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赤石晋一郎「ペンは書くほどに磨かれる」

渡部建・謝罪会見、危機管理の視点から見る「3つのNG」…弁護士に頼るリスクとは?

文=赤石晋一郎/ジャーナリスト
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渡部建

 多目的トイレ不倫報道から6カ月あまり。12月3日に謝罪会見を開いたアンジャッシュ・渡部建氏だが、遅すぎた記者会見にはいまだ批判の声があがっている。

 だが芸能人のスキャンダルは多くの企業にとっても決して他人事とはいえない。情報化社会となり不正行為の発覚、諸発言によるネットでの炎上など備えなければいけないリスクは多い。危機管理において何が必要で、何が不必要なのか。そこで当記事では、渡部会見を「危機管理 NGの法則」という視点で掘り下げてみたい。

【謝罪会見、3つのミス】

 あるテレビマンは「あの会見には3つのミステイクがありました」と指摘する。その問題点を以下に列記する。

1)記者会見の仕切りの悪さ

 渡部会見は仕切りが悪いことで記者のイライラがつのり、かつ質問制限もかけられなかったので渡部氏が火だるまになってしまったのはご存じの通り。その背景として語られているのが「渡部氏に人望がないことを本人自身が気づけていなかった」(同前)ことのようだ。謝罪会見では、本来であれば所属事務所である人力舎が彼をガードしなければいけないが、あの会見にはほぼノータッチだった。事務所が主体的にかかわっていれば、もう少しコントロールができたと見られている。

2)復帰ありきの会見だったこと

 渡部会見の主眼が謝罪ではなく、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ)の大みそか特番出演への地ならしだったことは明白だ。

「妻・佐々木希は『ガキ使』出演には反対していたのに、渡部が復帰を強行したといわれています。彼は復帰を焦るあまり、世間の情勢を見ることができていなかったといえるでしょう」(芸能事務所関係者)

 謝罪→復帰という順番を違えてしまったことが、失敗の大きな要因の一つとなったといえるだろう。

3)根回し不足

 スキャンダルによって番組降板となり、渡部氏は各テレビ局やCMクライアントに多大な迷惑をかけていた。こうした場合、常識としてお詫び行脚は必須だとされている。

「問題は渡部が謹慎中にこうしたお詫び行脚を一切していなかったことです。しかも復帰がサプライズという形にせよ『ガキ使』というのも筋違いです。犯罪に手を染めたわけではないので、丁寧に謝罪行脚さえしておけば復帰はタイミングさえ整えばスムーズにできた可能性が高かった」(テレビ局関係者)

「3つのNG」を犯しながら、謝罪記者会見をすれば復帰できると考えたのは見通しが甘かったと評価するしかないだろう。不祥事の記者会見は、本質的に“公開処刑”の場となる。そこで曖昧な回答や“ウソ”を連発すればハチの巣になるのは自明である。結論的に言えば、答えられないことがある段階で記者会見を開くことは愚策としかいえないのである。記者会見ですべてを晒すことで世間ははじめて禊と認めてくれる。そこまでの覚悟がなければ、記者会見はただの炎上場と化してしまう。

 ゆえに「周到な準備」と「タイミング」は重要な要素となるのである。特に渡部会見は所属事務所と各テレビ局への根回しが十分ではなかったことが仇となったといえるだろう。

弁護士に頼るという失敗

 渡部氏は記者会見に臨むにあたり弁護士と想定問答をつくったといわれている。ゆえに「お答えできません」という回答を連発し、さらにバッシングを浴びるという悪循環を招いた。

「謝罪記者会見の本質は“感情”をどうコントロールするかにあります。この人は反省しているんだな、ここまで謝るならもう許してあげてもいいじゃないか、失敗はしたけどその後に筋は通しているな、という気持ちを相手に持たせる必要があるのです。一方で弁護士は依頼者の権利を法的に守るのが仕事です。だが、この仕事は法廷では有用ですが、感情論を鎮められるものではないのです。例えば『●●については黙秘します』は法的には認められるけど、それで相手の感情が収まることはないですよね? つまり渡部会見は『自分の権利を守りたい』がために開かれているということが弁護士に相談したことで滲み出てしまっているのです。ゆえにバッシングが加速した」(週刊誌記者)

