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都会と地方の2拠点生活で気づいた「自分への恥」と「社会的成功ではない幸せ」とは

文=高橋よしこ/ライター
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「gettyimages」より

2拠点生活」をし始めて、都会と地方の違いが明確にわかってきた。

 周りは山々、田畑、川、家はまばらで高い建物はない環境。空は広く、静かで、空気が澄んでいる、月が明るい、といったことを実感すると、おおらかな気持ちになり、小さいことは気にならなくなる。心の余裕ができたおかげで、電話相談員という仕事にも、とても良い影響を及ぼしている。何よりも「原点回帰」の大切さに気づき始めた。

利点その1…仲間との時間で生じる「心の余裕」

 2拠点生活とは、2つの地域に拠点を持ち、生活すること。平日は都市部で働き、週末は地方でリラックスする、というふうに2拠点を行き来するライフスタイルを指す。リモートワークの普及により、平日でも田舎暮らしが柔軟にできるようになってきている。

 2拠点生活を始めて1年の私は、地方ではゲストハウスに連泊してオーナーご家族のお世話になっている。ひとり暮らしが長かったこともあり、ひとつ屋根の下で誰かと一緒に過ごすのに少なからず心配があったが、それは取り越し苦労だった。

 2拠点生活で一番大切にするべきなのは「相手も自分も尊重する」こと。時間をかけて気を使わない間柄をつくっていくと、居心地がよく、他者といることの悦びを体感することができる。

 何より、普段と同じように過ごしているのに、ご飯が非常においしい! 東京でリモートワークをしているときは、お腹があまり空かないため、腹時計に任せて1日1~2食だった。一方、地方での生活は不思議とお腹が空く。

 その理由はさまざまあり、ゲストハウスのオーナーが育てた採れたての野菜や、野草を採っておかずにすることも魅力だが、地方が好きな人たちと話しながら、笑い合いながら食卓を囲む。これが最大の理由のような気がする。ご近所の方たちとともに、きれいな空気の中で食卓を囲む。都会では得られない、楽しい時間だ。

 非日常である自然の中に身を置くと、なぜか感覚が研ぎ澄まされてくる。逆に、日常である都会では、感覚が鈍ってくる気がする。

 リモートワークが増えた昨今は緩和されたが、都会の通勤ラッシュでは人と人がぶつかるのも当たり前。ラッシュのない地方では、自然と他人を思いやる心が芽生える。

 このことに気づいた私は、都会に戻ってもイライラしなくなった。心に余裕が生じたのかもしれない。

利点その2…視野が広がる+「便利より不便」の楽しさ

 地方で、米粉を使ったパンケーキミックスやぽんせんなどの食品をつくっている女性起業家の方と話す機会があり、それまで知らなかった現実に気づかされた。

 たとえば、農薬や化学肥料を使わない有機野菜をつくる農家さんの労力は、とても大変なこと。有機野菜をつくると虫が寄ってくるので、有機野菜をつくっていない周囲の農家に迷惑がかかってしまうそうだ。手間も時間もかかるのに、コストパフォーマンスも決して良いとは言えない。そうした話を聞いて、自分を恥じた。

 有機の物は体にはいいと知っていたが、つくっている農家さんたちのことまでは考えていなかった。安易に「有機はいいよね」と言い、有機を食べている自分は意識が高いのよ、と優越感に浸っていた気がした自分を恥じた。現実を知ると、農家の方たちへの深い感謝が生まれてきた。

 また、「私たちはエネルギーをいただいている」という言葉が心に響いた。「食べ物の栄養を摂ることも必要だが、つくり手のエネルギーがその食物に宿り、それをいただくことで私たちは生きる力をいただいている」と話してくれた。

 地方には、食べられる野草が身近なところにたくさんある。フキノトウ、ノビル、三つ葉、つくし等々、それらを摘んで天ぷらや卵とじにして晩御飯だ。つくしは調理する前に袴を取る手間がかかるが、自然の恵みをいただく悦びや自分たちで採った楽しさがあるため、その手間もおもしろくなる。

 スーパーで買ったら摘む楽しさはないし、つまみ食いもできない。お金を払って手に入れるのは簡単だが、時間や労力がかかっても、自ら摘むことで自然のエネルギーを直にもらい、何をつくろうか考えるのがおもしろい。できあがった食物を食べたときの満足感と、地方でテレワークをした後に浸かる温泉は極楽だ。

 2週間の地方生活を終えて東京に戻ると、無機質な空間に人の波が押し寄せ、外には桜も咲いている。タイムスリップした気分になった。

 東京に戻ってきて、地方で過ごした日々を周囲の人に話すと、「良い時間を過ごし、良い体験をしたんだね」「表情が明るくなった」「エネルギーが違う、本当に楽しかったんだね」「うらやましい、私もしてみたい」など、口を揃えて言われた。

「社会的成功=幸せ」と思い込んでいたけど、それは私の幸せではないとハッキリ自覚して、都会よりも地方が性に合っているという感覚が確信に変わってきている。何より「生きている」と実感した。期待と不安はセットだが、私はこれからの自分の生き方を真剣に考え始めている。

(文=高橋よしこ/ライター)

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