6月10日、トヨタ自動車の「300系」と呼ばれる新型「ランドクルーザー」が世界初公開された。ランドクルーザーは1951年8月に初代「BJ型」が誕生して以来、人々の安全・安心を支えるクルマとして、世界中のユーザーに選ばれ続けてきたトヨタを象徴する一台。
現在では年間30万台以上が販売され、世界170の国と地域で累計1040万台の販売台数を記録している。そういったユーザーの「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」というニーズに応えて、信頼性、耐久性そして悪路走破性を鍛えて、進化し続けてきた唯一無二の存在がランドクルーザーなのだ。
そのランドクルーザーが生誕70周年を迎える2021年。長年にわたる技術の積み重ねと最新技術の融合によって基礎から一新した、フラッグシップモデルであるランドクルーザーが今夏、正式発表・発売となる予定だ。
新型ランドクルーザーは、2007年に登場した「200系」の後継モデルとなるステーションワゴンタイプだ。「ランドクルーザーの本質である信頼性・耐久性・悪路走破性を進化させつつ継承すること」、そして「世界中のどんな道でも運転しやすく、疲れにくい走りを実現する」との2点が開発の狙いとなっている。
これを実現するために、クルマの骨格やパワートレインを刷新しているのが特徴だ。ランドクルーザーのDNAを守る礎であるフレーム構造のボディを踏襲しつつ、トヨタのクルマ構造改革である「TNGA」を採用した新GA-Fプラットフォームを採用。この新シャシーによって、ボディ剛性を高めるだけでなく200kgの車両全体の軽量化も実現した。
そして、ランドクルーザー伝統の悪路走破性をさらに向上させるために、接地性を向上させるE-KDSS(電子制御のキネティックダイナミックサスペンションシステム)や、ドライバー視点で障害物を可視化できるマルチテレインモニター、走行路面を判定し自動でモード選択してくれるマルチテレインセレクトなどの新技術を搭載している。当然ながら、最新世代の運転支援システム「トヨタセーフティセンス」も全車標準装備となっている。
新型ランドクルーザーに搭載される予定のパワートレインは、新開発の2種類のV6ツインターボエンジンを採用。ガソリンエンジンは最高出力415ps、最大トルク650Nmを発生する3.5L V型6気筒ツインターボ。そして最高出力309ps、最大トルク700Nmを発生する3.3L V型6気筒ディーゼルツインターボエンジンだ。両エンジンに組み合わされるトランスミッションは10速ATで燃費性能も向上している。
グレード構成はガソリンエンジン搭載車がスタンダードな「GX」「AX」「VX」に、オンロードの走行性能に磨きを掛けた「ZX」、そしてタフなオフロード性能を実現した「GR-SPORT」の5グレード。乗車定員は、GX、ZX、GR-SPORTが5人乗り、AX、VXが7人乗り。ディーゼルエンジン搭載車はZXとGR-SPORTの2種類で、どちらも7人乗りとなる。またGR-SPORTのフロントグリルは専用デザインとなり、英字で「TOYOTA」の文字が輝く。
さらに、ランドクルーザーは車両盗難が多いことで知られているが、新型はエントリーグレードのGXを除く全グレードに指紋認証システムを標準装備し、セキュリティ対策を大幅に強化しているのが特徴だ。
注文殺到→受注停止の理由
先代モデルから全面刷新された新型ランドクルーザーは、正式発表・発売前にもかかわらず、すでに受注が開始されている。しかも、受注が殺到し、すでに納車まで約4年かかるともいわれているのだ。そんななか、7月21日現在、新型ランドクルーザーの受注が停止されているのだ。受注停止期間は8月1日までとなっているが、延びる可能性は高い。
新型ランドクルーザーが受注停止に追い込まれた理由は、輸出や転売目的で予約した人が多いからだ。現在、事前受注の内容を確認しており、輸出・転売目的が疑われる受注に関してはキャンセルになるといわれている。
人気の高いクルマを事前に予約し、プレミアム価格で転売するケースが増えている。こういったことが増えると、本当に欲しい人がクルマを手に入れられないだけでなく、「未使用中古車」として販売される車両価格が高騰するといった、コンサートチケットなどの転売と同じことが起きてしまうのだ。
そのような事態を防ぐために、現在受注ストップとなっている新型ランドクルーザー。正式発表された時に、納車までの期間が一体どれくらいの長さになるのか。大変気になるところだ。
(文=萩原文博/自動車ライター)