私たちは誰もが他人の言葉に操られている。
こう言われると「そんなことはない」と思うかもしれないが、小説を読んで涙が出たのだとしたら、それは小説家の言葉に感情を操られたわけだし、店員の営業トークで必要のないものを買ってしまったのだとしたら、それは店員に行動を操られているということになる。
ただ、これは当然のことでもある。言葉には人の感情や行動を操る力があり、その力をいいことに使うか悪用するかはともかく、その使い方に長けた人がいるということだ。やり手の営業マンしかり、金集めのうまい起業家しかり、新興宗教の教祖しかり。
使い方はあなた次第。『思い通りに人を動かすヤバい話し方』(Dr.ヒロ著、フォレスト出版刊)は、人を操る話し方の本である。
■営業マンのあのセールストークが通用しなくなっている
営業の世界に「Yes,but話法」というものがある。
相手の発言をいきなり否定するよりも、一度「そうですよね(Yes)」を受け入れてから、「しかし(but)」と反論することで、こちらの主張が通りやすくなる、という理屈である。
この理屈自体は正しいのかもしれない。しかし「but」が問題だ。一度「Yes」で相手の意見を受け入れた後であっても、結局は反論し、言いくるめるのは、いい結果にはならないし、トラブルも増える。
本物の「Yes,but話法」つまり、相手をこちらの土俵にひきずりこむ「Yes,but話法」は、「but」を営業マン自らが言ってはいけないのだ。
たとえばこんな具合である。
お客「MacBook Proを買いたいんだけど、高いんですよね!」
店員「おっしゃる通りです(Yes)。この金額は決して安くないと思います。ところで何と比べて高いと思われたんですか?」
お客「今使っているPCが10万円くらいなんですよね」
店員「それは高く感じられますよね。ところで、なぜ今回はMacBook AirではなくMacBook Proをお探しなんですか?」
お客「僕、動画編集をしているのでMacBook Airの価格帯だと、スペック的に足りないんですよね」
仕事でもプライベートでも「Yes,but話法」を使う人は多いが、一度相手の意見を受け止めたところで、最終的に相手の意見を否定し、反論しているには変わりない。使うべきは「Yes,but話法」ではなく「Yes. By the way(ところで)話法」。営業マン自らが反論するのではなく、お客自身に「買うしかない」ことを気づかせるのがキモなのである。
◇
本書のなかで、これまで正しく、効果的だとされていた話術は、ことごとく否定される。それらはまちがっているか、あるいはもう使い古されて通用しなくなっているのだ。
もしかしたら、あなたがいつも使っている話術も、すでに古びて効果を失っているかもしれない。だとしたら、この本に出合うことはアップデートのチャンスだ。(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。