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キリンHD、ミャンマー国軍系企業との合弁解消交渉が泥沼化…新たな経営リスク浮上

文=編集部
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キリンホールディングス本社のある中野セントラルパークサウス(「Wikipedia」より)

 キリンホールディングス(HD)がミャンマーで合弁で展開するビール事業の先行きが見えない。合弁相手の国軍系企業ミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)に対して合弁解消を求めているが、これにMEHLが態度を硬化させ、会社清算を裁判所に申し立てた。

 焦点になっているのは現地のビール合弁会社ミャンマー・ブルワリー。2015年8月、ミャンマー・ブルワリー株を取得してミャンマー市場に参入した。キリンが51%、MEHLが49%出資する。国連調査団の報告書によると、MEHLは金融や宝石売買など多数の傘下企業を持ち、国軍の資金源となっている。

 21年2月、選挙で選ばれたアウン・サン・スー・チー氏が率いる政権を、国軍がクーデターで追放し権力を握った。抗議する市民を国軍は武力で弾圧した。クーデターから半年たった21年8月、ミャンマーの人権団体「政治犯支援協会」は、国軍の弾圧による死者が1000人を超えたと明らかにした。これは協会が把握した人数で、実際はもっと死者は多い。弾圧による犠牲者は増え続けている。

 国軍による市民の殺害を非難する声が世界中から殺到した。米国が経済制裁を発動したほか、外資企業が国軍系企業との合弁解消や撤退を次々と表明した。キリンはクーデター直後、合弁を解消する方針を公表し、MEHL側に持ち分の売却を求める交渉を申し入れた。別の現地企業などにMEHLの持ち分を引き受けてもらい、ミャンマーでのビール事業を続けたいとしている。

 だが、交渉は難航。MEHLは提携解消に応じず、21年11月、ミャンマー・ブルワリーの会社清算をミャンマーの裁判所に申し立てた。キリンは「合弁契約に違反している」と反発。12月6日、公正な合弁解消手続きの実施を求め、シンガポール国際仲裁センター(SIAC)に商事仲裁を申し立てた。

 キリンHDは12月6日、磯崎功典社長の名前で「ビール事業を通じて、ミャンマーの経済や社会に貢献することは今後も変わらず目指すところだ。仲裁を速やかに進めるとともに、提携解消にあたっては、現地従業員とその家族の生活を守り、安全を図る。取引先や顧客に最大限配慮しながら進めていく」との談話を出した。

 ミャンマー・ブルワリーの21年1~9月期決算は、クーデターによる政情不安で売上収益は前年同期比41%減の143億円、事業利益は同49%減の54億円に激減した。

MEHLはキリンと縁を切るために清算を申し立てか

 キリンにとって情勢は厳しい。国際仲裁より、現地の裁判所による合弁会社を清算する案件の是非の判断が優先されるからだ。両社の対立が深まるなか、最大都市ヤンゴンの裁判所で21年12月10日から審理が始まった。

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