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小谷寿美子「薬剤師が教える薬のホント」

胃薬は大正漢方胃腸薬、ガスターがお勧め?副作用の抗コリン作用が少ない薬・強い薬

文=小谷寿美子/薬剤師
薬の副作用
「Getty Images」より

副作用の一般的イメージ

 薬の副作用といえば、ショックや発疹が思い浮かびますが、こうした副作用は見た目でわかりますし、その後の経過に注意が必要なものです。また、「眠気」も誰もが経験したことがあるでしょう。そのため、薬局では「この薬には眠気がありますか?」というのが副作用に関する患者さんからの質問のなかでもっとも多くなっています。今回は、比較的多くあらわれる副作用である「抗コリン作用」についてお話しします。

「抗コリン作用」を考えると副作用の多くがわかる

 体内の情報伝達にはさまざまな物質が使われます。その物質の一つに「アセチルコリン」というものがあります。これは自律神経のうち副交感神経より放出されるもので、副交感神経は「リラックス」したときに活性化される神経です。たとえば、ヒトは敵がいない時はしっかり食べて消化吸収し、横になって休むことができます。心臓はゆっくり動き、血圧が上がって興奮することもありません。トイレも落ち着いてできます。敵を見なくていいので、瞳孔を広げることはありません。

 このアセチルコリンの働きを薬で抑えることができます。これが「抗コリン作用」です。リラックスした時に活性化される作用と反対のことが起こり、消化吸収なんてしませんし、心臓の拍動は上がり、血圧は上がります。トイレに行っている場合ではなく、尿道括約筋を緊張させて止めます。肛門括約筋も緊張させて便を止めます。アセチルコリンという物質一つで全身にさまざまな作用を起こすことができる以上、その反対の作用についても全身で起こってしまうのです。主なところでは口が乾く、便秘、目のかすみ、おしっこが出にくいといったところです。

 一方で、脳内においてもアセチルコリンは大切な働きをしています。認知、記憶、学習といった機能をつかさどる神経より放出されます。睡眠中にこのアセチルコリンが大量に分泌され、記憶を担当する「海馬」という場所で、起きている間に起こった情報の整理・整頓を行い記憶の定着をしています。脳内のアセチルコリンが不足していると情報の整理・整頓ができずに「認知症」といった症状が発症してしまうのです。

 薬でアセチルコリンの働きを抑える時は、脳へ移行しないようにつくられています。そして、期待する場所にだけ働くように開発されています。排尿の回数が増えてしまう時は「抗コリン作用」を使って尿道括約筋を締めるようにします。それでも全身の作用が出てしまうので、口が乾きますし、便秘になってしまうことがあります。口の乾きや便秘はこの「抗コリン作用」のなかで感じることが多いです。

抗コリン作用のある医薬品

 数多くの薬に抗コリン作用があり、いわゆる「総合胃腸薬」と呼ばれる薬には必ずといっていいほど抗コリン作用があります。私は薬剤師として、「総合胃腸薬」と呼ばれる薬を患者さんに使わないようにしています。というのもこの抗コリン作用に注意をするのが面倒だからです。使ってはいけない人、相談すべき人に該当することが多いため、スムーズに薬を選べないのです。

 例えば、「排尿困難はありませんか?」「緑内障と言われたことはありませんか?」「腎臓病や心臓病はありませんか?」と患者さんに毎回確認する必要があります。また、症状に合わせて薬を選べば「総合胃腸薬」と呼ばれる薬を使わずにすむことが多いのです。

 胃薬では「ロートエキス」というかたちで配合されています。植物のハシリドコロ(ロート)の根の成分を抽出してつくられた薬です。抗コリン作用があり、それを薬として使っています。胃腸薬においては胃や腸の痙攣を抑える目的で配合されています。痙攣というのは蠕動(ぜんどう)運動が過剰になった状態のことです。そうすると差し込むような痛みを感じます。それを薬で抑えてあげると痛みが和らぎます。

 ロートエキスは胃や腸以外でも「抗コリン作用」があります。そのため、それ以外の場所で効果を発揮してしまい副作用としてあらわれます。有名なところでいうと「キャベジンコーワα」「スクラート胃腸薬」「パンシロン」「第一三共胃腸薬」があります。

 鼻炎薬では「ベラドンナ総アルカロイド」というかたちで配合されています。こちらも植物のベラドンナから抽出されてつくられた薬で、抗コリン作用があります。アセチルコリンが鼻腺に対して、鼻水を出せという指令を出すため、これを薬で抑えると鼻水を止めることができます。有名なところでいうと「エスタック鼻炎ソフトニスキャップ」「コルゲンコーワ鼻炎ジェルカプセルα」「パブロン鼻炎カプセルSα」があります。こういった薬を使うと「超効いた」という実感とともに口の乾燥を強く感じます。

補足:抗コリン作用を持つ成分が配合されていない胃薬

 私は胃薬では、よく「大正漢方胃腸薬」を紹介します。これは「安中散(あんちゅうさん)」と「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」の合剤ですが、安中散により胃の蠕動運動を正常に戻します。芍薬甘草湯は胃の痛みを抑えます。抗コリン作用がなく、ほとんどの人が使えるのです。胃もたれや胃がスッキリしない人には「ハイウルソ」、「胃痛」がある人には「ガスター」を紹介することが多いです。

(文=小谷寿美子/薬剤師)

小谷寿美子/薬剤師、NRサプリメントアドバイザー

小谷寿美子/薬剤師、NRサプリメントアドバイザー

薬剤師。NRサプリメントアドバイザー。薬局界のセカンドオピニオン。明治薬科大学を505人いる学生のなか5位で卒業。薬剤師国家試験を240点中224点という高得点で合格した。
市販薬も調剤も取り扱う、地域密着型の薬局チェーンに入社。社歴は10年以上。
入社1年目にして、市販薬販売コンクールで1位。管理薬剤師として配属された店舗では半年で売り上げを2倍に上げた実績がある。

市販薬、調剤のみならずサプリメントにも詳しい。薬やサプリメントの効かない飲み方、あぶない自己判断に日々、心を痛め、正しい薬の飲み方、飲み合わせを啓蒙中。

Twitter:@kotanisumiko

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