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経済同友会、地盤沈下が止まらず…「女性側にも原因」発言で炎上の櫻田代表幹事が再任

文=有森隆/ジャーナリスト
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経済同友会が所在する日本工業倶楽部別館(「Wikipedia」より/Wiiii)

 経済同友会は4月27日、東京都内で通常総会を開き、櫻田謙悟代表幹事(SOMPOホールディングス<HD>グループCEO)を再任した。19年4月の就任から2期目(1期2年)に入る。オイシックス・ラ・大地の高島宏平社長、大和証券グループ本社の田代桂子副社長、リコーの山下良則社長の3人を新たな副代表幹事に選任した。コロナ感染防止のため、総会の出席者を限定し、多くの会員はオンラインで参加した。

 前東芝社長の車谷暢昭氏は「本人からの申し出」により、副代表幹事を辞任した。車谷氏は昨年、副代表幹事に就任したばかり。1期2年の途中で退く。同氏は4月14日、買収を仕掛けた投資ファンドとの不明朗な関係を指摘され、辞任に追い込まれた。

 昨年末に、こんな噂が経済同友会の関係企業の幹部の間を駆けめぐった。

「櫻田さん、(同友会の)会議に出てこないらしい。いつもオンラインばかりだ。年頭所感も副代表幹事の車谷さんがまとめているが、当たり前の話ばかりで中身がない」(同友会の関係者)

 別の関係者は「櫻田・車谷さんは財務省の若手官僚をブレーンにしている。それで新しい話は出てこない」と切って捨てた。「新浪剛史さん(サントリーHD社長)が代表幹事になれば情報発信力は増し、マスコミの関心も高まるのだが……」。これで、この噂は一件落着となった。

 総会で櫻田代表幹事は「企業には国家戦略の形成と実行を担う大きな責任がある」と述べ、国の政策への関与を強めていく考えを示した。昨年設置した「未来選択会議」で環境・エネルギー政策や財政などについて、「政策決定プロセスを揺さぶるような力を発揮していきたい」と強調した。

 スタートアップ企業が参加しやすいよう、対話の場を設けるなど「次世代の経営者を育成する場に進化させていく」。櫻田氏は総会後の記者会見で「発信力を高めていくことが重要だ」と語り、政策提言にとどまらず、発信力の強化に取り組む、とした。

ダイバーシティ推進の旗振り役

 19年4月の通常総会で、新しい代表幹事にSOMPO HD社長(当時)の櫻田氏が就任した。SOMPO HDが女性の活躍に向けたダイバーシティを推進していることが、櫻田氏を代表幹事へと押し上げた。

 2013年、安倍晋三政権(当時)が女性の活躍を成長戦略の柱に掲げた。企業に女性の活躍に向けた行動計画の策定を義務付けた「女性活躍推進法」が16年4月、施行された。女性管理職の比率を「20年代早期に30%にする」のが政府の目標である。

 SOMPO HDは、いち早く、「20年度30%」の目標を掲げ、積極的に女性管理職を登用した。13年7月時点でグループ全体の女性管理職の比率は5.0%にすぎなかったが、19年4月には21.3%に高まった。グループ最大の事業会社である損保ジャパンで女性の取締役2人、執行役員1人、部店長15人が誕生した。

 SOMPO HDは女性活躍推進に向けた取り組みが評価され、15年1月、東京証券取引所から「企業行動表彰」を受けたのを皮切りに、19年3月、「平成30年度なでしこ銘柄」(経済産業省、東証)に選定された。損保ジャパンは16年12月、「女性が輝く先進企業表彰」内閣総理大臣表彰(内閣府)と「東京都女性活躍推進大賞」を受賞、18年4月、公益財団法人日本生産性本部から「第3回女性活躍パワーアップ大賞」が贈られた。ダイバーシティ推進企業であることが櫻田氏を経済同友会の代表幹事に押し上げたのである。

「女性側にも原因がないことはない」発言で炎上

 世界経済フォーラム(WEF)が3月に発表した各国の男女平等の度合いを示す「ジェンダー・ギャップ指数」で日本は156カ国中120位だった。前回(121位)同様、先進国で最低だ。安倍政権が女性の活躍を成長戦略の柱に掲げた13年当時は136カ国中105位だったから、さらにランクが下がったことになる。

「男女共同参画白書」(20年版)によると、管理的職業従事者に占める女性の割合は直近で14.8%。米国(40.8%)、ノルウェー(34.5%)に明らかに見劣りする。櫻田代表幹事は、皮肉なことだが、最も得意とするはずのこの問題で炎上事件を起こした。2月の定例記者会見でのことだ。「企業で女性の役員登用が進んでいない理由」を問われ「女性側にも原因がないことはない」と発言し、「チャンスを積極的に取りにいこうとする女性がそれほど多くないのではないか」との認識を示した。

 櫻田氏は東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」との発言を論外と一蹴したが、その一方で、「チャンスを掴めないのは女性側にも責任」と原因を押し付けるような発言をしたことによって、ネット上で大炎上した。

 おそらく、櫻田氏は「なぜ非難されるの」か理解できなかったのではないのか。森氏と同類と見なされたことは不本意だろう。櫻田氏は経済同友会の代表幹事を続投した。驚くべきことだが、経済同友会の通常総会を報じない媒体もあったほどで、経済同友会の存在意義そのものが問われている。

 女性の活躍、積極的に登用すること以外のテーマで櫻田氏の発言が取り上げられることが少ないのは事実である。政権批判をすることもないし、政策を追認する発言ばかり目立つ。波風を立てたくないのではないのか。“優等生”過ぎるのでは政策立案集団のリーダーという肩書が泣く。

(文=有森隆/ジャーナリスト)

有森隆/ジャーナリスト

有森隆/ジャーナリスト

早稲田大学文学部卒。30年間全国紙で経済記者を務めた。経済・産業界での豊富な人脈を生かし、経済事件などをテーマに精力的な取材・執筆活動を続けている。著書は「企業舎弟闇の抗争」(講談社+α文庫)、「ネットバブル」「日本企業モラルハザード史」(以上、文春新書)、「住友銀行暗黒史」「日産独裁経営と権力抗争の末路」(以上、さくら舎)、「プロ経営者の時代」(千倉書房)など多数。

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