
今ではすっかり東京都民の大動脈となっている「都営地下鉄大江戸線」が2020年12月に開業20週年を迎えた。コロナ禍もあり大々的な催しは企画されなかったものの、記念ヘッドマークをつけた車両が運行するなど、ささやかな記念行事が行われた。
大江戸線は1970年代から計画があったものの、都交通局の財政悪化などから一時は凍結。その後、まず91年12月10日に光が丘~練馬間が開通し、「都営12号線」として開業した。その路線を都庁前まで延伸し、さらに都内を環状で結ぶという構想で進められ、2000年12月12日に全線開業にこぎつける。
開業時には路線名が公募され、「都庁線」や「東京環状線 ゆめもぐら」などが有力だったが、当時の石原慎太郎東京都知事の「(実際には6の字型の路線で)環状線ではない」という意見もあり、「大江戸線」となった。
建設費だけでも1兆3574億円という莫大な予算を投入したため、採算が合うのか、との意見が多かったが、心配をよそに、大江戸線は開業からわずか3年で都営地下鉄全体の黒字化を支えるほどのドル箱路線に。今では1日平均乗車客数97万8206人(19年4月~20年3月)と、平均70万人前後の他の都営3線(浅草、新宿、三田線)を大きく引き離している。
全国各地650以上の市町村を取材・散策し、鉄道と街の事情に詳しい、まち探訪家の鳴海侑氏はこう評価する。
「新宿副都心の中枢を通りつつ、六本木、汐留といった最先端エリアから両国、上野の下町までを一本で結んだ利便性は唯一無二の存在。ビジネスにも観光にも便利で、まさに大江戸線は東京という街の価値を底上げした地下鉄と言えるでしょう」(鳴海氏)
大江戸線で最も発達した駅は?
折しも、東京は各所で大規模な再開発が行われており、20年前と比べて様変わりしてきている。そこで、開業当初と現在を比較して最も発達した大江戸線の駅を挙げてもらった。
「総合的に見て『勝どき駅』だと思います。大江戸線開業前の勝どき駅近郊は『晴海』と呼ばれ、だだっ広い工場や倉庫が多いエリアでした。交通網もバスかタクシーしかなく、殺風景な無人エリアという趣でした。しかし、この20年でタワーマンションが多く建設され、都心に近く、おしゃれで便利な住宅地として発展してきています」(同)
かつて、晴海エリアには唯一といえる大規模施設「東京国際見本市会場」があり、東京モーターショーや東京オートサロン、コミックマーケットなどのイベントが開催されていたが、1996年に東京国際展示場(東京ビッグサイト)がオープンすると共に閉鎖。以降は人が寄りつかない地帯となっていたが、タワマンの建設ラッシュにより、都心に近いベッドタウンとして注目を集め始める。
中央区の統計によると、勝どき地域の人口は2000年の大江戸線開業当初は9229人だったが、21年2月には2万7182人と、約20年で3倍に膨れ上がった。