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ロシア発の「米国6分裂論」が現実味…バイデン政権下で“21世紀の南北戦争”に突入の危機

文=宮崎正弘/評論家、ジャーナリスト
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ジョー・バイデン前副大統領(「gettyimages」より)

 目下のアメリカは完全に分裂状態。「一国二国民」だ。

 熾烈極まりない大統領選挙が終わって、アメリカの分裂がリアルな現実であることを我々は日々目撃している。世界一の軍事大国でもあるアメリカの統一を修復不能な地点にまで引き裂いている。今後、ジョー・バイデン政権の4年間で問題解決に至る展望はなく、いや、もっと苛烈な衝突が繰り返されるだろう。

 この危機的な現実を前に論壇に浮上してきたのは、「アメリカ6分裂」という仮説である。発祥はロシアのアカデミーだ。

 もう二十数年前だろうか。筆者は「中国は16に分裂する」と予測して『中国大分裂』(文藝春秋ネスコ)という単行本を上梓した。その後、台湾の李登輝総統(当時)らは「中国は7つに分裂するのが適切だ」と言い出され、この李登輝発言に中国は不快感を覚えたのか、香港の雑誌「亜州週刊」が李登輝総統非難とともに「分裂論に同調する日本人たち」として、中嶋嶺雄、長谷川慶太郎、そして筆者の名前を挙げた。

 旧ソ連は崩壊後、15に分裂した。ユーゴスラビアは東西冷戦崩壊で共産主義独裁政権が消え、7つに分裂した。イラクは3つに分裂状態だが、まだまとまっている。スペインのバスク地方をはじめ、他にも多数の国で分裂運動が起きている。カナダからニューカレドニアまで分離独立運動がある。

 アメリカは南北戦争で60万人あまりの犠牲を出し、ようやく統一され、星条旗の下に「アメリカ人」というアイデンティティでまとまってきたはずだった。

 しかし、ベトナム戦争以後の価値紊乱と、キリスト教の伝統的価値観を冒涜するようなLGBTQが象徴する左翼運動が蔓延した。歴史の英雄である銅像を次々と破壊し、差別とかの言いがかりをつけた暴力事件が頻発、そうした破壊的思想を蛇蝎のように嫌う南部基軸の敬虔なキリスト教、エヴァンジェリカルらは絶望と希望の境を行き来しながらも、伝統を守る運動を組織した。

 4年前にドナルド・トランプを支持し、支えたのはこの伝統的な人々だった。また、選挙結果を見て不正投票があったと騒いでバイデンの勝利を認めないのも、この人たちである。アメリカは、誰が見ても鮮明な分裂状態に陥った。

 いずれ、暴動からテロ戦争、「21世紀の南北戦争」が始まるのでは、との不安が広がった。トランプvs.バイデンの大統領選挙の対立エネルギー、あのマグマのような激突ぶりから、分裂の可能性が高まった。

 戦争に勝つためにあらゆる手法が活用され、SNSの検閲、フェイクニュースの氾濫、不正投票。左翼はどんな卑劣な手段でも、勝つために行使するのだ。

 北東部から東海岸は極左的社会主義がはびこり、ラストベルトの旧工業地帯には資本主義の絶望が聞かれ、南部から中西部は敬虔なキリスト教地盤に黒人とヒスパニック(スペイン語を話すラテンアメリカからの移民)が入り込んで混沌としており、西海岸はチカノ(メキシコからの移民)に加えてアジア系が増殖したため、正真正銘、左翼の牙城となった。

ロシアの学者が主張する「米国6分裂論」の中身

 ロシア・アカデミーの錚々たる学者、それも人口学者、社会学者、歴史学者らは研究課題に「アメリカの分裂」を取り上げている。こうした傾向を筆者は数年前にも紹介したが、ロシア・アカデミーのれっきとした学者が書いた論文だった。

 リーマン・ショック直後にも、ロシア外務省学士院学部長のパナリン教授が、アメリカが6カ国に分裂すると主張した。

 その内訳は、以下の通りである。

1.カリフォルニア州を基軸とする西海岸は「カリフォルニア共和国」となり、中国とべったりの外交を展開する

2.テキサス地域(南部)は「テキサス共和国」となり、メキシコとの関係が濃厚になる

3.北東沿岸は「アトランティック・アメリカ共和国」(北東部から東海岸の大西洋沿岸部)となって、EUに加盟する

4.中西部からラストベルトは「中北部アメリカ共和国」となり、カナダとの結び付きを強めるだろう

5.アラスカはロシアに含まれる

6.ハワイは中国、もしくは日本の保護国となる

 以前は見向きのされなかった珍論だが、トランプvs.バイデンの熾烈な選挙戦はまるで南北戦争の再来であり、BLM(黒人の命が大事)の過激派は武装して警官隊と撃ち合うほどの暴力レベルとなった。

 香港問題に介入したアメリカは「一国二制度を守れ」と主張していた。ところが、アメリカ自身が「一国二国民」となった。それゆえ、ロシア学者の分裂論が俄然、注目を集めるようになったのだ。当時、アメリカ分裂論を「ウォール・ストリート・ジャーナル」が紹介し、これを皮切りにCNNも番組をつくったことがあった。

 居眠りジョーは口では団結、融和を言っているが、口パクだけだったバラク・オバマ政権のナンバー2だっただけに、欺瞞を愛する政治家に違いないだろう。

分裂ならNATOの米国版が必要に

 さて、この分裂論はこれから本格化するだろうが、万が一、分裂した場合、武器を伴う戦争ではなく住民投票に従うことになる。すると、争点は分裂した際の元首の選び方から、EU本部のようにシンボルとしてのEU大統領のような存在が必要となるのか、ならないのか。最大の問題は外交権と軍隊の再編となり、NATO(北大西洋条約機構)のアメリカ版が必要となるだろう。

 パスポート、中央政府の債務の分担、それぞれの通貨、銀行制度、税務署を含めた役所の改編、そして、それぞれの憲法をいかにするかという諸点に移る。意外や、旧ソ連の分裂過程とEUの再統合のあり方が参考になる。ソ連分割は15の通貨を生んで、独立国は憲法も作り変え、軍隊はロシアを基軸の軍事同盟へ参加する国としない国に分かれた。EUは逆に通貨を統一し、ヒト・モノ・カネの移動を自由とした。

 この議論、現時点では連想にすぎないが、興味が尽きない。

宮崎正弘/評論家、ジャーナリスト

宮崎正弘/評論家、ジャーナリスト

 「日本学生新聞」編集長、雑誌「浪曼」企画室長を経て、貿易会社を経営。1983年、『もうひとつの資源戦争』(講談社)で論壇へ。30年以上に亘る緻密な取材で、日本を代表する中国ウォッチャーであり、海外からも注目されている。『中国分裂 七つの理由』(阪急コミュニケーションズ)、『人民元がドルを駆逐する』(ベストセラーズ)、『中国財閥の正体』(扶桑社)、『本当は中国で何が起きているのか』(徳間書店)など著書多数。数冊は中国語にも訳された。また作家として『拉致』『謀略投機』(共に徳間書店)などの国際ミステリーも執筆。。

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