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セブンやモスバーガーも参入の「大豆ミート」は“第4の肉”になるか?栄養豊富な便利食材

文=真島加代/清談社
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セブンプレミアムの「野菜と大豆ミートのタコスミート」(左)、ドトールの「全粒粉サンド大豆ミート~和風トマトのソース~」(中央)、マルコメの「ダイズラボ 大豆のお肉 乾燥タイプ フィレタイプ」(右)。さまざまな大豆ミート商品が登場している

 タンパク質含有量の豊富さから「畑のお肉」と呼ばれる大豆を主原料に、肉のような食感や味が楽しめる代替肉「大豆ミート」が店頭に並ぶようになった。今後、大豆ミートは“食肉”の一種として私たちの生活に根付いていくのだろうか。大豆ミートの今後について、食の総合コンサルタントの小倉朋子さんに話を聞いた。

実は利便性が高い食材の大豆ミート

 2020年以降、食のトレンドに名を連ねるようになった大豆ミート。日本能率協会総合研究所の発表によると、19年には15億円程度だった大豆ミート市場は、21年現在で20億円ほどに成長しているという。

「以前は菜食主義の人や、体を鍛えていて植物性タンパク質を摂りたい人、ダイエット中の人など、食にこだわりがある消費者が大豆ミートを選ぶ傾向がありましたが、この1年でライトな層も購入するようになりましたね。さまざまな要因がありますが、直近では巣ごもり需要の影響が大きいです。外出を控えて自宅にいる時間が長くなり、自炊のバリエーションを増やしたいというニーズから、大豆ミートを選ぶ人が増えているようです」(小倉さん)

 食肉と違ってたくさん食べても罪悪感を覚えないことなども、ライト層に受け入れられている理由だという。実は、大豆ミートの市場が拡大しているのは日本だけではない。

「特に欧米では『SDGs(持続可能な開発目標)』の観点で、大豆ミートのみならず代替肉全般が大きく注目されています。家畜の飼育や食肉の生産には大量の温室効果ガスを排出しますが、大豆ミートの環境負荷は食肉よりも軽い。環境への配慮という意味で大豆ミートを選ぶ人もいますね」(小倉さん)

 小倉さんは、20年ほど前から肉や魚と同じようにタンパク源として大豆ミートを食べているという生粋の愛好家。大豆ミートといえば、低カロリー・低糖質・低脂質、豊富なタンパク質など、栄養面での特徴が挙げられるが、そのほかにも食材としての強みがあるという。

「大豆ミートは、とても利便性が高い食材です。乾燥タイプの大豆ミートは常温で保存でき、水につければやわらかくなるので、非常時にも貴重なタンパク源になります。独特なにおいはありますが、さっぱりしていて味付けしやすいので食肉に近い味わいも再現できます」(小倉さん)

 また、動物の肉はしっかり火を通さなければ食べられないが、大豆ミートは加熱時間が短くても問題ない。加熱調理のストレスが少ないのも強みだという。一度、大豆ミートを食生活に取り入れてみると、その使いやすさを実感できそうだ。

セブンやモスバーガーも参入

 日本のマーケット全体の変化としては、ファストフード店やコンビニ、大手食品メーカーが市場に参入している状況から、大豆ミートが「大衆化している」と小倉さんは話す。

モスバーガーやロッテリアなどのファストフード店では、パティに大豆ミートを使ったハンバーガーを展開しています。ハンバーガーはパティだけでなくパンやソース、野菜類など、複数の具材が同時に口に入るので、大豆特有のにおいが気にならないというメリットがあります。もちろん、ハンバーガーが大衆に愛されるメニューである点も重要です」(小倉さん)

 大衆向けという意味では、より食べやすさを意識した商品も登場している。セブン&アイ・ホールディングスのプライベートブランド「セブンプレミアム」では、20年末に大豆ミートと牛ばら肉を合わせた「大豆ミートと牛肉のハンバーグ」を発売。大豆ミートだけでなく、牛肉の肉汁も楽しめる味になっている。

「大豆ミートには独特な風味があるので、実際のお肉を合わせると、より親しみやすい味になりますよね。全員が環境への配慮や健康目的で買うわけではないので、食事のバリエーションとして大豆ミートを購入する人にとっては、手に取りやすい商品になっています」(小倉さん)

 活況を迎えつつある大豆ミート市場だが、小倉さんは「日本で“第4の肉”として定着するかどうかは未知数」と話す。

「海外では宗教上の理由で肉が食べられない人でも大豆ミートが食べられたり、肉食中心の国では健康志向の人に響いたり、と大きなインパクトがあります。しかし、日本人にとって大豆食品は豆腐や納豆、油揚げなど、長年さまざまなバリエーションで食べてきた食材です。今は目新しさから大豆ミートを手に取る人もいますが、見慣れたときにどうなるのかは現状では見極めにくいですね」(小倉さん)

 昔から大豆食品が身近な日本とそうでない国とでは、状況が異なるようだ。

世界的な食糧難に陥るという試算も

 諸外国と日本の環境に対する意識の差も、大豆ミートの定着に影響しているという。

「個人的な印象ですが、海外に比べると、日本は環境問題に対する意識が高いとは言いがたい国です。そのため、ブームが落ち着いた頃には『やっぱり普通の肉がいい』『豆腐でもいいか』というように、元の食生活に戻るかもしれません。今後は食事の選択肢のひとつとしてじわじわ浸透する可能性も考えられますが、海外のような一大ブームになるとは考えにくいです」(小倉さん)

 その一方で、さらに将来を見据えたときに大豆ミートは無視できない存在になる、と小倉さん。

「遠くない将来、世界的な食糧難に陥るという試算が出ています。現代の私たちは肉と大豆ミートの食べたいほうを選ぶことができていますが、このまま何の対策も講じなければ、大豆ミートしか食べられない未来が来るかもしれません。食事を自由に選べる今のうちに、一人ひとりが食生活を見直す必要がありますね」(小倉さん)

 現代の私たちが大豆ミートを食の選択肢に入れるだけで、未来の食肉文化が救われるかもしれない。スーパーやファストフード店で大豆ミートを見かけた際は、ぜひ実食してみてほしい。

(文=真島加代/清談社)

●食の総合コンサルタント 小倉朋子 http://totalfood.jp/
株式会社トータルフード代表取締役。亜細亜大学・東京成徳大学講師、食輝塾主宰。24時間食一色の生粋の食の探求家。メニュー開発、マナー、トレンド、箸文化やダイエット、食育などあらゆる分野の食に精通、提案をしている。

清談社

清談社

せいだんしゃ/紙媒体、WEBメディアの企画、編集、原稿執筆などを手がける編集プロダクション。特徴はオフィスに猫が4匹いること。
株式会社清談社

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