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パチンコ・パチスロを打たない“サラリーマン店長”が急増…現役ホール店長が語る裏事情

文=山下辰雄/パチンコライター
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一般的なパチンコ店内の様子(「Wikipedia」より)

 前後編でお伝えしている、業界内で働く人が考える“パチンコ業界衰退の理由”。

 前回は、元メーカー開発者のT氏から「タイアップ台に頼りきっているせいではないだろうか」という言葉が出てきた。今回お話をうかがうのは、都内の中規模店で店長を務めるS氏。メーカーとユーザーに挟まれ、その両方を見て適切に対応しなければいけない立場にある、ホール側の本音を語ってもらった。

現役店長が感じるホール側の問題点とは?

「お客さんをたくさん呼ぶのは簡単です。赤字覚悟で玉を出せばいいだけ。逆に言えば、お客さんが来ないのは、そのホールが“勝てないお店”だからです」(S氏)

 確かに、非常に単純でわかりやすい話である。では、パチンコ業界が衰退しているのは、ホールが渋い営業をしていることが原因なのだろうか。

「もちろん、それも原因の一つでしょうね。かつてのMAXスペックのような高射幸性の台がつくれなくなったのは大きいけど、『戦姫絶唱シンフォギア』や『大工の源さん 超韋駄天』などの1種2種混合機をはじめ、毎年、人気機種や元気なメーカーはありますよね。それをうまく活かせるかどうかが、ホール側の腕の見せどころですから」(同)

 S氏は昨今の厳しい状況を規則改正やメーカーのせいにすることなく、「自分たちにもできることがある」「自分のたちのせいでもある」と受け止めているようだ。

「だって、社内の店長や地域のお店の状況を見ていると、『こいつら、パチンコに興味ないだろ?』って感じる場合も少なくないから、私たちにも間違いなく原因がありますよ(笑)」(同)

 一昔前のパチンコホールは、まさに“鉄火場”。お客さんの多くはギャンブル好き男性と不良学生、店内はタバコの煙が充満、パンチパーマでガラの悪い店員も多かった。

 しかし、近年は店内の照明や装飾物によって雰囲気が明るく華やかになり、トイレは広くて清潔、アメニティが充実しているホールも多い。4年制大学の新卒を採用するパチンコホール企業も多くなり、社員教育も徹底している。そうした動きがパチンコ業界のイメージアップにつながり、女性もホールに足を運びやすい状況を生み出した。

 そんな状況を喜んでいるかと思えば、「とはいえ、ですよ」とS氏は釘を刺す。

「新卒学生を採るのが悪いとは言いませんが、パチンコ・パチスロに興味がないけど『給料が高いから』という理由で志望する人が多いのは、業界にとってマイナスですね。若いうちに稼いで、お金が貯まったら転職する人が多いし、『それもやむなし』と考えている業界全体も問題だと思います」(同)

パチンコを打たない“サラリーマン店長”が増加

 パチンコ業界に限った話ではないが、役職が上がるにつれて拘束時間が長くなり、店長ともなればプライベートを犠牲にして仕事をしなければいけない場面も出てくるため、パチンコホール店長の離婚率は高いのだとか。

「私が一番嫌なのは、パチンコパチスロを打たない店長がいること。もちろん、知識がなくても上手に数値を管理して目標を達成している優秀な店長もいます。でも、ラーメン屋の店長が『俺、ラーメンに興味がないから(ラーメンなんて)普段、全然食べないんだよ』なんて言っていたら、そのお店には行きたくないでしょ?」(同)

 新卒学生を一括採用し、社員育成マニュアルで画一教育することの弊害が、ホール店長の“サラリーマン化”である。大手チェーン企業なら仕方ないことだとはいえ、「お客さんの気持ちがわからないで、店長が務まるだろうか」とS氏は首を傾げる。

 お客さんがお金を賭け、「勝った負けた」があるパチンコ業界は、他のレジャー産業とは一線を画した存在である。広告を打ち、「楽しいですよ」「遊びに来てください」と宣伝すればいいというわけではない。

「パチンコホールは、駅前店か郊外店か、大都市圏か地方都市かによって客層が異なりますし、戦略を変えなければいけません。黙っていてもお客さんがつく人気台はさておき、それ以外の台の稼働率をいかに高め、売り上げを伸ばすかが、店長の評価の分かれ目ではないでしょうか」(同)

 店長の裁量は、企業によって大きく異なる。新台の選定や購入台数を店長に一任している企業もあれば、新台は本社が一括で購入して各店舗に振り分けるチェーン企業もある。後者の場合、店長はおのずと上の指示に従うだけの受け身型になりやすい。

「企業グループを運営している本部には経験と数字の積み重ねがあり、それをもとに判断している限り、大きな間違いはないでしょう。でも、現場で直にお客さんと接し、空気感を知っている店長の判断も大切だと私は思っています」(同)

 本部の指示に従うだけの店長では、ホールの特色が見えなくなる。そんな“似たり寄ったり”のホールが増えるのは、ユーザーにとっても好ましくないだろう。

「このホールはライトミドルがアツい、このホールの『海物語』のラインナップはどこにも負けない、みたいな特色があれば、ユーザーはその日の気分や軍資金に合わせてホールを選ぶことができますよね」(同)

 近年のホールは射幸心を煽るような宣伝やイベントを打つことができず、厳しい店舗運営を強いられている。そんなときだからこそ、「パチンコファンの気持ちをわかっている店長にホールを任せることが大事。店長がパチンコやパチスロを打たないなんて言語道断。自分で打つからこそ、地域のお客様の心に刺さるような運営ができるのではないでしょうか」(同)

 前後編にわたってお伝えしてきた、業界内で働く人が考える“パチンコ業界衰退の理由”。

 開発者からもホール店長からも、「自分たちにも変えるべきところがある」と前向きな言葉が聞かれた。業界内にこうした“アツい人”がいる限り、その思いは周りの人たちの心を動かし、いずれ業界が少しずつ変わっていくきっかけになる……かもしれない。

(文=山下辰雄/パチンコライター)

山下辰雄/パチンコライター

山下辰雄/パチンコライター

パチンコライターとしてBusiness Journalにて多くの記事を寄稿。

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