請書を作成することが望ましいが、わからない場合は法務局の窓口で教えてもらいながら作成できるからだ。ちなみに、登記申請の費用は不動産1筆につき1000円で済む。

 抵当権抹消登記を司法書士に依頼した場合の報酬はおおよそ1万円から2万円くらい(事務所によってバラつきが大きい)だが、自分で申請すればその費用を抑えられる。住宅ローンを完済した際には、ぜひ参考にしてほしい。

(文=Business Journal編集部)

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