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「売上の3割を楽天市場に取られる」出店料値上げに反発、携帯事業の赤字補填

文=Business Journal編集部、協力=幅貴道/ネットショップ総研
「売上の3割を楽天市場に取られる」出店料値上げに反発、携帯事業の赤字補填の画像1
サイト「楽天市場」より

 ECサイト「楽天市場」が6月から出店料を一気に約3割値上げすると発表し、EC業界内で驚きが広まっている。楽天グループ(G)は「楽天モバイル」の携帯電話事業の大幅な赤字に伴い、2023年12月期連結決算(国際会計基準)では5年連続の最終赤字となり、資金繰りへの懸念も広まるなか、携帯事業の赤字穴埋めのための値上げだとして反発も生じている。今回の値上げの背景には何があるのか。専門家の見解も交えて追ってみたい。

 ユーザID数は1億以上、国内流通総額5兆円を超える楽天市場。国内ネット通販市場でシェア3割を占める巨大な楽天市場に出店することは、中小小売事業者のみならず大手メーカーなどにとっても重要な販売手段の一つとなる。

 楽天市場への出店にかかるコストは、どうなっているのか。その手数料は、大きく分けて定額制の「出店料」、売上高に応じて変動する「システム利用料」、楽天ペイ利用料などの「その他」で構成される。

 現行の定額制の「出店料」は主に以下の3つのプラン(以下、金額は税別)。

 ・がんばれ!プラン(月額当たり1万9500円)
  登録可能商品数:5000商品まで
  画像容量:500MBまで

 ・スタンダードプラン(月額当たり5万円)
  登録可能商品数:2万商品まで
  画像容量:5GBまで

 ・メガショッププラン(月額当たり10万円)
  登録可能商品数:無制限
  画像容量:無制限

「システム利用料」は

 ・課金対象額(月間売上高のうちの通常販売額)×適用料率

で算出される。適用料率は、例えばスタンダードプランではPC経由の販売は、月の一件当たりの販売額(平均バスケット単価)が2.5~3.5万円で、かつ月間販売額が100万円以下の場合は4.0%。モバイル経由の販売は同じ条件だと4.5%となる。公式サイトの試算例によれば、スタンダードプラン(平均バスケット単価3万円の場合)でパソコン経由、モバイル経由の月間販売額が各250万円で計500万円の場合、システム利用料は17万4500円となり、出店料と合計で22万4500円となる。

 これに加え、以下費用が追加で発生する。

・楽天ポイント原資:楽天会員経由売上高の1%
・モールにおける取引の安全性・利便性向上のためのシステム利用料:月間売上高の0.1%
・楽天スーパーアフィリエイト利用料
 アフィリエイトパートナーへの成功報酬
   +
 システム利用料(アフィリエイトパートナーへのパートナー報酬の15%~30%)
・楽天ペイ(楽天市場決済)利用料
 月間決済高の2.5~3.5%

 楽天ポイント原資とは、楽天会員に商品購入時に付与される楽天ポイントの原資を店舗側が通常1.0%負担するというもの。実は楽天ポイントの一部は出店者が負担させられているという事実はあまり知られていない。このほか、楽天市場のパートナーサイトに掲載されたリンクを経由した売上については、購入された商品のジャンルに応じて、パートナーに成果報酬を支払うことになる。例えば楽天スーパーアフィリエイト経由の売上については、2.0~4.0%のアフィリエイト料率をかけたシステム利用料を支払う。また、楽天ペイ利用料として月間決済高の2.5~3.5%も徴収される。

出店者にとって納得感は低い

 出店者にとって、現在でも手数料の負担は重いと、ECサイトでの出品代行やコンサルティングなどを行う株式会社ネットショップ総研の幅貴道氏はいう。

「大まかにいえば、楽天市場での月間売上の15%ほどが手数料として持っていかれるというイメージです。これに加え、楽天市場ではリスティング広告などを出さないと商品が売れないので、その費用が月10万円くらいかかる。さらに『お買い物マラソン』や『楽天スーパーセール』などのキャンペーンではバナー広告を出さないと売れないので、この費用が20万円くらいかかる。トータルすると出店者は売上の30%くらいを楽天市場に持っていかれる月もあり、収支トントンかギリギリ利益が出るくらいというケースはざらにあります。

