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深夜3時まで残業も年収3千万円も普通…外資系投資銀行の想像絶する労働実態

文=Business Journal編集部
深夜3時まで残業も年収3千万円も普通…外資系投資銀行の想像絶する労働実態の画像1
「gettyimages」より

 長時間労働や激務、厳しいノルマを達成しなければすぐに解雇されることなどで知られる外資系証券会社(外資系投資銀行)。意外にも、日本企業でみられるような上司からの“あからさまパワハラ”や“激詰め”などは少ないながら、逆にそれがツラいというエピソードが一部SNS上で話題になっているようだ。その労働実態、環境とはどのようなものなのか。現役社員・元社員の見解を交えて追ってみたい。

 ゴールドマン・サックス証券、JPモルガン証券、BofA証券(バンク・オブ・アメリカ)、UBS証券、シティグループ証券、クレディ・スイス証券、BNPパリバ証券、ドイツ証券など、日本に拠点を置く大手の外資系投資銀行は少なくない。その事業は大きく2つに分けられる。ひとつは、国内外の株式やデリバティブ、債券、不動産、為替商品への投資・運用などを行うマーケット部門。もうひとつは、顧客企業のM&Aアドバイザリー業務、社債発行などの資金調達を行う投資銀行部門。

 外資系投資銀行といえば、激務ながら高額な報酬を得られるというイメージが強いが、少し前に現役の外銀社員がX(旧Twitter)上に、入社1日目の様子を投稿し話題となっていた。朝に出社して以降、作成した資料に対し上司から再三にわたり冷静かつロジカルなダメ出しを受け続け、夜23時を過ぎても資料の修正を指示され、仕事が終わらないまま帰宅して翌朝8時台に出社すると、上司が朝4時半に修正してくれていたという。この投稿に対し、

<これの怖いところは先輩のハラスメントに該当する態度がないところ。正論でハラスメントなくドンドン詰められるから、ハラスメントされるよりキツイ>

<初日は飲み会から入る商社マンとは全く違う文化>

<投資銀行は特に寿命と引き換えに給料をいただいてますからね。異常な体力と精神力の持ち主が多いです>

などと、さまざまな反応が寄せられている。

日本企業と大きく違う採用活動

 極めて高いパフォーマンスを求められる外資系投資銀行だけあり、その門戸は狭い(以下、「 」の発言主は、特に記載がないものは外資系投資銀行の現役社員・元社員)。

「会社にもよるが、基本的には東京大学や京都大学などの国立大学卒、私立大学だと早稲田大学卒と慶應義塾大学卒が事実上の最低ラインになっている。地方の大学でも旧帝大卒であれば十分に採用の候補とみなされ、東大・京大クラスであれば文学部などでも採用対象となる。また、理系出身者は会社側の採用意欲が高く、文系も学生時代に経済・金融に関するさまざまな懸賞論文で上位獲得の実績があったりすると評価される」

 日本企業の新卒採用では人事部が主体となって一括で採用し、各部署に配属するというかたちが一般的だが、外資系投資銀行は大きく異なるようだ。

「私が入社した頃は部署ごとでの採用となっていて、その部署の全メンバーと面接し、全員から『仲間として受け入れてよい』と評価されるかどうかで合否が決まった。なので例えばディーリング部門に応募したけど投資銀行部門に配属されるということは基本的にはない。部署ごとの採用というのは概ね他の米系外銀でも同じだが、MD(マネージングディレクター=部長相当職)の一存で決まる会社もある」

「私は大学時代は金融・経済とはまったく畑違いの勉強をしていたが、マーケット部門の営業に採用された。部門のメンバー全員と面談するということはなく、当時のMDの判断で採用された。同じ部門でもトレーダーや(金融商品を設計する)ストラクチャリングの担当者として採用されるには、理系出身であったり、専門知識や数学オリンピック出場歴などが必要になってくるので、私のようなバックグラウンドの人間は採用されない。ちなみに社内はメールも同僚との会話もすべて英語なので、英語ができないのは論外」

 世間の想像どおり外資系金融はやはり激務なのか。

「私が扱っていた商品の営業部は朝6時30分には全員出社していた。私は営業担当だったが外回りというのは一切なく、常にどこかの国のマーケットが動いているので、デスクに備えられた4~5枚ほどのディスプレイを常に確認しながら顧客や社内のディーラーなどとやりとりしていた。朝が早い分、日付が変わる時間帯までオフィスに残っているということは少なかったが、レポート作成など残った業務をこなすために土日も出社していた。

