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史実はいかに?『青天を衝け』姑の篤姫(上白石萌音)が嫁の和宮(深川麻衣)より若いワケ

文=菊地浩之
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『青天を衝け』は嘘だらけ?嫁・和宮(深川麻衣)より姑・篤姫(上白石萌音)が7歳若い怪の画像1
13代将軍・徳川家定の正室、天璋院を演じる上白石萌音は23歳。“嫁”である「悲劇の皇女」和宮は天璋院の10歳年下のはずなのだが、和宮を演じる元乃木坂46の深川麻衣は現在30歳と、逆転現象が……。(画像はNHK公式サイトより)

嫁・皇女和宮(深川麻衣)よりも姑(上白石萌音)のほうが7歳若い……という怪

 NHK大河ドラマ『青天を衝け』のドラマガイドを見ていて、「おやっ?」と思ったことがある。天璋院篤君を上白石萌音さん、その義理の嫁にあたる皇女和宮を深川麻衣さんが演じる。その写真を見比べてみると、どう見ても深川さんのほうが上白石さんより年長に見えるのだ。

 調べてみると、天璋院は天保7(1836)年生まれで和宮は弘化3(1846)年生まれ。一方、上白石さんは1998年生まれで深川さんは1991年生まれ。歴史上では天璋院=上白石さんのほうが10歳年上なのだが、演じる女優さんでは和宮=深川さんのほうが7歳年上なのだ(しかも、上白石さんは童顔だ)。

 共演シーンのない配役ならよかったのだが――ないわけがない。

 おそらく7歳年下の上白石さんが姑づらをしたり、嫁の深川さんに辛く当たったりするのだろう。上白石さんが天璋院と同じ鹿児島出身だから抜擢された側面もあるとは思うのだが、(年齢という意味で)ちょっと荷が重いかもしれない。

 そんな配役と俳優・女優の年齢差が違っている例がないのか、おせっかいにも調べてみた。表のC列の年齢差が大きい人物が、配役(作中の登場人物)と渋沢栄一との年齢差と、演じている俳優・女優と吉沢亮さんとの年齢差が乖離している事例だ。

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配役と俳優・女優の年齢差をまとめてみた。結果、年齢差の乖離が最も大きいのが、高島秋帆を演じる玉木宏。本来、秋帆と栄一は42歳差だが、玉木と吉沢は14歳しか違わない。

 どういう計算かというと――ちょっと面倒で申し訳ないので、あまり興味のない方はこの段落をすっ飛ばしてほしいのだが――まず、配役の生年を調べて昇順に並べ、渋沢栄一との年齢差を計算した(A列)。次に、その配役を演じている俳優・女優の生年を調べ、渋沢栄一演じる吉沢亮さんとの年齢差を計算した(B列)。さらに、配役と渋沢栄一との年齢差と、俳優・女優と吉沢さんとの年齢差とを比較した(C列)。

 年齢差の乖離が最も大きいのが、第1話に早くも登場した高島秋帆(しゅうはん/演:玉木宏)だ。

 秋帆は徳川斉昭(演:竹中直人)よりも年長。栄一とは42歳も離れているのだが、玉木さんと吉沢さんは14歳しか違わない。でも、栄一の幼年期を演じる小林優仁くん(2011年生まれ)と玉木さんが31歳違うから、まぁいいか。

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高島秋帆を演じる玉木宏は41歳。竹中直人演じる徳川斉昭より年長者にはとても見えない。(画像は大河ドラマ『青天を衝け』公式サイトより)
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徳川慶喜は渋沢栄一と3歳差のはずだが、慶喜を演じる草なぎ剛と、渋沢栄一を演じる吉沢亮の年齢差は20歳。難しい問題だ……。写真は1866(慶応2)年頃に撮影されたという慶喜(Wikipediaより)。

徳川慶喜と渋沢栄一は3歳しか離れていなかったのに、『晴天を衝け』では草なぎ剛は吉沢亮の20歳も上!

 次いで年齢差の乖離が大きいのが、徳川慶喜(よしのぶ/演:草なぎ剛)だ。慶喜と栄一は3歳しか離れていないのだが、草なぎさんと吉沢さんは20歳も違う。

 大河ドラマでは親子ほども違う年齢で、慶喜の重厚さや威厳が実感できるのだが、実際は3歳しか離れていない(慶喜は陰暦の9月、栄一は2月生まれだから、より正確には2歳半くらいしか違わない)。それくらいの年齢差であれば、栄一のほうが年上だと見誤る人がいてもおかしくないが、どう考えても吉沢さんは草なぎさんより年上には見えない。

 慶喜を演じる草なぎさんが実際の慶喜の年齢よりも高齢過ぎるので、周囲の人物と逆転してしまうケースも出てくる。

 慶喜の正室・美賀君は、慶喜より2歳年上の姉さん女房なのだが、演じる川栄李奈さんは草なぎさんより21歳年下だ。また、慶喜の養祖母・徳信院は、慶喜より7歳年上なのだが、演じる美村里江さんは草なぎさんより10歳年下だ。

 慶喜は水戸徳川家から一橋徳川家の養子になるのだが、その先々代にあたる徳川慶寿(よしひさ)の未亡人が徳信院である。

 養子にいったら若い未亡人がいた。慶喜10歳。徳信院17歳(満年齢です)。

 第二次性徴を迎える頃の健康な男子にそんなお姉さんが突然できたら、そりゃあ舞い上がっちゃうよね。お姉さんとしても、(一橋徳川家を守り立てるのに)頼りになるのはこの青年しかいないとなれば、期待も膨らむ。実際、慶喜と徳信院は姉弟のように仲がよかったという。