 もっとも、自社でECサイトを立ち上げて運営する場合、GMOメイクショップなどを使ってサイトを構築し、サイトと広告を運用していかなければならず、それなりのノウハウが必要。その手間やコストを考慮すると、楽天市場に出店するコストは『まあまあ妥当なレベル』ともいえます。また、他のECサイトと比べて新規出店のハードルが低いのも事実で、申し込みからオープンに至るまで専門の担当者が丁寧にサポートしてくれますし、そもそも国内ECでは楽天市場が一強なので、結局は楽天市場を選んでしまうという面はあります」

 今回の価格改定で楽天市場の出店料は、「がんばれ!プラン」が月額1万9500円から2万5000円に、「スタンダードプラン」が月額5万円から6万5000円に、「メガショッププラン」が月額10万円から13万円に値上がり。約3割の値上がりとなる。値上げの理由として、物価や人件費、電気代、システム管理費などの高騰や、さらなる店舗運営支援やユーザビリティの強化、具体的には「顧客体験向上に向けたAIの取り組み」「店舗様の運営効率化に向けたAIの取り組み」などをあげている。

「今回の値上げは、出店者にとってインパクトが大きいといっていいでしょう。例えばスタンダードプランでは年18万円の値上がりとなり、バナー広告1回分のお金が消えることになり、広告を出す回数を減らさざるを得ないという出店者も出てくるでしょう。  

 楽天モバイル事業の赤字の穴埋めという印象が強く、納得感は低い。出店者支援ツールのAI機能を充実するといっても、現状の機能の使い勝手の悪さを考えると、ここから飛躍的に改善されるとは想像しにくい。また、商品説明文の自動生成と商品画像の複数パターン生成ができるようになるというのも、出店者からすれば不必要な機能なので、そうした余計な機能を実装するために出店料が値上がりするというのは、納得感がありません。

 もっとも、物価上昇を受け国内のネット関連サービスが軒並み値上げされており、もし楽天モバイルの赤字という材料がなければ、楽天市場の値上げというニュースはそれほど話題にならなかったかもしれず、タイミングが悪いです」(幅氏)

出店者側も人件費や物価高騰で苦しむなかでの値上げ

 楽天グループは23年12月期連結決算で最終損益3394億円の赤字を計上し、5年連続の最終赤字に沈んだ。業績低迷の原因となっているのが「楽天モバイル」の携帯電話事業であり、同事業の営業損益は3375億円の赤字。携帯電話のサービス開始から4年が経過したが、同事業がEC事業と金融事業の利益を食いつぶす構図が続くなか、24~25年には計8000億円に上る社債の償還を迎えるため、同社の経営の先行きを不安視する見方も広まっている。

 そのため、今回の値上げは携帯事業の赤字穴埋めだという見方は強い。前出・幅氏はいう。

「楽天Gは楽天モバイルをやる理由として『楽天経済圏を強くするため』と言っていますが、たとえば競合する『ヤフーショッピング』は利用者数も出店者数も低迷しており、楽天市場との差は歴然です。『~経済圏』というくくりでは楽天Gは現状でも圧倒的に強い存在なので、もっと横綱相撲的な戦略を取ってもよいのではないかとも感じます」

 EC会社関係者はいう。

「楽天市場に出店する事業者は5万以上あり、仮に1店舗当たり平均で月額2万円の値上げと仮定すると、楽天Gにすればそれだけで年間100億円以上の収入増となる。楽天G全体として赤字縮小の意図があるのは明らかだが、EC事業は黒字で儲かっており、今急いで大幅な値上げを行う必然性は乏しく、携帯事業の赤字穴埋めのために楽天市場の出店者に対して値上げを行うのはおかしな話であり、筋違い。楽天市場には小規模な出店者も多く、どこも人件費や物価高騰で苦しむなかでの値上げということもあり、出店者にとっては結構衝撃的な話。反発が予想される」(2月27日付当サイト記事より)

(文=Business Journal編集部、協力=幅貴道/ネットショップ総研)

幅貴道/ネットショップ総研

幅貴道/ネットショップ総研

学生時代から、雑貨、玩具、アパレル、食品などのECショップの配送から撮影、 サイト制作&運用まで担当。2015年にネットショップ総研に入社。自社ショップからモールまでのコンサルや デザイン、コーディング、撮影、ECに関わることを全て担当。2021年2月、楽天ショップオブザマンス獲得(食品カテゴリ)。
ネットショップ総研の公式サイト

Twitter:@netshopsoken

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