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楽天G、銀行が貸し渋りか、融資が4割減…資金調達コスト上昇、続く巨額赤字

文=Business Journal編集部
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楽天グループ本社ビル(「Wikipedia」より/掬茶

 2023年末時点での楽天グループ(G)の主力3行からの借入金残高が前年比で4割減となっていることが、4日に開示された株主総会の招集通知でわかった。同社は24~25年に計約8000億円の社債償還を控えており、今年に入りドル建て社債で18億ドル(約2700億円)を調達したのに加え、先月には議決権と普通株への転換権がない社債型の種類株を発行して最大1000億円を調達すると発表。楽天Gは23年12月期まで5期連続で最終赤字が続いており、銀行融資より資金調達コストが高い社債発行にシフトしている背景には、銀行が同社への融資に慎重になっていることがあるのではないかという見方も広まっている。

 楽天Gの足元の環境が厳しい。23年12月期の売上収益(売上高にあたる)は前期比8%増の2兆713億円、営業損益は2128億円の赤字、最終損益は3394億円の赤字となり、5年連続の最終赤字。赤字の主因は携帯事業で、同事業の営業損益は3375億円の赤字。携帯電話のサービス開始から4年が経過したが、同事業がEC事業と金融事業の利益を食いつぶす構図が続く。

 楽天モバイルは契約数の目標値を1200万件としているが、23年12月末時点では596万件。携帯電話事業について24年末までに単月黒字化(EBITDAベース)、25年に通期黒字化をするとの目標を示しており、黒字化の条件として契約数800万~1000万件、ARPU(一契約あたりの月間平均収入)2500~3000円が必要としている。だが、23年10~12月期のARPUは1986円にとどまっており、前四半期から60円下がっている。

「もともと楽天Gは携帯事業について23年中に単月黒字化すると言っていた。1年以内に契約数を現状より約3~6割、ARPUを約2~5割も引き上げないと、年内の単月黒字化が厳しいということであり、この目標を額面通り受け取る向きは少ない」(金融業界関係者)

資金調達コストが上昇

 そんな同社の目下の課題が、24~25年に迎える計約8000億円の社債償還だ。同社は携帯電話事業の資金を主に社債発行によって賄ってきたが、24年に約3200億円、25年に約4800億円の償還を迎える。前述のとおり、まず年内にドル建て社債と社債型の種類株の発行により最大で計3700億円を調達。また、25年に償還期限を迎える個人向け社債については、同社は先月14日の決算発表会見で借り換えリスクは僅少だとの見解を示している。

 一方で今回明らかとなった銀行からの借入金残高の減少。23年末時点で、みずほ銀行は前年比約3割減の2015億円、三井住友銀行は約5割減の601億円、三井住友信託銀行は約5割減の464億円となっている。金融業界関係者はいう。

「銀行が楽天Gへの融資に慎重になり始めているとみていい。すでに昨年の段階で一部の銀行が楽天Gとのコミットメントライン(銀行融資枠)の更新に後ろ向きの姿勢を見せたといわれており、貸し渋りが起きている模様。現在のドル建て社債の利回りは12%ほどで、銀行融資の金利より高く、楽天Gにとっては資金調達手段が融資から社債発行や社債型の種類株の発行に切り替わることで資金調達コストは上昇する。また社債型の種類株の発行というのは日本ではポピュラーではなく、楽天Gの資金調達がより厳しい状況に追い込まれている様子がうかがえる。

 23年12月期決算では約700億円の繰延税金資産の取り崩しを行っているが、これは要は同社が24年度以降の利益が見通しよりも低くなると判断しているということ。少なくてもあと1~2年は多額の最終赤字が続くと予想される」

 もっとも、楽天Gはこれまでにも社債償還に備え資金調達面でさまざまな手を打ってきた。まず、23年7月には楽天証券の持ち株会社、楽天証券ホールディングス(HD)の新規上場を東京証券取引所に申請。だが、競合するSBI証券が日本株の売買手数料をゼロにすると同年8月に決定したことを受け、楽天証券も手数料をゼロにすると決定。売買手数料収入が減るため上場が難しくなり、楽天Gは上場の代わりに楽天証券株を、みずほ証券に売却する方針に転換。楽天Gは楽天証券株の約3割を、みずほ証券に売却した。

 昨年12月には、傘下の楽天銀行の売り出し株式の売却が完了し、約600億円を調達(楽天銀行株の保有比率は63%から49%に低下)。このほか、楽天Gの成長の源ともされる楽天ポイントサービスに関係する楽天ペイメントを傘下に持つ楽天カードを上場させるとの観測も流れている。

「金融事業と楽天ポイントは楽天経済圏の成長にとっては大きな柱であり、生命線ともいえる存在。それらへの関与を徐々に薄めていくというのは、楽天Gにとって良い方向ではない」(同)

最強家族プログラム

 資金繰り悪化への懸念を払しょくするためにも、携帯電話事業の黒字化は急務だ。楽天Gが契約者増の起爆剤として2月に打ち出したのが「最強家族プログラム」だ。家族で「Rakuten最強プラン」に加入すると、1回線あたり月額110円(税込、以下同)の割引が適用されるというもの。

      通常(月額) 割引後(月額)
・3GBまで  1078円     968円
・20GBまで 2178円     2068円
・無制限  3278円     3168円

 紹介者には家族一人を紹介するごとに7000ポイント、被紹介者には1万3000ポイント(MNPの場合)が還元されるため、家族6人で加入すると計10万ポイントが還元される。仮に全員が3GBまでのプランを契約すると968円×6人×12カ月で6万9696円となるため、実質1年間無料となる計算だ。

「そもそも楽天モバイルを選択するユーザは『安さ』を重視しており、自ずと楽天モバイルのARPUは他キャリアと比較して低くなる。そのため楽天モバイルはARPUの底上げを図ろうとしているが、今回の『最強家族プログラム』は逆にARPUの低下につながる。(先月)14日の会見でその点について質問を受けた楽天Gの三木谷浩史会長は『必ずしもARPU低下にはつながらないと思っている』と、暗にARPUの低下の可能性があることを認める発言をしている。楽天モバイルとしてはARPUを引き上げたい一方、ECの楽天市場や金融をはじめとする楽天の各種サービスとの相乗効果を高めるにも、また基地局設置などに投下した設備投資の効果を高めるためにも、大幅に契約者を増やさなければならないため、さらにお値打ち感のあるプランを打ち出さざるを得ないという板挟みの状況になっている」(大手キャリア関係者/2月16日付当サイト記事より)

(文=Business Journal編集部)

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