 一方、投資銀行部門は9時頃出社して深夜の2~3時頃まで働くというのが普通。なので肉体的な面でいえば投資銀行部門のほうが激務といえるのかもしれないが、マーケット部門は早朝から夜まで何時間もマーケットの動きを注視し続け、ボタン一つ押し間違えただけで多額の損失を生んで己のクビが飛ぶこともあるので、メンタル的な疲労はハンパない。また、チームプレイゆえにチームでミス発生を防ぎやすい投資銀行部門と比べて、マーケット部門は個人の裁量による仕事が多く、その分、個人が背負う責任も大きいので、これが激務ではないとはいえないだろう」

「同じマーケット部門でも勤務時間は人によってさまざま。私は自己勘定取引のディーラーで“儲けさえすればよかった”ので、朝9時とか日によっては昼前に出社して夜10時くらいに退社する感じだった。ウェリントン市場(ニュージーランド)が開くのに合わせて朝4時に出社して昼過ぎに退社するディーラーもいれば、朝6時に出社して18時頃に退社するディーラーもいるなど、担当する業務によって違ってくる。一方、投資銀行部門の人間は毎朝9時に出社して深夜の2時、3時まで働くという感じで、労働時間という点では投資銀行部門のほうが長い」

「米国系の会社だからということもあるのかもしれないが、意外にプライベートを優先した働き方ができる。家族の誕生日や子供の保育園のお迎えという理由で17時過ぎに退社するというケースも普通で、1週間くらいの休暇を年に2回取得できるなど、休みをとりやすい文化もある」

解雇が言い渡され即退出

 どの外資系投資銀行も解雇の面では社員にとってはシビアなようだ。

「一つの部署は各国の拠点にまたがっており、個人のパフォーマンスは東京だけでなくニューヨークやロンドンにいる複数のメンバーから評価される。そこで数字的な実績も加味されつつ『彼にはもう仕事を任せられない』と評価されれば解雇となる。解雇が言い渡されると、すぐに段ボールに私物を入れてオフィスを出なければならない。それすらも許されずに即退出を命令されて、私物は後日、自宅へ郵送されるケースもある」

「毎年、全社員のうちパフォーマンスの低い下位5~10%の人は自動的にクビになるので、クビは日常的な風景の一つとなっており、誰も驚きもしないし珍しいものではない」

「まず米国本社が『今期は世界でいくら売上・利益をあげる』と決め、それが各国法人→部署→個人に振り分けられる。業務にもよるが一人当たりの予算(目標数値)は数億円レベルになることはザラで、その期に数字ができていないと自分でもわかるし、上司から『あと半年でこの数字ができなければクビ』と明確に言われることもあるので、クビになるときはある程度、覚悟ができている」

「たとえばアベノミクスの頃は債券市場がまったく動かず、金融機関の間ではトレーディング部門を縮小する動きがみられたが、外資系の場合は人員を他部署へ異動するといったかたちではなく、当該部門の人員解雇という流れになるので、国の政策という外的要因によってクビになるというケースもある」

「なんで、こんな基本的なこと知らないの?」

 では、そうした厳しい環境において、上司による、あからさまなパワハラ行為や“激詰め”といった法的に問題になりそうな行為というのは、コンプライアンスが重視される外資では少ないのか。

「ないわけではない。ボスも高いパフォーマンスをあげている優秀な部下には残ってほしいから優しくする一方、できない部下には冷たく接したり無視したりすることはある。ただ、上司は毎年、部下からも査定されるので、あからさまなパワハラみたいなことはほとんどみられない」

「上司から『なんで、こんな基本的なこと知らないの?』『なんのために席に座ってるの?』などとメチャクチャ詰められることは、しょっちゅうあった。入社1年目でも高額な給料をもらっている以上は、知らないということは許されないという空気がある。なので上司の言うことは正論なので反論しようがなく、怒られても納得するしかない。また、ちょっとミスしただけで同じ部署の外国人のメンバーから英語でキレられたり、八つ当たりされたりというのも日常茶飯事だった」

外銀に勤める意外なメリット

 気になるのは高額といわれる報酬だ。

「外銀の一番の魅力は給料。今だと1年目でも1000万円を超えて、7~8年いれば普通に2000万円は超えてくる」

「2000~3000万円というのは珍しくなく、1億円を超える人もいる」

「投資銀行部門だと1年目は1000万円くらいで、4~5年いると1000万円台後半を超える。深夜まで仕事していると帰宅のタクシー代や夕食代が支給される会社もあり、激務で遊ぶ時間もないので、“なんとか5年は生き残って、その間はお金を使わず貯める”と決めて起業資金や投資の元手をがっつり貯めてから辞めて、自分の道に進むというのが賢い」

 外銀に勤めるメリットは報酬だけではないという。

「新卒で外銀に入って、60歳までそこにずっといるという人は、ほぼいない。数年で転職していくのが普通だが、外銀に数年いたという経歴は高く評価される傾向があり、転職で困ることがないというのは意外なメリットといえる」

(文=Business Journal編集部)

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