 8年後、慶喜は妻をもらった。慶喜18歳。徳信院25歳。妻の美賀君20歳。美賀君は仲睦まじいふたりの関係を「男女の仲」と怪しんで嫉妬に狂い、自殺すら考えたという。

 しかし、俳優・女優の年齢でいえば、慶喜47歳。徳信院37歳。美賀君26歳(2021年の満年齢)。それを演じなきゃいけない役者さんって大変ですね。

田辺誠一演じる尾高惇忠は、渋沢栄一の“人生の師”であるがゆえ、実際の年齢差よりも差を“誇張”された配役となったか

 栄一の周辺で年齢差が激しいのは、平岡円四郎(演:堤真一)と尾高惇忠(演:田辺誠一)だ。円四郎は栄一より18歳年上だが、吉沢さんと堤さんは30歳離れている。同様に惇忠は栄一より10歳年上だが、吉沢さんと田辺さんは25歳離れている。円四郎・惇忠と栄一は年齢的に「年の離れたお兄さん――くらいかな」といった関係なのだが、吉沢さんと堤さん・田辺さんの年齢差は親子くらい離れている。

 円四郎・惇忠の共通点は、ともに渋沢栄一の人生に大きな影響を与える「師」のような人物であることだ。それを演じる俳優の年齢差は、そのことを強調する意味合いが込められているのだろう。

 その結果、惇忠と13歳違いの妹・千代(演:橋本愛)が田辺さんと27歳離れてしまっていたり、惇忠の17歳違いの弟・平九郎(演:岡田健史)が田辺さんとは30歳離れてしまっているけれども、そんなことは二の次なのだ。

同い年の皇女和宮と徳川家茂は、互いのパパの話で盛り上がって仲良くなった、のか?

 そして、冒頭に挙げた天璋院篤君と皇女和宮だ。

 それぞれの夫も含めた関係を示すと、図のようになる。

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カッコでくくられた数字が、実際の役者の年齢差。家定と家茂は本当は親子ほどの年齢差があるはずだが、役者の年齢差はわずか2歳となっている。

 和宮は天璋院の10歳年下なのだが、役者さん上では深川さんのほうが上白石さんより7歳年上と先に述べたが、和宮と徳川家茂が同い年で、演じる深川麻衣さんと磯村勇斗さんも1歳しか違わないので、天璋院と家茂の関係も、本当は家茂のほうが10歳年下なのに、役者の年齢では家茂のほうが6歳年上となってしまっている。

 ちなみに、和宮と家茂は同い年というだけではなく、父親の死後に生誕したという珍しい共通点がある。

和宮「アタシ、お父さんの顔、知らないんだ。アタシが産まれる前に死んじゃったの」
家茂「えっ、ホント!? オレもオレも、まったく同じ。これって運命じゃない?」
和宮「えー、ほんとー? 話し合わせてるんじゃなーい。調子よくなくなーい?」

 なんて会話しながら夫婦仲を深めていった――かもしれない【※個人の想像です】。

 徳川家茂は安政5(1858)年の将軍就任時、満12歳だったが、磯村さんは29歳(2021年の満年齢)。さすがに厳しくないか? 現代日本では小学6年生だぞ。

 そして、徳川家定と家茂の年齢差もビミョーだ。ふたりは22歳も離れているのに、家定を演じる渡辺大知さんと家茂の磯村さんは2歳しか違わない。まぁ、ふたりが直接対面することはほぼないので問題はないのだが。

 これは、家定の一般的なイメージが「幼い。成長していない」だから、若手俳優を起用した結果なのではないか。ところが、家定は松平春嶽(演:要潤)より4歳も年長なのである。知らなかった! だって、春嶽は家定の父・家慶の従兄弟だよ(要潤さんと吉幾三さんが従兄弟というわけではありません。念のため――面倒くさい原稿だなぁ)。

 家定は病弱で、首を振る癖があり、癇癖(かんぺき)持ちで顔が時々引きつったといわれている。しかも、疱瘡(ほうそう)の後遺症でアバタ顔だった。そのためひどく内気で、いざとなると口がきけなくなることもあったらしい。一昔前までは、知能面で問題があったのではとの評価もあったが、近年では将軍としてきわめて真っ当な判断を下していたというふうに評価が好転しつつある。

 家定悪評の根源は、春嶽が家定を評して「凡庸中の尤(もっと)も下等なり」と述懐していたことにあったと思われる。

 かつて、三谷幸喜が映画『清須会議』(2013年)で大泉洋を羽柴秀吉役にキャスティングしたとき、「身長を145cmにしろ」と言ったらしい(大泉さんは178cm)。

 だから、NHKも慶喜役に草なぎさんをキャスティングしたとき、「ぜひ慶喜役をやっていただきたいのですが、あと15歳くらい若くなりませんか」と言うべきだった。まぁ、できない相談ではあるが。

(文=菊地浩之)

菊地浩之

菊地浩之

1963年、北海道札幌市に生まれる。小学6年生の時に「系図マニア」となり、勉強そっちのけで系図に没頭。1982年に國學院大學経済学部に進学、歴史系サークルに入り浸る。1986年に同大同学部を卒業、ソフトウェア会社に入社。2005年、『企業集団の形成と解体』で國學院大學から経済学博士号を授与される。著者に、『日本の15大財閥 現代企業のルーツをひもとく』(平凡社新書、2009年)、『三井・三菱・住友・芙蓉・三和・一勧 日本の六大企業集団』(角川選書、2017年)、『織田家臣団の系図』(角川新書、2019年)、『日本のエリート家系 100家の系図を繋げてみました』(パブリック・ブレイン、2021年)など多数。

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