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便利屋化する自衛隊と忖度官僚(2)

首相官邸と防衛省、机上の空論で目標を現場自衛官にゴリ押しし対立…接種センター

文=編集部
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防衛省のHPより
防衛省のHPより

自衛隊史上最高の作戦どころか、反省点ばかりですよ」

 自衛隊が運営する新型コロナウイルスワクチンの大規模接種センターが11月30日に終了したことを受け、ある陸上自衛隊幹部はこう肩を落とした。センターが日本国内のワクチン接種率を高めることに貢献したのは事実だ。一方で、そのプロセスは科学的根拠のない精神論に基づいた首相官邸の指示と、それを無批判に通す忖度官僚の「合作」であった面は否めない。

センター接種自体は成果だが、現場の強さに甘える日本社会の縮図

「国民の信頼を裏切らない素晴らしい成果をあげていただいた」

 11月30日、接種センター終了に伴う式典が開かれ、出席した菅義偉前首相は業務に従事した自衛隊員などにこう謝意を示した。感染リスクに見舞われるなかで接種業務に従事した医療関係者はもとより、自衛官については「追加の日当がたった3000円とタダ働き同然」(陸自幹部)だっただけに、謝意が払われてしかるべきだろう。

 ただ、接種センター自体が7月の東京五輪開催を直前にした菅政権の焦りが生んだ「苦肉の策」だったことは思い起こしておく必要がある。4月に突如、報道先行でセンター設置が周知されるなど、実務を担う自衛隊側と調整が何もなされなかったことは本連載第1回で指摘した通りだ。中長期的なマネジメントや見通しが甘く、現場のがんばりでなんとかするという日本的組織の特徴がもろに出た。

陸自「高齢者相手に実績値もなく1日1万回は危険だ」と主張

 菅氏は「接種開始1週間で東京1日1万人、大阪1日5000人」という接種目標をぶち上げた。これについては当初、算定の根拠が不明確などとして批判を浴びたが、実際にはどうだったのか。運営に携わった陸自幹部は以下のように話す。

「やれと言われれば実行するのが自衛隊ですので、運営そのものは大きくもめませんでした。ただ、最初に現場と中央で意見の相違が出たのは、開始間もない1週間で最大数の東京1万、大阪5000に到達させるかどうかという点でした。現場の自衛隊側は『実績値もない段階で机上検討の最大数の接種は保証できない。対象が老人であり、摂取に要する時間もデータがなければ計画通りに実施できるかの確約はできず、予約数は制限すべきだ』との慎重論を唱えましたが、防衛省側は無視し、2週目から最大数の予約設定を行いました。

 結果として問題が起きなかったので良かったですが、もし起きれば現場の責任にされると戦々恐々でした。結局のところ、防衛官僚たちにとっては総理の『1万』『5000』という数の達成が重要なのであって、接種対象のお年寄りはどうでも良かったというふうにしか思えませんでした」

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