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木下隆之「クルマ激辛定食」

アメリカの至宝、コルベットが日本仕様に…伝統のFRからミッドシップに大変身した理由

文=木下隆之/レーシングドライバー
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新型「コルベット」

 8代目となる新型「コルベット」の最大のトピックは、エンジンの搭載位置が変更されたことだ。ゼネラルモーターズ(GM)のシボレーブランドから販売されているコルベットが、初代「C1型」から先代の「C7型」まで、頑ななまでに守り続けてきたフロントエンジンをミッドシップに移植。新たな走りのステージに飛び立ったのである。

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 それによってスタイルも刷新。驚くほど長いフロントノーズと、それに比較して極端に短いリアデッキがこれまでのコルベットの特徴であり、そのスリーク(なめらか、小ぎれい)かつ大迫力のスタイルが多くのコルベットファンを魅了してきた。

 だが、ボンネットの中にエンジンがなくなったことでノーズは短くなり、その代償にリアセクションが延長されている。いわばフェラーリやランボルギーニのようなスーパーカースタイルになったのである。

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 これは、すなわちイタリア系スーパースポーツへの挑戦状でもある。ここ数年、GMは欧州型モータースポーツへ積極的に参戦している。「ル・マン24時間レース」を代表とする耐久レースにコルベットを投入しており、そこでの優位性を求めて、速く走ることに有効なミッドシップ方式を採用したとする解釈が一般的だ。

 実際に、ミッドシップになったばかりの新型コルベットには、さらに戦闘力を高めたレース仕様も発表しており、勝利へ貪欲な姿勢を見せる。勝つための施策が、FRからミッドシップへの移行と考えるのが自然である。

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 とはいうものの、歴代のコルベットとの共通性も残る。搭載するエンジンは、シボレーの伝統的名機である「V型8気筒6.2リッターエンジン」であり、新開発ではない。むしろ、頑なに受け継いできた「スモールブロック型OHV(オーバーヘッドバルブ)」を踏襲する。「高性能エンジン=DOHC(ダブルオーバーヘッドカムシャフト)」という常識を覆すに十分な性能を披露する。ターボチャージャーの助けを借りずとも、最高出力502ps、最大トルク637Nmを炸裂。高回転まで軽々と回り切る感覚はコルベットそのものであり、OHCの可能性をアピールする。

 乗り味も、伝統を裏切ることのないものだ。ミッドシップにありがちな危うい操縦性ではない。限界領域では俊敏なステップを披露するものの、クルージング領域では安定している。ハンドリングでは緊張を強いることはなく、安心してマシンに体を委ねることができる。

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 組み合わされるミッションは8速ツインクラッチであり、クラッチペダルを省略した2ペダルマニュアル。変速はオートマチックと同様に安楽であるが、効率的にはマニュアルを大幅に上回るという代物。ドライバーを選ばない柔軟性を秘めながら、コンペティションの世界での優位性を誇るのである。

 ちなみに、新型コルベットでは、晴れて右ハンドル仕様が輸入されることになった。エンジンをフロントからリアに移植したことで、ステアリング系の左右反転が容易になったという事情もあるだろうが、ともあれ日本のユーザーにとっても朗報だろう。

 アメリカの至宝、コルベットが日本仕様として海を渡ってきたことは喜ばしい。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

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