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ソフトバンクG、純利益4.9兆円で「世界3位」のカラクリ…マイクロソフトを上回る

文=編集部
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ソフトバンクショップ(「Wikipedia」より/Kirakirameister)

「(自分は純利益が)5兆円、6兆円で満足する男ではない。10兆円でも満足しない」

 5月12日に行われたソフトバンクグループ(SBG)の決算説明会で孫正義会長兼社長は、さらなる業績拡大に自信をのぞかせた。過去最大の赤字から同最大の黒字に転換した決算だった。21年3月期連結決算(国際会計基準)の純利益は4兆9879億円という日本企業としては驚異的な数字となった。トヨタ自動車が18年3月期に計上した2兆4949億円がこれまでの最大だった。

 SBGは20年3月期に9615億円の赤字だったことを考えるとV字回復どころではない。オセロゲームさながらに黒い石が白石に替わった。世界企業の純利益ランキング(2020年度)だとSBGの4兆9879億円は、米アップルの6兆1905億円(20年9月期)、サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコの5兆2618億円(20年12月期)に次いで世界第3位となる。米マイクロソフトの4兆7882億円(20年6月期)、中国工商銀行の4兆7499億円(20年12月期)を上回る。

 戦略的投資会社を標榜するSBGがオマハの賢人と呼ばれるウォーレン・バフェット氏が率いる米バークシャー・ハザウェイの4兆5399億円(20年12月期)を上回ったことは、感慨深いものがあったかもしれない。

 不思議なことにSBGの売上高は5兆6281億円しかない。純利益が売上高の88.6%に相当する。このような数字になる最大の理由は、SBGが事実上の投資会社に変貌しているからだ。

 孫氏がSBGの前身の日本ソフトバンクを設立したのは1981年。当初は出版やソフトの流通という地味な事業会社だった。90年代以降、米ヤフーへの投資などをきっかけに、次々とM&A(合併・買収)を仕掛け、めまぐるしく業態が変化し、2010年代には日米の有力携帯電話会社を持つ巨大通信会社に変身した。15年、ソフトバンクグループに社名を変更し、脱皮を図る。

SVF 1号、2号の投資利益は6兆円

 17年、サウジアラビア政府系ファンドのオイルマネーを呼び込んだソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF、10兆円)を傘下に置き、傘下のファンドを通じて多数のベンチャーに投資する戦略的投資会社へと完全に経営の舵を切った。とはいえ、サウジアラビア王族などから多数の資金を調達して鳴り物入りでスタートしたSVF 1号ファンドとは違い、同2号ファンドは資金が集まらない状態で苦難のスタートを切った。10兆円を集めたSVF 1号と、自己資金のみで3兆円規模の同2号は孫社長の置かれた投資環境の違いを如実に示している。

 投資ファンドの損益は株式市場に大きく左右される。20年3月期決算は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で株式市場が世界的に下落。SBGが運用する投資ファンド、SVF 1号、2号とも深刻なダメージを受けた。しかし、各国の財政出動や中央銀行の金融緩和、加えて、コロナ下で急激に進むデジタル化を見越し、ネット関連企業に投資マネーが集中したことによる株価上昇で状況が一変した。

 SBGの業績を牽引するのは、子会社が運用するファンド事業である。20年3月期決算では同事業で1兆9313億円の損失を計上した結果、最終損益は9615億円の赤字に転落した。SBGの足を大きく引っ張ったSVFが、21年3月期は一転して稼ぎ頭となった。

 SVF事業は、当初は巨額の資金を未公開株に投じてきた。上場を視野に入れるIT関連の新興企業に20~40%出資するというのが基本的な投資スタイルだった。ファンド事業の利益は投資先企業の株式を売却して資金回収した際の「実現益」と、企業の価値を四半期ごとに評価して増加分を「未実現評価益」として計上する部分に分かれる。

 連結決算での投資成果を示す投資損益は7兆5290億円の黒字(20年3月期は1兆4101億円の赤字)と様変わりした。SVF1号と2号に係る投資利益は6兆2920億円に達した。SVF1号の投資案件では4237億円の「実現益」と合計4兆2851億円の「未実現評価益」を計上した。3月に上場した韓国のネット通販大手クーパーの「未実現評価益」2兆5978億円が目を引く。米料理宅配のドアダッシュでも6611億円の「未実現評価益」計上につながった。未上場の投資先で合計1兆1930億円の「未実現評価益」を実現した。一方、SVF 2号では上場している投資先の株価上昇に伴う「未実現評価益」を4903億円計上した。

「仕組みで進化させる」

 投資会社の時価会計では投資損益を決算ごとに計上する必要があるため、実際に換金していなくても、「未実現評価益」を決算に反映することができる。この巨額の数字はあくまでも帳簿上のものである。SBGは一般的な事業会社と同一視することはできない。

 SVF 1号は10兆円の投資を完了させ、投資先企業は92社。単独で始めた同2号の投資先は95社に達している。ラテンアメリカのベンチャー企業に投資するLatAmでも37社への投資を行っている。合計224社に投資していることになる。数年後に上場が期待されるユニコーン企業に絞り込んでいるという。ユニコーン企業とは評価額が10億ドル(約1100億円)以上の未上場企業を指す。新しい技術を活用して高い成長率を実現しているユニークな企業が多い。

 21年3月期は14社が上場した。100~1000社に1社しか成功しないといわれるベンチャー投資の世界で、上場が展望できるユニコーン企業に絞って投資することが理論的に可能なのか。孫氏は決算説明会で最高益について「今回はたまたまが重なった。あまり胸を張っていえる状況ではない」と語っている。「反省すべき点も多々あった」という。反省点の1つが「仕組みの欠如」だという。「単なるバクチではなく、仕組みで進化させる。製造業が売れ筋のヒット商品を造るように毎年、上場企業を生み出していく」と述べている。

 孫社長が良い意味でも悪い意味でもSBGの全権を掌握していることは間違いない。これからも、これまでの40年間と同様に、成功も失敗も、孫氏の双肩にかかっている状況が続く。

(文=編集部)

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