 一般的にいわれているのは、弁護士とメディアの相性は“最悪”だということである。弁護士が担うのは民法、刑法的な判断であり、警察などの当局相手、企業相手では有効であるが、メディアが問う「感情論」に対しては無力なのである。芸能人も企業も、メディア対策というのは本質的に「感情論のコントロール」であるということを肝に銘じなければならないといえよう。

謝罪記者会見は必要か

 前述したように謝罪記者会見は得てして公開処刑の場となりやすい。一発で騒動を収束させたいと考え謝罪記者会見は開かれるが、渡部会見のように“寝た子を起こして”しまい騒動を再炎上させることのほうがむしろ多い。

渡部会見によって、彼が出演するなら番組スポンサーを降りるという話が出てきており、『ガキ使』映像のお蔵入りはほぼ決定とされています。むしろ会見を開かずにサプライズ出演したほうが被害は少なかったかもしれません」(芸能関係者)

 近年、謝罪記者会見で成功したといえるのは、同じように不倫報道で謝罪した原田龍二氏の例くらいである。原田氏は「週刊文春」(文藝春秋)記事が発売された直後に謝罪会見を開き、包み隠さずすべてを話して謝罪した。その素早い行動により騒動は収束へと向かったのである。

 一方で失敗と評価すべき会見は数多ある。不倫疑惑についてウソをついてしまったベッキーの釈明会見、日本大学のアメフト部悪質タックル問題の記者会見、闇営業問題をめぐる吉本興業の記者会見等――、記者会見によってかえって炎上を加速させてしまったという事例は多い。

 なぜそうなるのか。実は記者会見は記者にとって必ずしも好ましい取材場所とはいえないからなのだ。多くのメディアが殺到するなかで雰囲気は殺伐とし、目立つためにも厳しい質問を投げかける必要が出てくる。記者会見という場の性質上、じっくり話を聞こうという空気にはならないのである。

「もし謝罪したい有名人や企業がメディアや記者をコントロールしたいなら、個別インタビューを受けるのが最適の方法だと思います。個別インタビューなら記者にとっても”独占取材“と打てるメリットがあるし、被取材者も『発言に責任を持ちたいので、コメント確認させてください』と言いやすい。もちろん被取材者にそれなりの準備は必要ですが、いちばんリスクコントロールできる方法だと僕は思います」(全国紙新聞記者)

 もう一つ謝罪会見のデメリットとして挙げられるのが、映像・写真素材を全メディアに与えてしまうことにある。素材があればメディアはより報道しやすくなるという本質がある。渡部氏のように会見が失敗してしまった場合、ワイドショーやネットでその映像などが繰り返し流されてしまうということは、マイナスイメージの拡大再生産となってしまうのだ。

 渡部会見の問題として浮き彫りになったのは、危機管理として十分なメディア対策ができていなかったということに尽きるだろう。メディアとは得てして「感情論」に支配されやすい性質を持っている。感情論を抑えるためにはスピード感ある対応で鎮火を目指すか、周到な準備を行いメディアを取り込んでいく、といった対応が求められることになる。

(文=赤石晋一郎/ジャーナリスト)

赤石晋一郎/ジャーナリスト

赤石晋一郎/ジャーナリスト

 南アフリカ・ヨハネスブルグ出身。講談社「FRIDAY」、文藝春秋「週刊文春」記者を経て、ジャーナリストとして独立。
 日韓関係、人物ルポ、政治・事件など幅広い分野の記事執筆を行う。著書に「韓国人韓国を叱る 日韓歴史問題の新証言者たち」(小学館新書)、「完落ち 警視庁捜査一課『取調室』秘録」(文藝春秋)など。スクープの裏側を明かす「元文春記者チャンネル」YouTubeにて配信中

Note:赤石晋一郎

Twitter:@red0101a

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