今、ビットコインが急騰しています。2017年末には「1ビットコイン(BTC)=220万円」もの値をつけたことで話題になりましたが、その後、相場の急落や別の仮想通貨の大規模な流出事件が起きたことで、すっかり「過去のもの」となっている方も多いでしょう。
そのビットコインが2月に一時「1BTC=600万円」をつけ、本稿執筆時点で520万円前後を推移しています。今回は、ここまでビットコインが値上がりした要因と今後の見通しをお伝えします。
わずか8カ月で資産が6倍に
仮想通貨(暗号資産)は、電子データとしてやりとりされる通貨。硬貨や紙幣などはなく、日本円や米ドルのように、国が発行する通貨(法定通貨)でもないのですが、スムーズに送金できるなどの特徴を持っています。
とはいえ現状、日本を含む世界では実用性よりも投資(というより投機)の対象という見方をされています。仮想通貨の筆頭であるビットコインの値段は、2017年12月に「1BTC=220万円」をつけてから下落。2018年12月には「1BTC=35万円」ほどとなったのです。もし220万円のときに買っていたら、1年で資産が6分の1になってしまった計算です。
しかし、2019年に入るとビットコインの価格はじわじわと上昇。2019年6月には100万円の大台を回復しました。そして2020年、コロナショックで短期的に値下がりする場面はあったものの、5月には再び100万円を突破しています。
驚きなのはここからです。2020年11月末に200万円を突破すると、ビットコインの価格は急上昇。2021年2月には、一時「1BTC=600万円」をつけたのです。もし2020年6月時点に100万円で購入していたら、8カ月で資産が6倍になった計算です。もちろん、底値で買って天井で売るのは至難の業ではありますが、急激に値上がりしている様子がわかるでしょう。
ビットコイン/円の値動き(2017年1月~2021年2月25日時点)
ビットコインが値上がりしている5つの要因
ではどうして今、これほどまでにビットコインが値上がりしているのでしょうか。その主な要因を5つ紹介します。
・ビットコインの値上がりの理由1:世界的なコロナ金融緩和
新型コロナウイルス感染症が流行・拡大していることを受けて、各国の景気は悪化しています。景気が悪化すると、各国の中央銀行は金利を引き下げるなどして市中に出回るお金の量を増やす「金融緩和」を行います。とはいえ、実体経済が回復しないなか、お金が増えても余ってしまいます。そのお金がビットコインに流れ、ビットコインが値上がりしたとみられています。
法定通貨と違い、ビットコインは供給される量が決まっていることも値上がりの理由になります。お金の価値が下がることで相対的にビットコインの価値が高まったのです。
・ビットコインの値上がりの理由2:米国の第二次コロナ緩和の期待
ジョー・バイデン大統領が就任した米国は、新型コロナウイルス感染症の感染者が2800万人、死者が50万人を超える苦境にさらされています。コロナ対策はもちろん必要ですが、それによって傷んだ経済を立て直すためにも、さらなる緩和や経済対策などが検討されています。
大規模な経済対策が改めて実施されれば、投資マネーがビットコインに流れることも十分に考えられます。それを見越したビットコインの買いが、ビットコインの価格を上昇させています。
・ビットコインの値上がりの理由3:ペイパルの仮想通貨参入
米国の決済大手ペイパル(PayPal)が、仮想通貨の売買サービスをスタートすると発表したのは2020年10月21日のことでした。世界3.5億ユーザーを抱えるペイパルにおいて仮想通貨の売買ができるようになったことで売買が活発になり、ビットコインの価格高騰につながったと考えられます。
ペイパルでは今後、世界中の加盟店にて仮想通貨で決済できるサービスも始まる予定。実現すれば、ビットコインの価格はさらに上昇するかもしれません。
・ビットコインの値上がりの理由4:テスラのビットコイン15億ドル購入、ヘッジファンドなど機関投資家の流入
2017年のビットコインの値上がりは、日本を含む世界の個人投資家によるものだといわれています。それに対して2020年からのビットコインの値上がりは、大規模な売買を行う米国の上場企業やヘッジファンドといった機関投資家によるものです。機関投資家たちは、ビットコインが含まれているポートフォリオを相次いで発表しています。
なかでもインパクトが大きいのが、米電気自動車大手のテスラです。テスラは2021年2月、ビットコインに15億ドルを投資したことを公表しました。また、今後も状況に応じて仮想通貨を保有するとしています。このニュースが報じられたあと、ビットコインの価格は急騰し、一時は史上最高値を更新しました。
・ビットコインの値上がりの理由5:ビットコインETFの登場
カナダで史上初のビットコインETF(上場投資信託)が上場しました。「パーパス・ビットコインETF」というこのETFは、ビットコインに直接投資するETFです。ビットコインETFを利用すれば、投資家はわざわざビットコインの現物を買わなくても、気軽にビットコインの値動きを生かした投資ができます。こうして投資の裾野が広がることで、ビットコインの価格も上昇するとみられます。
カナダでは今後、第2、第3のビットコインETFが上場する予定とのこと。この流れが米国や日本などに広がってくることも考えられます。
今後のビットコイン価格の見通し
このように、ビットコインの値上がりは、さまざまな理由が重なって起こったものと考えられます。では、これからもさらに一層上昇していくかというと、そうとは言い切れないと筆者は考えています。
確かに、上で紹介したとおり、大口の機関投資家がビットコインに投資をしていることは価格の上昇要因になります。機関投資家はビットコインを「デジタルゴールド」、つまり金と同じようなものととらえて、分散投資の一環としてポートフォリオの一部に加えています。この流れが続く以上、今後もビットコインは値上がりしていく可能性が高いでしょう。
しかし、今はビットコインだけでなく、株や原油、金などさまざまな資産が値上がりしており、バブルに近い様相を呈しています。また、分散投資といっても、ビットコインなど仮想通貨は株との連動性が高く、分散効果は低いといえます。
何がきっかけになるかはわかりませんが、どれかが値下がりに転じると、ビットコインをはじめとする仮想通貨も連れ立って値下がりする恐れもあるでしょう。
また、新型コロナウイルス感染症が早く収束してほしいのはもちろんのことですが、コロナ緩和の発端となった「新型コロナウイルス」の終息も、そのひとつになりうるでしょう。
ビットコインは非常にリスクの高いものだということも、忘れてはいけません。実際、2021年2月22日に「1BTC=600万円」をつけたあとに急落し、翌23日には一時「1BTC=480万円台」となる展開もありました。その後、多少値を戻していますが、それでも投資するにあたっては、わずか1日で20%下落するリスクがあることを肝に銘じておくべきでしょう。
(文=頼藤太希/マネーコンサルタント)