富士フイルム、退任の古森会長、燻る「1年で復帰」説…「ゼロックス」を失った代償の画像1
富士フイルム東京ミッドタウン本社(「Wikipedia」より)

「会社が強くなり、私がやるべきことが終わった」

 富士フイルムホールディングス(HD)の古森重隆会長兼最高経営責任者(CEO、81)は、退任を決めた理由をこう語った。6月の株主総会後に取締役からも退き、最高顧問に就く。メディカルシステム分野を長年率いてきた後藤禎一取締役(62)が社長兼CEOに就き、助野健児社長兼最高執行責任者(COO、66)は代表権のある会長兼取締役会議長に就任する。

「イエスマンの助野さんがCEOにならなくてよかった。超ワンマンの下にいると、どうしてもヒラメになってしまう」(富士フイルムの幹部)

 2021年3月期の連結売上高(米国会計基準)は2兆1800億円。古森氏の社長就任時から5割増え、純利益は1600億円と過去最高を見込む。日立製作所の画像診断機器事業の買収が完了し、富士ゼロックスが富士フイルムビジネスイノベーションに社名変更する大きな節目を引き際に選んだ。

 古森氏は00年、60歳で富士写真フイルム社長に就任した。デジタルカメラの普及で主力事業だった写真フイルムの市場縮小に直面、業態の抜本的な転換をはかる。富士ゼロックスの株式を取得して連結子会社にした。1100億円を投じて液晶パネルの偏光板保護フイルムの増産に乗り出す。社名から「写真」を外し、富士フイルムに。富山化学工業(現・富士フイルム富山化学)を買収し、医薬品に本格参入した。

 フィルムで蓄積した技術を医療機器や化粧品に応用し、業態転換に成功した。この経営手腕は高く評価されている。半面、政界中枢に人脈をもつ“政商”としても知られた。

新中経で1兆2000億円を投資

 23年度までの新中期経営計画では、3年間で1兆2000億円の設備・研究開発投資を実施。最終年度の24年3月期の連結売上高は2兆7000億円、営業利益は過去最高となる2600億円を目指す。

 1兆2000億円のうち1兆円をヘルスケアなどの新規・重点領域に振り向ける。後藤・新社長は「唯一無二のヘルスケアカンパニーを実現する」と強調した。後藤氏は医療分野に先鞭をつけた古森氏の経営方針を踏襲し、ヘルスケアを軸にした成長戦略を描く。ヘルスケア事業は医療機器、バイオ医薬品の開発・製造受託(CDMO)、医薬品・化粧品などで構成する。同分野で最終年度に8600億円の売り上げを見込む。現在の柱の事務機器関連を抜き最大の収益源となる。中計期間に積み増す営業利益1000億円のうち、470億円をヘルスケアで稼ぐ予定。事務機からヘルスケア(医療)に主役が交代する。

 08年、富山化学工業を買収し医薬品に参入した際に古森氏は「10年後に医療関連事業で1兆円の総合ヘルスケア企業を目指す」と超強気の目標を掲げた。当時の医療関連の年商は3000億円規模だった。

 古森氏が社長に就任したのは00年6月。3年後にCEOになりワンマン体制を確立した。かつては写真フィルムが大きな収益源だったが、デジタルカメラの登場でフィルムの需要が消失。ライバルだった米イーストマン・コダックは経営破綻した。2000年代からは事務機が主力事業になった。

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