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木村誠「20年代、大学新時代」

失われたキャンパスライフ…コロナ禍が直撃した「大学2年生」の切実な不安

文=木村誠/教育ジャーナリスト
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オンライン授業を受ける大学生(「gettyimages」より)
「gettyimages」より

 新型コロナによる学生への影響として、バイト収入や仕送り額が減ったことなどによる暮らしのダメージ、対面授業が減りオンライン授業にシフトしたことなどによる学びの物足りなさ、そして友人関係やクラブ・サークルにおけるコミュケーション断絶の精神的危機などが指摘されている。

 暮らしのダメージについては、住民税非課税世帯などの授業料を減免し返済不要の給付型奨学金を支給する、文部科学省の修学支援新制度の利用(約27万2000人)に加え、給付金が困窮学生にも支給される見通しだ。コロナ禍で世帯収入が大幅に減ったり、バイトで学費を支払っている学生など、大学などが推薦する人も加わるので、対象は今より広がりそうだ。

 学びの物足りなさについては、対面授業の増加やZOOM活用による少数の双方向授業などの活用で、むしろ多様な学びの機会の展開が期待できるとの声もある。ただ、大学生協連調査には「今までの授業(私の場合1年生の時のもの)を、単位は関係なくもう一度対面で受けられるようにしてほしい。それ以外にも今までの時間に追いつくようなサービスや対策をしてほしい」という切実な意見も寄せられている。

 より深刻な問題は、精神的危機である。実に7~8割の学生が、多かれ少なかれ、人とのつながりが薄くなったことへの不安があるという。

 それらの大学生の実態にアプローチした調査に、文部科学省高等教育局の「新型コロナウイルス感染症の影響による学生等の学生生活に関する調査(2021年3月5日~27日、有効回答者:1744名)」と、全国大学生活協同組合連合会の「届けよう!コロナ禍の大学生活アンケート(2021年7月5日~19日、有効回答者:7832名)」がある。

 文科省の調査は、学生への支援策の検討に役立てる政策意図があり、大学生協連調査の目的は「コロナ禍での大学生の現状やがんばり」を社会や大学へ知らせることである。

 さらに、10月31日に開催された「全国大学生サミット」(全国大学生協連主催、文科省・日本学生支援機構ら後援)は、ZOOMによる大学生のパネラーの意見・感想等の発信や大学の現場で学生の支援をしている専門家の発表があり、生の声のやり取りの中から大学生活の実状が浮かび上がってきた。

失われた大学生活――大学2年生の実感

 下表は、全国大学生活協同組合連合会が実施したアンケートの集計結果である。

全国大学生活協同組合連合会が実施したアンケートの集計結果

 大学生協の藤本昌氏(全国大学保健管理協会ヘルシーキャンパス運営委員)は、この調査結果や全国大学生サミットでの学生の発言、大学の心理カウンセラーによるコメントなども踏まえて、次のように指摘する。

「最も着目しているのは、コロナ禍を想定せずに入学してきている現2年生のメンタルヘルスだ。全国大学生協連の調査は、『不安に思っていること』で、現2年生の無気力、落ち込み、孤独感などが他学年より大きい、と分析している。特に、コロナ禍で受験期を過ごした現1年生との違いは看過できない。

『学生生活は充実しているか』という問いに対しては、現2年生の充実している計は2019秋89.3%→2020秋56.5%→2021夏53.8%で、2020秋から良くなっていない。その背景として、現2年生は、1年次の登校日数が2020年秋2.0日→2021年夏2.6日と、少ないままである。入学後ずっと現在まで、学生同士がリアルにつながりにくい環境が続き、『こんなはずではなかった』という思いが強いのだろう。

 現2年生のメンタルヘルスは、こうした現実を踏まえて、自殺予防も視野に入れて対処する必要があろう。大学の学生相談室・心理カウンセラーとの連携も極めて重要だ」

大学生協アンケートで聞く2年生の声は?

「私はものすごく1人が好きで話すのが苦手な人だから、一人ぼっちなんて耐えられると思ってたけど、実家から700キロ離れたところに上京して家族とも話せないし、課題も山ほど出るし、ずっとオンラインで同級生と顔を合わせることすらない状況が1年続いたら、さすがに苦しかった。誰にも、外にもほとんど出れなかったから街ゆく人にすら認識されないことがとても怖くなって、たまにくる宅配便のおじさんとのたわいのない話だけが唯一の楽しみだったくらい(笑い)。だんだん誰かの人間の話し声を聞きたくなってきて、オンラインが出来て通話をするようになってものすごく、本当にものすごく救われました」(埼玉県/文科系/女性/2年)

「通学が楽になるという面でオンライン授業がいいという学生もいるが、専門科目等の単位を取るだけではない授業は対面であるべきかなと思う。こうした学生の声をもう少し耳に入れて、反映してほしい。急に対面が再開になって通学定期で困っている人がいる。2年もオンラインの環境で、苦労してきた大学生にアフターコロナを担う君たちがどうとか言わないでほしい。真っ暗な将来を突きつけられているようで聞くたびに胸が張り裂けそうな気持ちになる。言葉にもっと責任を持ってほしい。先に対応できることがもっとあったと思う。それなりの対応をしてほしい。高校生などは、授業があり楽しそうに歩いているのに、わたしたちは……と思うことがある。大学生を取り残さないでほしい」(大阪府/文科系/女性/2年)

正常モードに戻れるかどうかも不安

 特に2年生は、3年生以上のように大学生活の思い出も少なく、1年生のようにコロナ禍の大学受験を経て入学する覚悟ができているわけでもない。1人カラオケを楽しんだという声もあるように、いろいろな人とのつながりができる体験が少ない。大学では、2021年10月には運動部の秋の公式戦も始まったが、9月までは活動停止だったので戦闘モードに戻れるかどうか、不安を抱える学生もいる。

 徳島大学のキャリアカウンセラーである畠一樹先生は、「1年のキャリア教育による知識形成を経て、2年では3年からの就活につなげるキャリア意識を形成する大事な時期である」という。

 生きがいや好きかどうか、自分の得意とする分野などのキャリア意識は、自分と向かい合い、多様な社会人との出会い、社会的活動と効率的な時間の使い方を身につける中で生まれる。それらは大学1年から3年前半までの時期に育まれるのである。現2年生は、その時期に登校できなかったブランクは大きい。

 ただ、全国大学生サミットに参加した女子大学生が、コロナ禍に(1)PCスキルに強くなった、(2)友達の大切さに気づいた、(3)オンラインで質問をしたりデータ収集の方法を学べた、とメリットを挙げていた。チャットのやり取りが楽しい、という声もあった。ZOOMでスリランカの学生と友達になったケースもある。

 ゼミのプレゼンのコンテストに応募しようとしたら中止になったので、教員に相談したら、大学が校内のホールを提供してくれて、自分たちで独自のコンテストを開催できた、というレポートをした学生もいた。

 コロナ禍によって失われた大学生活を完全に回復させることはかなわないだろうが、この体験が学生たちのプラスの糧になるように、大学も社会もサポートすべきであろう。

(文=木村誠/教育ジャーナリスト)

木村誠/大学教育ジャーナリスト

木村誠/大学教育ジャーナリスト

早稲田大学政経学部新聞学科卒業、学研勤務を経てフリー。近著に『ワンランク上の大学攻略法 新課程入試の先取り最新情報』(朝日新書)。他に『「地方国立大学」の時代–2020年に何が起こるのか』(中公ラクレ)、『大学大崩壊』『大学大倒産時代』(ともに朝日新書)など。

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